【Netflix】「エリック」ひきこまれる傑作サスペンス
【概略】
エリック Eric
2024 | 年齢制限:16+ | 1シーズン | ヒューマンドラマ
80年代のNYで9歳の少年が失踪。刑事が粘り強く事件を追う一方で、息子を何としても見つけ出したい父親もまた、自身の内なる闇と向き合いながら独自に動き始める。
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ギャビー・ホフマン、マッキンリー・ベルチャー三世
原作・制作:アビ・モーガン
(Netflix公式サイトより)
予告編
【評価】(ネタバレなし)
5月30日に世界公開。50分×6回。
これは素晴らしい。評判になるだろう。
英語のレビューを少し覗いたが、やはり好評のようだ。
少年の失踪というと、「またか」と思う人がいるかもしれない。
子供の失踪を題材にした映画やドラマは数多い。
たとえば「ミッシング」のようなドラマが思い出される。
しかし、見ていると、最初はそういうお話と似ているようで、少しずつちがう。そのちがいが、しだいに大きくなり、1話が終わるころには、これまで見たことがないドラマだとわかる。
最初はまともに見えた登場人物たちが、みな少しずつ「変」だとわかってくる。
無駄なショットが1つもない。作り込まれた世界観、考え抜かれたキャラクター設定が素晴らしい。
役者たちの演技にも圧倒される。
主役で少年の父親役、ベネディクト・カンバーバッチはもちろんすごい。と同時に、カンバーバッチの雄弁な演技と対照的な、事件を追う黒人刑事役、マッキンリー・ベルチャー三世の抑えた演技が印象的だ。このドラマでスターになるのではないだろうか。
ダン・フォグラー(カンバーバッチの同僚役)、エリカ・ソト(刑事の秘書役)など脇役も光っている。みな自分のキャラクターを深く研究した跡が見て取れた。
舞台は1985年のNY。
エイズが流行り、人びとはタバコをすぱすぱ喫っていた。ツインタワーもまだ健在。
このころ、アメリカ、とくにNYは、日本人にとって、あこがれの的だった。円高になる前で、簡単に行けるところではなかった。
八神純子は1980年に「愛する気持ちを呼び覚ます都会(まち)ね、ニューヨーク」(パープルタウン)と歌って大ヒットした。
しかし、NYの1970~80年代の治安は最悪だった。1981年に公開されたジョン・カーペンター監督の「ニューヨーク1997」では、1988年までにマンハッタンがまるごと刑務所になる、という近未来が現実味をもって描かれていた。
このドラマは、そういうNYを前提にしている。
治安悪化の背景にあるアメリカ経済不況をなんとかしようと、ちょうどこのドラマの物語が起こる1985年、NYプラザホテルでプラザ合意(円の切り上げ)がなされ、日本でバブルが始まることになる。
わたしの世代の日本のマスコミ人にとって、NYのプラザホテルは、ニュースの舞台として忘れがたい。円高でNYに旅行したとき、わたしもプラザホテルを見に行った。
このドラマでは、セントラルパークが主舞台の一つなので、セントラルパークに面したプラザホテルが映るかな、と思って見ていたが、よくわからなかった。(プラザホテルは、ホテルは廃業したが、コンドミニアムとして存続しているはずだ。)
たぶん、この映画の制作者のアビ・モーガン(1968年生まれのイギリスの女性脚本家)は、この時代をよく知っており、この時代に愛着がある。
レコードからCDに移り変わるあたり。このドラマは、ぎりぎりレコードとカセットの最後の時代を描いている。
そういう時代背景の選び方が絶妙で、わたしのような年寄りはむかしを思い出しながら、とにかく楽しめた。
<参考>
CDが登場したころの思い出↓