1999年に、「男女が共にその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の形成は、我が国の重要な政策課題の一つ」として、「男女共同参画社会基本法」が制定されました。その当時(平成28年社会生活基本調査「生活時間に関する結果」)でも、家事負担は女性に重く、男性の職業関連時間は、女性の2倍強でした。「家事分担」から「家事シェア」、家事や育児を母親のお手伝いから、夫婦や家族みんなで共有する形へと変えていきたいという提案もあります。
羽仁もと子の生きた時代は、今とは環境も文化も異なっていますが、それでも家の中における主人(夫)の立場は、現代とも共通する悩みのようです。
家庭内における男女の役割は、共働き家庭の増加などによって、当時に比べればフラットになってきているとはいえ、家事や育児についての役割は、まだまだ母親頼みなところもあるかもしれません。また、上記文章の中には、夫が家族と同じ日常生活を送れない(送らない)ことに起因する、健康への影響についても記されています。
『簡易生活(シンプルライフ)』という言葉は、現在も多くの人の目標になっていますが、羽仁もと子の文章から読み解くと、家族それぞれが家人の労力に理解を示して、「ぴんぴんした病人」でないことが、第一歩なのかもしれません。誰かにやってもらう意識ではなく、自分の家のことは自分でやろうという意識を、家族みんなが持つことが、シンプルライフへつながっていくのでしょう。