
リアルタイム経営管理を実現する、PL・KPIの予実フォーキャスト管理構成
この記事はBizOpsアドカレ 17日目の記事です。 前回はマエスさんによる「ダイナミック・ケイパビリティ」-1人から30人BizOps組織へ- 大事にした価値観を紹介してみる」でした。
はじめに
経営者やマネージャーの皆様、PLやKPIを日次で振り返ることができたらいいなと思ったことはありませんか?
月次や四半期の単位では多くの会社で振り返りを実施されているかと思います。
偶然見かけたソフトバンクグループの孫正義さんに関する記事でこんな内容があり、確かにそりゃそうだよなと。
月次決算で数字を見ても、1ヶ月前の数字ではまったく役に立ちません。毎日の決算を出すことにより足元の状態をすばやく知って、初めて対策が打てるようになります。
私は新卒でソフトバンク株式会社に入社して、事業戦略のチームに在籍しており、日次どころか数時間単位で、KPIを追う環境におりました。
右も左も分からない状態だったので、予実管理ってそういうものなんだなと思っておりましたが、数年経った今思うと、明らかに異質でした。
では日次での予実フォーキャスト管理を実現するには一体どうすれば良いのだろうかというのが、今回の記事です。
*フォーキャスト=予測
1. 目的
経営・マネジメントに関わる方が策定した、経営・事業の計画に対して、
財務状況と営業関連KPIの実績・フォーキャスト(予測)というフィードバックを受け取り、迅速な意思決定を支援する。

2. 構成
まずはイメージを掴むための例
複数のデータソースを1つにまとめて、加工して、BIツールで可視化する。必要に応じて、その内容をまとめてSlackなどへ通知して気づくようにできればベストです。

今回実現したいことの全体像
うわっとなるかもしれませんが、ちょっと待ってください!
ポイントは変わらず、複数のデータソースを1つにまとめて、加工して、可視化するだけです。

では日次でPL・KPIの予実フォーキャストを実現するには、具体的にどのようなツールが必要なのか分解して解説します。
2.1データソース:Freee、HubSpot、スプレッドシート等。
予算であれば期初に作成したスプレッドシート。
実績であれば、日々データが入力され、蓄積している場所。営業系であれば、SalesforceやHubSpotなどCRM。財務系であれば、FreeeやMFクラウドなど。
フォーキャストであれば、CRM内の当月受注予定の商談・取引に関するデータです。
2.2データパイプライン、ワークフロー管理:Fivetran、Cloud Composer
多くのツールがあるため、一例として記載します。
Fivetranで各データソースから転送。
続いて、定期的にCloud ComposerでCloud StorageとBigQuery間のデータ移動と変換プロセスの自動化。データパイプラインの作成、管理、スケジューリング。
2.3データレイク:Google Cloud Storage
データソースから一旦ざっと投入する場所です。無加工でOK。
2.4データウェアハウスおよびデータマート:BigQuery
データソースを扱いやすいように加工し、整理されたデータの保管場所。
予算(スプレッドシート)、実績(FreeeやCRM)をSQLで組み合わせて1つの形で見れるようにする場所です。
2.5BI:Looker Studio
今回Looker Studioを選んでみましたが、TableauやRedashなどでももちろん可能です。
そしてもっとシンプルに進めたい場合、データレイク、CloudComposerを除いても実現できます。
さてここまでで必要なパーツが出揃いました。
続いては何をどう見るかの案を書いていきます。
3.見たい指標の整理
財務関連指標
収益
売上高、売上高総利益。それぞれの率。
サービス別の売上高の構成費。またストック、フロー別。
費用
原価
勘定科目別の販管費。
固定費、変動費別。
営業利益
事業管理の観点であれば、営業利益までで良いでしょう。
キャッシュフロー
現金の管理はとても大切です。ぜひ見れるようにしておきたいです。
営業関連KPI
受注・失注数、受注金額
新規リード数、商談作成数
クローズ予定の商談数、商談金額
SaaSであれば、MRR、ARR、NewMRR、Churn(カスタマー、レベニューなど)、ARPA、CAC、Payback Periodなど代表的な指標は押さえておきたいです。
4.ダッシュボードの機能
「使われる」ダッシュボードを作るコツは「誰がいつ何をするために使うのか、そのために必要な情報」を利用者と丁寧すぎるぐらいにすり合わせて作ります。
ここをサボるとどんなに良い情報でも使われないです。
その上で以下のような切り口で切り替えがスムーズにできると便利です。
時間軸によるデータ表示切替(日次、月次、四半期ごと、年次)
ドリルダウン機能による詳細データアクセス
視覚的な表示(グラフ、チャート、ゲージ)
比較分析(目標値、過去のデータとの比較)
インタラクティブなフィルタリング(地域、チーム、製品ライン別)
5. 利用サービスのまとめ
データソース:Freee(財務)、HubSpot(営業KPI)
データ転送・統合:Cloud Composer、Fivetran
データレイク:Google Cloud Storage
データウェアハウス:BigQuery
ビジュアライゼーション:Looker Studio
財務や営業実績はMFクラウドでも、Salesforceでも可能です。
APIが解放されているか、データ転送サービスと連携していれば、データレイクorデータウェアハウスへデータを投入することが可能です。
(今後何かツールを導入検討する際はぜひデータ連携がどこまでスムーズかをご確認ください!)
6. 実施計画
必要なデータが会計ソフト、CRMに揃っていれば以下のようなスケジュールで進めることができます。
要件定義(1-2ヶ月)
実装(1-2ヶ月)
データソースからのデータ収集とCloud Storageへの保存。
Cloud Composerを使用したETLプロセスによるBigQueryへのデータ転送。
BigQueryでのデータウェアハウスおよびデータマートの構築。
Looker Studioを用いたダッシュボードの開発。
改善
定期的なレビューとダッシュボードの更新。
揃っていない場合、データを取得できるようにビジネス・バックオフィスでオペレーションを変更したり、修正したりする必要があります。
ここが実際に進める際に最も苦労する部分です。
ビジネス・バックオフィスのドメイン知識・社内事情を理解しつつ、システムの設計ができ、データを扱うことができるプロジェクトチームが必要です。
どれもマストなので1つ要素が欠けるだけで、進みが悪くなるか、頓挫してしまうケースが多いです。
宣伝ですが、ここをAll-in-Oneで実現できるのが弊社ネクサフローです。

