トランプの再臨に備える
ニューヨークタイムスなどの世論調査で、トランプがバイデンをリードしており、静かな動揺が世界に広がっている。
24年米大統領選、激戦6州中5州でトランプ氏リード=世論調査(ロイター 11月7日)
他の調査でも、トランプの強さが目立つ。起訴されるたびに支持率を上げているので、手が付けられない。
選挙までまだ1年あるが、現時点で考えるなら、「トランプ再臨」の可能性が高まっている。
こういう情勢から、政治学者の河野有理(法政大学教授)が、Xでこうポストしていた。
トランプのアメリカの再臨に備えなくちゃいけないのは本当にしんどいな。しかもあの時よりはるかに不安定化した世界で。
しかし、世界が「不安定化」しているからこそ、人びとは、トランプが「快刀乱麻を断つ」のを期待しているのかもしれない。
*
2016年の大統領選のとき、私はまだ、ぎりぎりマスコミの現役だった。
自慢するわけではないが、トランプの勝利を予言したのは、周囲で私だけだった。(狭い「周囲」ではあるが)
周りのリベラル連中は、アメリカ人はトランプを選ぶほど馬鹿じゃないし、万一トランプが選ばれたら、株価が暴落して経済が崩壊する、と真顔で言っていた。
株価の暴落などは起こらない、と、これも私は予言した。
べつにたいした根拠があったわけではないけどね。
私自身が、トランプのほうが面白いと思っていた。
アメリカの多くの人も、マスコミ人のように思ったわけではなく、私のように思った、ということだろう。
現在のトランプの好調も、私は今年1月、トランプの立ち上げ演説を聞いた時点で、予言していた。
こんな演説だった。
「アメリカには、左翼と戦えるファイターが必要だ。腐敗を一掃できるファイターが必要だ。メディアと戦えるファイターが必要だ。」
「我々は、若者たちを洗脳する、左翼の過激な人種主義者と変態どもにストップをかけるぞ。
我々はマルクス主義者の手から子供たちを取り戻し、ジェンダーイデオロギーに染まったカルトを打ち負かすのだ。
そして、神がつくりたもうた男と女という2つのジェンダーに立ち戻らなければならない。」
私は、
「アメリカのリベラルは、左翼と決別しないと、このトランプに勝てない。」
と書いた。
それを書いたときと同じように、
「リベラルがトランプを勝たせる」
という情勢がいまもある。むしろその傾向が強まっている。
*
移民問題やLGBT、人種問題で、リベラルが「正しいこと」を言えば言うほど、トランプへの期待が高まってくる。
難しいことはわからないから、表立ってはリベラルに反論しない。
しかし、投票のときに「ホンネ」が出る。
「難しいことはわからないけど、いまのままでは不安だ。なんとかして」
と、トランプに期待するサイレントマジョリティーがふえる。
表舞台で劣勢だった屈辱を、選挙で晴らす。投票で復讐する。
ウクライナ戦争やイスラエル戦争で人びとが倦んでいれば、なおさらだ。
「私なら戦争を止められる」
とトランプが言えば、難しいことはわからないが、信じてしまいそうだ。
それにしても、あれだけの妄動をおこない、社会に混乱を招いた人を、共和党がまた候補にすることがありうるのか。
そう思うが、結局、トランプ以外では民主党に勝てない、となれば、選ばざるを得なくなるだろう。
*
最近、国際政治学者の池内恵(東大教授)が、Xで、日本保守党にたいする拒絶反応を示していた。
プロフィールに「日本保守党」と書いてあればブロックします。
日本保守党支持者との応酬の流れで、同党事務総長の有本香が、池内に直接からんでくる一幕もあった。
池内先生、グレンコ・アンドリー氏の発言と、日本保守党に何の関係があるのでしょうか。氏は保守党と無関係です。氏の発言について、唐突に「日本保守党の方々はどうする」と問いかけられる理由がわかりません。理由をご説明ください。理由もなくわが党の名前を出されているのであれば甚だ遺憾です。
この池内の反応は、法哲学者の井上達夫(東大名誉教授)が、朝ナマで百田尚樹に示した拒絶反応を思い出させた。
井上や池内は、日本のリベラルの中では最も良質な人たちだと私は思っている。
彼らは、かつての在特会のような極右や、れいわのような左翼には、そもそも反応しないと思う。語弊はあるが、知的なレベルがちがうからである。
しかし、その彼らに、激しい反応を引き起こさせるものが、百田や日本保守党にはある。
そう、だからこそ、日本保守党が「来る」かもしれない、と、私の勘がささやくのである。
*
本当は自分が勝っていたのに、選挙不正で負けた。
そのトランプの陰謀論を信じた人は、日本にもいた。
その代表格が百田尚樹だった、と私は記憶している。
その陰謀論にあきれ果てて、上念司らが離反した、と記憶している。
しかし、その陰謀論の本家本元が、世界最高の政治権力の地位に返り咲くかもしれないのである。
何が起こっても不思議ではない。
というか、トランプの最適なパートナーを日本で選ぶなら、あの人ということになる。
私も、
「安倍晋三は左翼メディアに殺された。だから左翼メディアをぶっ壊す!」
と百田が宣言すれば、ふらふらと投票してしまいそうである。
人びとが投票所に行かないのは、自分の一票で現実が変わらないと思うからだ。
変わってほしいのに、現実の壁が厚くて、変わらない。あきらめていたところで、それを「変える」と言う有力な人物が現れたら、難しいことや、その実現の確率はともかく、投票所に向かうかもしれない。
マスコミや政治評論家は、そうした、ある種情念的で不合理な政治的選択を予想できない。
しかし、そうした選択が、トランプをかつて選び、今度もまた選ぶとすれば、なんだってありうる。
というわけで、以下のようなことが来年以降にありうると(下手なコラで申し訳ないが)世界で初めて私が予言しておきたい。
(*安倍晋三氏の像を辱める意図はないのでご容赦を)
<参考>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?