「第2の山尾志桜里」は出てこない
以前、井上達夫(東大名誉教授)の政権交代論について書いたが、きのう発売の月刊誌「VOICE」で、井上が日本での政権交代の必要を再説している。
自民党の傲慢と、野党のだらしなさの両方を批判した内容だ。分量的には前者が多そうだが、私は後者の批判に、より共感した。
米国と中国の「核の均衡」が、かえって日本の防衛のために米国が出動できない事態を招いており、現実的な防衛論が急務だとしたうえで、こう書いている。
「立憲民主党など憲法改正の可能性を排除しないと主張する野党は、懸案先送りで逃げるのではなく、菅野(山尾)志桜里が衆議院議員時代に提唱した立憲的改憲論や、それをさらに発展させるような『戦力を憲法で明確に統制するための九条改正案』を提示することが、自民党に代わる統治能力のある責任政党として国民に認知されるために必要不可欠である。」
(井上達夫「何のための政権交代か」『VOICE』2月号)
井上の議論はしごく当然だが、「立憲的改憲論」の山尾志桜里はすでに国会におらず、第2の山尾が、立憲民主党や国民民主党から出てくる気配は、今のところ、ない。
緊急事態条項などに迂回している暇はないのだが、ストレートに9条改正を言い出す論者が野党から出てくるかどうかが、ここしばらくの焦点だろう。
だが、現実には、それは起こりそうにない。
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元TBSの人がはじめたネットニュースメディアが、立憲民主党から資金を得ていたことを知らされず協力させられていた、として、津田大介や望月イソ子などが抗議している。
津田や望月を「公正中立な論者」だと思う日本人は1人もいないだろうから、「左翼の内ゲバか」と憶測を呼んでいるようだ。
その憶測に唱和するのも、保守や右翼の尻馬に乗るようで、気持ち悪い。
立憲民主党が資金を提供していたのは事実のようで、新代表は対応に苦慮している。
どうせ憶測するのなら、これは党内右派の泉代表を引きずり下ろし、党内左派のクーデターを促すための謀略だ、と邪推するのだが、どうだろう。
いずれにせよ、憲法改正や、9条問題の核心から目をそらさせようとする動きは、左派から今後も続けられ、野党から「第2の山尾」を出現させる環境を阻害し続けるだろう。
山尾が国会にいても、彼女ひとりで大きな動きをつくれたとは思えないが、こんな状態では、もう1度戻ってきてもらったほうがいいかもしれない。
しかし、辻元清美を戻そうという策動は、左派メデイアでしつこく続けられているようだが、山尾に関してそういう動きは一切見えないのが現実である。