7. ROI考え方
結局、これをやると何が良いのか?考えてみます。
お金
雑かつ控えめなシミュレーションですが、300人の会社だと想定して、数値を管理したり扱ったりする方が30%の90人とします。
1人あたり毎週1時間で、月間4時間削減できれば、360時間の削減です。約2.5人分の工数削減です。
この削減効果は運用が始まれば、毎月恩恵を受けることができます。1年で4,320時間の業務時間創出です。仮に時給5,000円とすると2,160万円のコスト削減です。
営業利益率10%だと、売上2.16億円に相当する価値です。控えめでも大きいですね。
競争優位性の構築
さらに意思決定の高度化に繋がるので、無駄な投資を防いだり、必要な投資を増やしたりと、直接見えづらい事業の改善速度と質向上が見込めます。
わかりやすくて最も強力な競争優位性です。
リターンの得やすさ
売上はコントロールしづらいのですが、コストやオペレーションについては正しく取り組めば確実にリターンが得られます。そしてメンテナンスすればほぼ永続的。
組織のよくない状態の防止
そしてもし放置しておくと起こりうる、"組織のよくないこと"を防ぐことができます。
少しずつでも良いので、振り返りの機会を持つことはとても大切です。

まとめ
日次で会社の予実フォーキャストを出すことについては、誰もがそりゃできたらいいよねと同意していただけるかと思います。
そしてその実現方法の案をまとめてみました。
しかしこれを実現するには経営・マネージャー・現場の縦レイヤー、ビジネス・バックオフィスなどの横の部門間連携が欠かせません。
もし以下のようなお困りごとがある場合、ぜひカジュアルにご相談ください。
経営
経営会議で予算、実績、フォーキャストを手入力で表を作成して報告するのが大変。
->必要なデータを定義して、見れるようにオペレーション、システム、データに工夫が必要です。
マーケティング
施策別のCPAを出したい。手集計を止めたい。
->各種広告チャネル、MAツールのオペレーション・設計の問題
セールス
予実管理のエクセル・スプレッドシート集計を止めたい。
商談・取引の案件管理をもっと楽にしたい。
->CRMの設計、オペレーションの問題
CS
顧客別の利用実績を見たい。毎回データエンジニア・データサイエンティストへ依頼するのが申し訳ない。特定人物への負荷を減らしたい。
->プロダクトデータは多くの場合あるので、ビジネスサイドでも取り出しやすいように運用を工夫する必要があります。
バックオフィス
まずは財務の予実を月次で運用できるようにしたい。
->予算データの作り方、会計ソフトでの実績管理の見直しが必要。5営業日で月次を締められない。
->給与計算、経費精算、請求書提出、請求書受取などに見直しが必要
いずれのパターンでも現状の業務プロセスやツールを整理する必要があります。
会社の全業務を網羅的に整理できるフォーマットをご共有しますので、ご活用いただけますと幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございました!