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あなたには生きていてほしい

あなたには生きていてほしい表紙

あなたには生きていてほしい

~統合失調症の当事者として

    本当に伝えたいこと~

                          かけるん

 はじめに

 最初に、なぜこの本を出版しようと思ったのかというと、私が統合失調症という病気を発症してから、自死を考える機会が増えたからです。以前から、自死をしようとすることもありました。しかしながら、圧倒的にこの病気になってからのほうが、自死を考えるようになったことは事実です。そこには、恐らく未来への希望を持てなくなったり、持ちづらくなってしまっているような気がするのです。

 また、知っている精神疾患の方が自殺してしまった、という事実もあります。そこで、こういった悲劇がなるべく少なくなればという思いで書いてます。もちろん、自死をすることは本人の勝手だという方もいるかもしれません。それ以上に、残された親や兄弟、友人などのダメージもあることを忘れないでほしいのです。

 生きている以上、その延長線上に死はあります。しかし、死んでしまったら、今の状態での制は閉ざされてしまうのです。たしかに自分では、乗り越えられない現状かもしれません。勇気をもって、今の状態をギブアップするのも手かもしれません。

 私は、統合失調症を発病して、約20年になります。これが長いか短いかは、定かではありませんが、様々なことがありましたし、これからもあるかと思います。実際、この本を手に取られた方のご家族やお知り合いの方には、統合失調の方がいらっしゃるかもしれませんし、本人がそうという方もいるかもしれません。また、統合失調症という病名を初めて目にされた方もいるかもしれません。

 少しだけ統合失調症について、私の知っている限りでお伝えしますと、実は統合失調症という病気は、身近に潜んでいます。幻聴や幻覚がその一種といわれています。もしかして、時々電話の音が聞こえたような気がして、電話の着信を見てみると、実は気のせいだったということがないでしょうか?それが時々ではなく、いつもそのような状態であるならば、それは統合失調症なのかもしれません。

 この本を書こうと思った理由の一つに、そんな統合失調症という病気を多くの方に知ってほしいということと同時に統合失調症になっている方に生きていて大丈夫だから、ということを伝えたかったからです。私の実体験を通して、伝えたい現実を見つめ、読者のこれからの生活に生かしていただければすごく嬉しく思います。

 この本では、私が統合失調症の当事者として歩んできた道のりや、生きている価値、あなたには生きていてほしいという気持ちを率直に書いていこうと思っています。

 では、これを読むことで、あなたのほんの少しのビタミンになりますように。

あなたには生きていてほしい挿絵02

第1章 かけるんの過去

 私は両親に愛され、妹と弟がいる長男として一緒に生活していました。幼いころは、自分では引っ込み思案というイメージでした。自分の意見をなかなか言うことができず、他人の言うことに従ってばかりでした。そのため、自分から声をかけることが少なく、女性に声をかけるなんて、恥ずかしくて全くできませんでした。

 小学生のころ、自分が生きていくためには、多くの動物や植物を食しなければならず、多くの生き物を犠牲にしてまで生きていく価値が自分にはあるのだろうか、と本気で悩みました。本気で死ぬことを考え、ロープで首を吊ったのですが、ロープがすぐにほどけ何にもなかったかのように日常に戻っていきました。

 中学生になり、周りから見ても優等生言う感じの生徒でした。生徒会に所属したり、陸上部に所属したりしていました。しかし、嫌がらせを受け、いやいやながら学校に行っていました。親に相談しても、先生に相談しても、対応してもらえず、すごく嫌な時期でした。

 高校入試を経て、無事地元の進学校に入学した私なのですが、ここで今までの自分を変えるべく、最初の自己紹介の時に、ユーモラスに話しました。そうすると、話すことが苦手にならなくなり、女性とも話すことができるようになっていきました。

 友達もでき、楽しく過ごすことができていた私の1回目のターニングポイントといえるでしょう。

 その後、近くの大学に進学し、ゼミやサークル活動に明け暮れていました。ゼミでは、全国の大学生と議論をすることができたり、卒論を書いたりしていました。サークルでは、2つのサークルの部長と副部長を掛け持ちでやっていました。さらに、家庭教師のバイトなどもしていました。そして、片道約2時間半の通学でしたので、結構頑張ったな、と今では思います。

 地場の大手電器店に就職した私でしたが、身体が持たず、約3年で退職してしまいます。その後職を転々とし、自営業をしていた親の仕事の手伝いをすることにしました。そんな中、「船をロープにつないでおけ」という指示があり、結ぶのに戸惑っていると、「つないでおけば結び方はどうでもいい」と言われ、次の仕事をしていると、船のロープがほどけ、「お前は馬鹿か」という注意を受け、その言葉がリフレインし「そうか私は馬鹿なんだ、だから何をやっても失敗するんだ」という被害妄想が湧いてきました。そのうち、「生きていても仕方ないんじゃないか」などと考える中、人を包丁で刺すイメージが湧き出してきました。いくら拭っても消えないそのイメージは、実際自分が行っているかのようで、すごく怖かったです。

 そんなある日、いつものように仕事をしているとき、仕事場で包丁を目にしました。すると、人を包丁で刺すイメージがすごくリアルに見えてきました。もう、自分はダメだ、と思いました。

 その数日前に、佐賀のバスジャック事件という凄惨な事件が起こったそんな時でした。あの事件を私は、人とは違った目で見ていました。わたしも同じことをしてしまうかもしれない、そんな思いでした。

 私も人殺しをしてしまうんじゃないか、という不安でいっぱいになる一方、人殺しをしてしまう幻覚は減るどころか、ずっと実際に自分が殺人事件を起こしているかのように見続けました。

 そこで私は自ら、当時イメージが悪かった精神科の病院へ一人で行ったのです。私の精神科のイメージというのは、叫んでいる人や狂っている人の集まるところだと想像していたので、行きたくないところベスト3に確実に入っていました。

 そこで下された診断結果は、即入院が必要な病気であることでした。統合失調症という名の病気でした。

 入院した当時の治療法は今と違って、投薬や注射が中心というもので、起きてご飯と薬を飲み、イライラした時は、注射をお尻に打ってもらうという毎日でした。ぼーっとした感覚がずーっと続き、ご飯も薬の副作用の影響で、あごが動かず、まともにご飯を食べられない状態でした。

 半年かかって、やっと退院でき自宅に戻ったのですが、寝て起きてを繰り返し、お父さんに「がんばれ」と言われていたんですが、自分では生きているだけで精一杯の状態でした。

 その復帰のきっかけは、まずネットのチャットでした。友人がたまたま管理人をしていた、精神系の病気のチャットグループに誘ってくれました。そこに夜遅くまで、パソコンで入りびたりになり、昼夜逆転の生活をしていました。

 ある日、そのチャットグループで、オフ会を東京でするという話があり、行ってみることにしました。そこに集まったグループの方は、自分と同じく病気を抱え、生きていることも躊躇している人さえいました。そこで、いろんな話を聞けたことが今では、いい経験だったと思っています。

 その後もパソコンでのチャットを続けていたのですが、通所している精神科にデイケアができるから、来てみないかというお誘いを受けました。そこで、麻雀や花札や塗り絵、卓球などをしていくうちに少しずつ元気になっていきました。

 ついには、障がい者枠ではありましたが、一般就労できるまでになり、その後、デイケアで知り合った方とお付き合いすることにしました。

 その後、県営住宅の抽選に当たり、そのお付き合いしていた女性と結婚することにしました。しかし、相手も精神的病気を持ち、さらにギャンブルに依存した生活をいたため、私の手には負えず、1年間で離婚しました。そして、私には多額の借金が残る結果になってしまいました。

 その後、親と同居していましたが、何をやってもうまくいかず、入退院を繰り返し、担当医の勧めで親と離れて暮らすことにしました。

 入院をし、職を失い、住居も失い、散々な中、退院後にデイケアの主任の紹介でグループホームという居住スタイルを勧めてくれました。

 今はグループホームで、生活保護と障害者年金と作業所の工賃で生活をさせていただいています。生きているという事実があるから、過去の栄光ではなく、今をしっかり見て生きていたいのです。

