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 車両には、僕独りが取り残されている。電車はとっくに終点に着いていたようで静かだった。開いたままのドアからは、生暖かい風が吹き込んでくる。僕は慌てて立ちあがる、すると視界の隅に白い物が見えた。振り返ると隣の座席にスマートフォンが落ちていた。ギラギラしたカバーからして、それが女性の物であるということは容易に想像がつく。ふと、隣に女性が座っていたことを思い出した。駅員に届けないと――僕は落とし物を手に取り電車を降りる。  案内表示に従い改札に向かっていると、手にしていたスマートフ