真田さんは日本人エミー賞1人目? 2人目? 梅木美代志、島田陽子、三船敏郎、岡政偉、真田広之
アメリカ映画賞の最高峰、アカデミー賞演技賞の日本人受賞者は、今のところ、ミヨシ・ウメキ一人(1957年「サヨナラ」、アジア人初でもあった)。
今回、アメリカのテレビ界でそれに匹敵するエミー賞を、真田広之さんが受賞されました。おめでとうございます!
映画賞よりも、テレビ賞の方が、難しいかもしれない。快挙ですね。演技だけでなく、ドラマの製作(プロデュース)にくわわっていることも大きい。
でも、真田さんが、アメリカのテレビ賞の日本人初受賞、というわけではない。
アメリカのテレビ賞には、もう一つ、ゴールデングローブ賞があり(日本映画は昔から外国映画部門で多く候補になっていますが)、テレビドラマ演技賞に限っても、島田陽子が、今回の真田さんと同タイトル「SHOGUN」で受賞しています。
今回、「SHOGUN」はエミー賞作品賞も得ましたが、1981年版の「SHOGUN」はゴールデングローブの作品賞を得ている。
そして、エミー賞の方でも、1958年にミヨシ・ウメキが「地域エミー賞 regional Emmy Award」を受賞しています。
この「地域エミー賞」というもの、私の中で長年、位置付けが不明なので、この機会に、はっきりすればいいなと思います。
たぶん、通常いうエミー賞は「プライムタイム・エミー賞」で、それ以外にもいろいろエミー賞がある(スポーツ・エミー賞とか子供番組・エミー賞とか)。地方局製作のTV番組に与えられるのが「地域エミー賞」らしい。
「地域エミー賞」の基準としては、全国の半分以上の地域には届かない、そういう番組に与えられるようですが、それでも「全国だろうと地域だろうと、エミー賞受賞者であることに変わりない Regardless of winning on a national or regional level, all recipients are Emmy Award winners.」(wikipedia"Emmy Award")とされています。
ウメキはアメリカで多くの有名バラエティショーに出たのち、地域エミー賞を1958年に受賞した。彼女はABCのシットコム「エディの素敵なパパ」に出演したが、これはアジア人がアメリカのプライムタイムTV番組で主役級を務めた最初期の例だった。
Umeki appeared on many popular variety TV shows and earned a regional Emmy Award for Outstanding Female Personality in 1958. She co-starred in the ABC sitcom "The Courtship of Eddie’s Father" (1969-1972), which was one of the first American primetime TV shows with an Asian or Asian American leading role.
UCLA Film & Television Archive
今回、アメリカの記事では、真田のエミー賞主演賞の受賞は、日本人で初、アジア人では「イカゲーム」(2022)のイ・ジョンジェに次いで2人目、と紹介されています。(イ・ジョンジェは、英語以外の話者の初の受賞でもありました)
今回も、過去の日本人アカデミー賞受賞者として、ウメキに言及している記事はありましたが(the Hollywood Reporter誌)、1958年のウメキの地域エミー賞は触れている記事は見当たりませんでした。しかし、1958年のウメキの受賞は、俳優ではなく、バラエティーショーでのタレントとしての評価と思われますので、広く「タレント」部門に広げて考えると、話が変わる可能性があります。
以下、漏れがあるかもしれませんが、とりあえずのリスト。
1958年 地域エミー賞(regional Emmy Award for Outstanding Female Personality in 1958) ミヨシ・ウメキ(梅木美代志)<受賞>
1971年 ゴールデングローブ助演女優賞 ミヨシ・ウメキ(梅木美代志) 「エディの素敵なパパ Courtship Of Eddi's Father」<候補>
1981年 ゴールデングローブ女優賞 島田陽子 「SHOGUN」<受賞>
エミー賞主演女優賞 島田陽子 「SHOGUN」<候補>
エミー賞主演男優賞 三船敏郎 「SHOGUN」<候補>
2007年 エミー賞助演男優賞 マシ・オカ(岡政偉) 「HEROES」<候補>
2024年 エミー賞主演男優賞 真田広之 「SHOGUN」<受賞>
真田さんとしては、前バージョンの「SHOGUN」での誤った日本描写や偏見をみずから正したい、ということがあったでしょう。また、もっと以前から、それこそ戦前からの人種偏見を正す機会になるかもしれない。エミー賞での受賞インタビューで、真田さんは「日本の時代劇ですら西洋化しているので、それを引き戻したかった」と語っています。
60年以上前、梅木美代志は、人種偏見にまみれながら、アカデミー賞(映画)だけでなく、ゴールデングローブ賞(ドラマ)、トニー賞(ミュージカル)の候補になり、歌手としても活躍しました。この機会に、先人の苦労をしのぶ意味で、改めて彼女の偉業も注目されてほしいです。
<参考>