 だって、過去をいつまでも振り返っていても、そこに未来はありません。今から少しでも違った自分を見つけていく方が建設的ではないかと思うからです。まさに、今までの殻を破って、新しい自分へと生まれ変われることができるのです。たとえ、自分が病気を持っていようがいまいが一緒のことです。

 第2章 統合失調症

 統合失調症って、なに?知らない。という方は多いと思います。統合失調症とは現代病と呼ばれます精神疾患の一つで、うつなどの仲間と言えばおわかりになるでしょうか。

 統合失調症をご説明する前に、まず精神病について考えていきたいと思います。

 友達や職場、あるいは家族が「うつ」になって大変だ、という話は会話やテレビ、本などで見聞きされた方は多いかと思います。「人間は考える葦である」と言われるように動物の中では体重比でいくとかなり大きな脳を持ち、様々なことを常に考えています。この脳の中で起こりうる事象で、自分の脳に異常を生じる事柄が発生すると、ドーパミンという脳内物質が多く生じ、ストレスに感じるということが起こります。このストレスが、自分のキャパシティー(限界容量)を超えると、病気を発症してしまうと私は感じます。これが精神病として現れるのです。そのキャパシティーには個人差がありますし、ストレスの感じ方にも、個人差があると思います。ですから、人間がストレスに少しでも感じる限り、この精神病というものは生じますし、誰でもがこの病気になる可能性があるということを声を大にして言いたいのです。

 さて、これから統合失調症について述べていくわけなのですが、先ほども申しました通り、精神病の一つであり、だれにでも起こりうる病気です。まず、統合失調症というものは、以前別の呼ばれ方をしていました。そう、精神分裂病と。精神が分裂するということからパニックを起こした症状が続くから、名付けられたのでは?という個人的には推測しています。

 しかし、その症例とは、異なるものが数多くあることは、皆さんご存じでしょうか?何も叫び続けたり、異常な行動を起こしたりしている方だけが、統合失調症とは言えないのです。この文面を書いている私自身が統合失調症の患者であるということを、皆さんは覚えてらっしゃるでしょうか?

 さて、精神病にかかる方の多くが、心が優しいことを皆さんは、どれだけご存じでしょうか?時々、自己が強すぎて病気になる方もいますが、私が見てきた多くの方は、いろいろなことや、他の方とのことを悩み、苦しんで病気を発症する方のほうがむしろ多いと感じます。なぜなら、患者同士が譲り合い、助け合う姿をつぶさにこの目に幾度もするからです。少し脱線しましたが、先ほど記したことを、心に留めてそんな方とぜひ積極的に接していただきたいと、切に願うものです。

 話を戻しまして統合失調症というものは、多くの症例があります。もちろん、大声や寄声をあげるもの、幻聴や幻覚もありますが、他にも洗剤恐怖症みたいなものまであります。なぜ起こるかという、メカニズムは定かではありませんが、前に挙げたストレスや、過去のトラウマなどで起こるものなどと考えられます。

 ここでは、私の症状である、幻聴・幻覚に絞って考えていくことにします。まず、皆さんは当たり前だとは思いますが、目で物を見て、耳で音を聞いているかと思います。もちろん、それは私も一緒です。では、夢の中ではどうでしょうか?それにおいては、様々な方がいるかと思います。白黒の夢の方、フルカラー(色付き)の方、音声まで聞こえる方など。私は先日、夢を見て驚きました。フルカラーの夢であり、音もストーリーもあり、さらに匂いまでついていました。時々、夢と現実を間違うことがある方もいらっしゃるらしいのですが、ここまでいくと、本当にどこまでが現実で、どこまでが夢かと錯覚するほどです。これは、まだ眠っているときに起こったために、「夢だった」と思いますが、これがもし、目を開けているときに起こったとしたら、どうでしょう?まさにこの状態が私には起こったのです。リアルな幻聴・幻覚で、しかも自分が人を殺しているリアリティのある幻覚をずっと見続けて精神がおかしくなることは、当然であると私自身思っています。

