束の間のGW
Tシャツとハーフパンツで充分だろう、シャワーを浴びた僕は薄着で座る。電源ボタンを押し、ノートパソコンを立ち上げた。SNSを一通り確認し終えた僕は、旅行代理店のホームページを開いた。
ゴールデンウィークは亜希と一緒にどこか旅行に行って、羽を伸ばしたいと考えていた。目的地、宿泊日、人数を入れて検索。いくつか適当なホテルを選んで料金を確認すると、僕は彼女にLINEを送った。
『沖縄はどう? 二人で二泊十数万円くらい』
『うーん、沖縄ってもう海に入れるのかな?』と亜希からすぐに返信がある。
『ちょっと待って――あ、4月には海開きしてるみたい』
『天気さえ良ければいいんだけどね』
『予報では、曇り……かあ』
ゴールデンウィークが始まるまで、あと5日だった。旅行先は未だ決まらず、時間だけが過ぎていく。
『せっかく沖縄に行くのにさ、海に入れないなんてヤダなあ』
海に入れない沖縄なんて沖縄に非ず、僕はブラウザを閉じた。今日は決まらなかった。
翌日の晩、僕は昨日と同じように旅行先を調べたあと、亜希にLINEを送った。
『大阪はどう? USJのチケット付きプランがあるよ』
『USJかあ、すんごい混みそうだよね。――うわディズニー並じゃん』
残り4日。予約ページを見てみると、残りわずか、と表示されている。早く決めなければ。
『北海道は?』
『寒いからパス』
『箱根は?』
『最近行った』
候補地を上げる度に、寒そう、行くなら夏だね、ハウステンボス以外に何があるの? 様々な理由で却下されてしまった。
結局、決まらないまま連休を迎えることになってしまった。この連休を逃すと、次に旅行に行ける機会はお盆休みになってしまうだろうか。せっかくのゴールデンウィークに何もしないなんて。
――亜希からLINEがきた。
『明日、家行っていい?』
ゴールデンウィークの間、僕の自宅で過ごすことになった。昼間は駅ビルで買い物や食事をする、僕にとっては普段の週末と何も変わらない。特別なことといえば銭湯に行ったくらいで、連休の後半になると食事のためだけに外出する程度になってしまっていた。
連休の最終日、亜希は布団に倒れ込み天井を見上げた。
「久しぶりだわ、こんなにのんびりしたのって」
すうすうと寝息が聞こえてきた、そっと顔を覗くとその寝顔は緩みきっていた。
彼女は出張の多い仕事をしている。僕はその寝顔を見られただけで満足だった。
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