【評価・感想】『フォールアウト ニューベガス』レビュー
今作は、2010年に発売されたシリーズの四作目です。
あらすじ:2281年、主人公である運び屋は何者かに襲撃され、荷物を奪われてしまう。首謀者を見つけて敵を討つべく、運び屋は、核戦争後の「Mojave Wasteland」を冒険する。
原点回帰のFallout
今作は、「Obsidian Entertainment」が開発した「Fallout」です。
そもそも「Obsidian Entertainment」とは、初期「Fallout」とも関係が深い人たちによって設立されたスタジオで、今作の開発にも、主要メンバーとして、その関係者たちが関わっています。
そうした背景を持つゲームなので、今作は『Fallout 3』から見るとスピンオフですが、初期「Fallout」から見ると、その直系の子孫と言える「Fallout」になっています。
今作は、初期作の影響を強く感じさせる一作です。
例えば、ストーリーは、舞台の「Mojave Wasteland」が初期「Fallout」に近い地域ということで、「新カリフォルニア共和国」が重要な存在として描かれています。
他にも、仲間にできる一人が『Fallout 2』で仲間として登場した人物の娘だったり、何気ないやり取りの中で、初期「Fallout」への言及があったりなど、細かなところでも、初期作を意識したゲームです。
『Fallout 3』は、初めて遊ぶ人を意識したゲームでしたが、今作の方は、初期「Fallout」と地続きになっていて、ゲーム世界の情勢やキャラクターの思惑などを理解するのに、初期作の知識が大いに役立ちます。
『Fallout 3』よりも前提知識が求められるところがあります。
また、クエスト周りも初期「Fallout」に近いです。
今作を遊んでいるときに、それぞれ別々のクエストだと思っていたものが、たまたま遊んだあるクエストの存在によって、それらが一本の線で繋がり、ある陰謀が浮かび上がってきたことがありました。
この場合、もし片方のクエストを遊んでいるだけだと、この陰謀に気付くことはできなかったでしょうし、仮に気付いても、その時には手遅れになっていた可能性が高いです。
要するに、同じ出来事を描いていても、クエストの進め方や見つけたタイミングによって、クエストの内容と結末が大きく変わることがあります。
初期「Fallout」でも、どの角度からクエストを遊ぶかによって、こちらの立場が変わってしまったり、思わぬ形で登場人物が退場してしまったりなど、クエストの内容と結末が大きく変わることがありました。
プレイヤーの選択によってクエストの展開が変化する点は『Fallout 3』も同じですが、それぞれのクエストが複雑に絡み合い、相互に影響し合う点は、『Fallout 3』よりも初期「Fallout」、もっと言えば『Fallout 2』とよく似ています。
たしかに、ゲーム自体は、『Fallout 3』のアセットがそのまま流用されているので、ゲームシステムはベセスダ的な作りをしていて、アクション部分も、「V.A.T.S.」を中心にしたアクション色の強いFPSであり、TPSです。
ただ、ゲーム世界とストーリー、クエストのデザインなどは初期「Fallout」を彷彿させるところがあり、『Fallout 2』の後に違和感なく収まるゲームになっていると感じます。
さらに今作では、評判システムも復活しています。
初期「Fallout」のように、今作でも組織や町に対しての友好度が用意されており、目の前の人物に好かれるか、嫌われるかではなく、その背後にいる勢力を意識して遊ぶ必要性が生まれています。
ある勢力と敵対すると、それの追跡者に執拗に追われたり、そっち側のクエストが丸々消えてしまったりするなど、身の振り方次第で、プレイ内容が変わってくるので、大局的に物事を判断しないといけません。
今作では、組織の存在に裏打ちされた選択の重みが感じられ、選択を繰り返してストーリーを進めていくゲームとして、評判システムの復活は非常に大きな意味を持っています。
全体的に、今作は『Fallout 3』のシステム上で昔の「Fallout」を作ったと言え、そこが大きな特徴になっています。
名もなき運び屋とベガスへの旅路
過去作と比べると、主人公の描き方とオープンワールドのデザインがかなり特徴です。
まず、主人公には、ほとんど背景が存在しません。
これまでは「あの伝説的な活躍をした人物の孫」とか「あの優秀な両親の子供」とか、ある程度背景が存在しましたが、今回は「何者かに襲われて、埋められた運び屋」くらいしか分かりません。
使命を託されてしまっていることも、タガを外して遊ぶことを躊躇してしまうような設定もないため、かなり自由にロールプレイできる主人公になっています。
私の場合、これまではその背景の範囲でロールプレイしがちだったので、今回は足枷なしで自由に遊べて、非常に良かったです。
助けてくれた町を無茶苦茶にしても違和感がない主人公が作れるというのは、ロールプレイの幅をぐっと広げてくれます。
また、オープンワールドのデザインも特徴的です。
これは移動に自由がないと言われる一因ではあるのですが、基本的には「New Vegas」へと続く道路に沿って進んでいくゲームになっています。
今作では、「New Vegas」まで続く道路に沿って、町や施設など、さまざまなスポットが用意されており、これらを順番に遊びながら目的地へと迫っていく作りです。
言ってみれば、『Fallout 3』のように、広いマップに放り出されてあとはご自由にではなく、この道に沿っていくと目的地に行き着くので、そのまま進んで下さいと言ったイメージです。
もちろん、道から逸れることはできますが、見えない壁があったり、手強いミュータントがいたりして、「素直に道に沿って進んだ方が良い」と思わせる作りになっています。住民にも道路を通る方が安全だと繰り返し言われます。
同じオープンワールドゲームでも、今作は道路を起点にしたゲームと言えて、『Fallout 3』のような移動における自由さはありません。
こうしたところでも、「Obsidian」と「Bethesda」のスタンスの違いが出ていると感じます。
個人的には、道中で様々な経験をしながら、少しずつ目的地へと迫っていく流れは、今作のストーリーに合っているとは思いましたが、このタイプのオープンワールドゲームは"Bethesda育ち"ゆえに、窮屈さを感じる時が多々ありました。
総評
今作は、初期作の流れを汲む「Fallout」の傑作です。
『Fallout 3』は、「The Elder Scrolls」のノウハウが投入されたオープンワールドと冒険心をくすぐる自由さが、こちらは、元CRPGらしい選択とその結果を重視する作風が大きな魅力になっており、それぞれが独自の「Fallout」を作り上げています。
レビューにも書いている通り、『Fallout 3』は初めてのBethesdaゲーということで、特に思い入れ深い作品ではあるのですが、その後に遊んだ『Fallout』や『Fallout 2』で、CRPG的な部分に惹かれた者からすると、そこに重きを置いた今作も、存分に楽しむことができました。
テキストの豊富さと選択の重要性、クエスト同士の繋がりなど、初期「Fallout」の特徴を見事に捉えた一作です。
なお、今作のあと「Obsidian」は、「Fallout」ライクなアクションRPG『The Outer Worlds』を手掛けているので、今後はこっちの方で、初期「Fallout」らしさが継承されると良いなと思います。
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