 これが統合失調症、強いて言えば、私自身の病気の症状の一部であります。

 病気というものは、一概に、早期発見・早期治療が一番の手立てだとよく言われます。この統合失調症も同じく、発見を早めることで、治りが早くなるとされています。では、どのようにすれば、早期発見が可能か?ということについては、次に述べていくことにします。

 統合失調症という病気は、進行とともに、様々な症状が出てきます。まず、イライラしたり、情緒不安定になったり、眠れなくなったりしてきます。そこで、本人が普段と違うことに気づき、かかりつけなどのお医者さんの元へ行くことができればいいのですが、この病気を持つ方というのは、人に迷惑をかけることを嫌う方もいます。ですので、家族の方や周囲の方が気付いてくれることが、早期発見の一番の近道だと思います。これを気付くことは多少難しいことかもしれませんが、目が充血してたり、落ち着かない行動をとるなどのサインを本人は出しています。普段から会話することも大切だと思います。そうすることにより、本人も安心して話をすることができるようになるかもしれません。

 また、早期発見をした時の対処法としては「本人になるべくストレスをためさせないこと」です。それ以上の心の負荷は、病状を悪化させるだけでなく、最悪の場合、自ら死を選んだり、他の人を殺したりしかねないからです。そうなる前に病院へ行き、投薬治療や行動療法などにより、心のリハビリをする必要があります。そうすることにより、また再び社会復帰して、働くことも可能になる方も多くいます。まずは休養が一番大切である、ということだけは肝に銘じていてください。

 では、発見が遅れて、進行が次のステージに行ってしまった場合、どうすればいいでしょう?答えを言ってしまえば病院に入院してしまう事が一番適切な処置かもしれません。なぜなら、専門のスタッフ、医者などの手で投薬・休養等により、症状が回復する可能性が多くあるからです。また、自殺の可能性も減りますしね。そのときに、本人は恐らく、社会から離れる悔しさや、病気と認める苦しさなど、色々な気持ちが湧いてくるはずです。落ち込んでいる本人にそれ以上苦しめる言葉を周囲が与えてしまう事が心配であります。これをしてしまうと、本人は、病状が回復に向かわなくなります。それどころか、病状を悪化させる一因になりますので、気を付けてください。

 先ほど、専門のスタッフ、医師などが病院にいる、と記しましたが、これには、入院していた私からお願いがあります。確かに、変な行動や意味不明な言葉を発している患者がいるとは私は思っていました。その一つ一つの言動には、すべて意味があると私は感じています。それに対して、すぐに怒声を出したり、手を上げたりしないでください。それは、サインであり、心の声であるのです。そのひとつひとつを無駄にしないでください。もう少し心にゆとりをもって接してください。もし、その病院のスタッフ全員がそんな気持ちで、患者に接してくださるのであれば、恐らくその病院で入院している患者の9割ほどは退院できると私は思います。この病気の特徴の一つに、入院が長期になることが挙げられます。それは、病院内でのストレスが一因にあるかと思います。人を人して、扱うことの大切さを考えていただきこの章を閉じます。

あなたには生きていてほしい挿絵01

第3章 生きている価値

 今、私たちが生きていることは当たり前でしょうか?人が誕生するためには、父と母が存在し、その父と母にもそれぞれの両親が存在します。さらに、自分の父と母の分身が幾億・幾兆個ともいわれるだけ存在しています。その中で、生まれたあなたは、わずか幾億・幾兆分の1の存在であることをまず知っていただきたい。それだけ命の誕生とは、重たい存在であると思います。それは、わが子に魂が宿る瞬間であり、一つの生命の誕生であり、子孫としての繁栄の糸筋の光明であろうかと思います。しかし、このように子孫を残しているのは、何も人間だけではありません。動物や植物においてもそうであるのです。また、無機物にも繫栄を残そうという力があるという説まであります。

 ところで、宗教的に言えば、魂は存在し輪廻転生で死んでも再びこの世に戻ってくるという説が多くあります。しかし、私には、あの世や魂の存在は正直分かりません。ですから、この世において、精一杯生きていようと考えています。そして、死ぬ間際に、私の人生は素晴らしかった、と胸を張って笑って言えるようになりたい、ただそれだけです。その時に、多くの家族、友人、知人などがいてくれれば、もっと嬉しいです。

 宗教といえば、もともとアニミズムというものから起こったと言われています。このアニミズムというものは、自然を崇拝することが起源とされています。例えていえば、太陽を拝むという行為、そして、おてんとうさまには、霊が宿っているという考え、これがアニミズムであります。ですので、昔の人々は、草木や動物を獲るときには、畏怖の念をもって、殺し、食したと言われます。さらに言えば、今のような乱獲もなかったともいわれます。このことにより、食物連鎖が成り立ち、生物の絶滅ということは、少なかったと思われます。しかし今はどうでしょう。すごいスピードで絶滅種が出てきて、全滅している生物もいます。「足るを知る」と言われますが、お金のためなら、後はどうなってもいいと考える風潮があまりにも強くなっているのではないか、と思います。

 少し脱線しましたが、私は「なぜ生きているのか?」と問われれば「自分の生きた証を遺すため」と今では答えられます。それまで小学生の頃より、「なぜ生きているのか」「生きてゆくのか」ということを考え続けました。ある時は、過去の偉人の伝記を読み、またある時は、哲学書を読み、さらにある時は、聖書などまで読みました。その答えが「生きた証を遺すこと」なのです。

 私には、まだ後世に残す子供はいません。ならば自分の考えを後世に残すために本にしてはどうか?と考え、この本を作成しています。そのお陰で様々なことが見えてきて、生きてゆくことが楽しくなってきました。

 ですから、あなた(読者)には、子供がいる方、歌手として歌を唄っている方、科学者など色々な方がいるはずです。その生きた証を一つでも残していけば、生きている価値があると思うのです。でも決して、悪いことで名を残すようなことだけは決してしてはなりません。死ぬ前に後悔しますし、笑っては死ねないと思うからです。

 もし、自分には残せるものが何もないと言われる方がいらっしゃるとしたら、これからそれを見つければいいのです。何でもいいから、一つだけこの世に「Only one」を残して去っていってください。これは私からのお願いであり、生きることを楽しくする方法でもあります。どうぞ、生きていくことに不安ばかり持たずに楽しく生きてみてください。きっと、見える世界が今までと変わってくるはずです。

第4章 病気からのリカバリー

 この章では、病気になって、どうやって生活すればいいかわからない、元に戻るためにどうすればいいかわからないなど、不安からの脱出について考えていきます。

 まず、病気になって、休養を取ってまた復職したいと思った方がいるとします。しかし、前のように元通りになるかというと、そうでない方がたくさんいることも事実です。リカバリーと言うと、回復と思われるかと思いますが、ここでいうリカバリーとは、悪いことも良いことも経験しながら進んでいく様を描いています。

 まず当事者ご自身が、病気だったと自覚することから始まります。その病気からどうやれば、リカバリーすることができるのか?それをご自身で考え、勉強することが必要かと思います。

 その一つのツールとして、WRAP(ラップ)というものがあります。基本的には、元気に役立つ道具箱や病気の引き金、クライシスプランなどを自分自身で考え、書いていくというものです。

 私がリカバリーに出会って、いろんな情報を手に入れていく中、意外と早く知ったのが、このWRAPでした。私も元気に役立つ道具箱というもので、どうやれば、自分で元気に生活できるかというものを考えるきっかけになるものでした。

 その一部をご紹介すると、ロードス島戦記オンラインというネットゲームをする、家入レオさんのShineという曲を聴く、中央競馬の重賞レースの予想をする、などより具体的に自分がより元気になることを書いていくのが特徴です。

 その後、リカバリーカレッジというものに出会いました。これが衝撃的でした。リカバリーについて、当事者も家族も専門職(医師や看護師や精神保健福祉士や大学の先生など)が一緒の立場で、学びあるというものでした。学んでみようと思い、インターネットで参加したところ、運営を募集しているということで、新たな扉を開けてみようと決心して、リカバリーカレッジふくおかの運営として、学びある楽しさを感じているところです。ここには、一人の人間として参加しています。もちろん、病気の体験をしたものとしての意見や発言はしていますが。今後の展開が楽しみです。

第5章 あなたには生きていてほしい

 いよいよ最終章になります。このタイトルの「あなた」の指しているものは、これを読んでくれているあなたです。

 自殺者の数は、一時減っていたものの、年々増加の傾向にあり、今では、交通事故の死亡者より多く年間約3万人と言われています。しかし、その陰には未遂で終わっている方やしようとしている方がいることを忘れてはいけません。その一人である私には、そんな方々に生きていてほしいと切に願っています。このことが、この本を書いている大きな意義であり、伝えたい一番のメッセージでもあります。

 余談ではありますが、私が入院する前日の夜、あるインターネットのサイトでチャットをして、この本のタイトル「あなたには生きていてほしい」を執筆していることを表示すると、他の方から「私こそ、あなた(著者)に生きていてほしい」という温かいメッセージをいただき、凄く感激しました。だからこそ、この感謝を他の方々にもお伝えしたいと感じています。

 話を戻しまして、自殺を防止する活動があちらこちらで行われていますが、一向に減りません。では、どうすれば、自殺を防ぐことができるのでしょうか?答えは簡単です。「本人が自殺しようと思わないこと」です。ですから、「自分がこの世の中で一番不幸だ」と考えてしまう節があるかもしれませんが、実際はそうではありません。「世界で百番目に不幸だ」くらいに考えてください。もっと不幸な人は、世の中にいくらでもいます。そう思うことで、心にゆとりを持ってください。そのあとは、心の許せる人と真剣にお話ししてください。決して、早まった行動だけはしないでください。自分が死んでも涙を流してくれる人なんていないと思ないでください。例え誰も悲しまないとしても、私が涙するに違いありません。生きることは、凄い価値・可能性を秘めています。もし、自分に何もできないとしても、多くの人がいれば、少しなりともできることがあるかもしれません。

 まずは自分のために、そして心に余裕ができたなら、他の人のために生きてください。私もこの本を書くためにそして、同朋の心のビタミンになるため、これからも生きていきます。志を同じくする者がいればすごく嬉しく思います。

 私には、多くの趣味があって、いろんな仲間がいて、両親もいます。すごく恵まれた環境です。そして、これを読んでくださっているあなたと友達になれればすごく嬉しく思います。そして、他の方が喜ぶことを行い、それを自分の仕合わせにしてゆきたい、そう心から願うものです。最後に私の考えた詩を掲載しておきます。

ココロの唄

闇の声がやってくる

心の影が映しても

明るく光り照らしてくれる

希望の未来踏みしめて

今日の道を歩んでく


誰かの声が聞きたいよ

闇の中進んでいけば

未来の夢 輝きだす

下り坂を進みゆけば

きっと登れる明日がくる


さいごに

私の拙い文章を最後まで読んでいただき、凄く感謝しています。私の人生にはいろいろな嫌なことなどが生じましたが、今では、それらの人や事柄を恨んだりしていませんし、後悔もしていません。そのお陰で、この本をこの世に送り出すことができたのですから。この本を書いた意義は、「はじめに」にも書きましたが、私の実体験を通して、統合失調症の現状とそれにかかっている、もしくは、かかろうとしている方々に生きていてほしい、という願いがあり、執筆しました。いろんなご意見等はあるかとは思いますが、これは、私個人の見解であり、専門書等の言葉ではなく、なるべく自分の言葉でわかりやすく書いたつもりです。一人でも多くの方へ読んでいただけたらと、切に願うばかりです。表紙絵・挿絵&似顔絵を描いていただきましたかえでさん、いつも応援してくれているリカバリーカレッジふくおかをはじめ、リカバリーカレッジの方々、そしてこれを見てくれているあなたに感謝です。最後に、生きている価値のない方なんていません。自分のために、人のために生きてください。

                         2022年2月1日                       

                              かけるん

作者について

あなたには生きていてほしい似顔絵白黒

かけるん、です。統合失調症の当事者として生きています。精神的疾患をもつ方にも生きていてほしい、そんな願いからこの文章を書きました。ぜひ、統合失調症を知らない方にも読んでほしいです。

#創作大賞2022

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