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少年の詩

 Mは今起床した。Mの寝ているベッドの隣、茶色い棚の上には目覚まし時計が置いてある。
「ジリリリリリ!」
 けたたましくなるそいつをMは叩き音を止めた。
時刻は7:30。一限まであと1時間ある。十分間に合う時間だ。
 急いで下に降りる。すでに朝食のウインナーは冷めている。Mは食事に時間がかかる。わりかし考え事をするからであろう。
「ごちそうさまでした」
 Mがはっきりとそういった。Mは自分の声が好きでない。
 そのあとは歯を磨く。そして髪を整え家を出る。この時点で一限まで残り30分。ここから20分かけて高校まで向かう。
 高校までの徒歩20分いつもMは音楽を聴く。マイリストをランダム再生する。


『パパママおはようございます。今日は何から始めよう・・・』



予定通り。なんの問題もなかった。
「おはよう」
友人が声をかける。彼女は天性の陽気さとその可憐さを振りまきながら、誰にでも、当たり前のように挨拶をする。もちろんそれはそうなのだが、Mはそのことをしばしば失念する。
「あ、おはよう」
Mは挨拶を返す。少し動揺しながら。
「テスト勉強した?」
彼女は続けて言う。今日は英語の小テストがある日だった。
「あ・・・そうか忘れてた」
Mは何の勉強もしていなかった。
「あれ、珍しいね。普段はきっちり勉強してくるのに・・・それなら今日のテスト・・・」
と、彼女が勝算を述べようとしたところで予鈴がなった。じぶんの席に着く。
今日の時間割は、現代文、世界史、物理基礎、英語表現、数学ⅡBとなっていた。小テストは10点満点中4点。彼女は8点だったらしい。
「ほらね」
彼女は得意げに言った。Mが悔しがる素振りを見せると益々上機嫌になる。
Mもそれを見て少しだけ気分が上がる。慌てて平然を繕う。

下校の時間になった。来週テストがあるため部活動には向かわずそのまま帰る。
友人と帰ろうとしたとき彼女はMに声をかける。
「あれ、もう帰るの?いっつも教室でしゃべってから帰るのに」
「うん、さすがにテスト勉強しなきゃね」

Mはまたも少し動揺しながら返事をする。
そして足早に帰ろうとする。あまり長居すると顔からすべてばれてしまいそうな気がするからだ。
校門をでると、すっかり動揺は収まり、頭のなかで反省会が始まる。「なにも変なことはいってないだろうか・・・」
今日は家路につく。道草を食ってもよいが、なにせテストが迫っている。それどころではない。

友人を家に迎え入れた。テスト勉強をともにするためである。18時を過ぎたころには一単元を終え、期末テストの範囲の広さを憂いた。

友人が帰宅し、一人で補講を続けているところ、一本の電話がかかる。友人からだった。先ほどともに勉強した友人。
「勉強してるか?」
電話をつなぐなり親みたいなことを言う。
「まあ、ぼちぼち」
Mは定型文で返事をする
「今回の範囲広すぎない?これを9教科もやらなきゃならないなんて。しかも一週間だぜ?間に合うわけないだろ」
彼は不満を言う
「そりゃあ君みたいに0から9教科を一週間でやるのは無理だよ。普通の人は10%、20%の積み立てがあるから」
Mはいう。
「よく言うよ・・・まあ、お前も頑張ってあの子にいいとこ見せられるようにしなきゃな」
彼が反撃のように言う
「余計なお世話だ。そんな古めかしいいじり方をするな。」
「あの子と勉強会は?思い人と勉強会なんて青春ど真ん中じゃないか」
「そんなのしてないよ、どうして君はそんな古い言い回しをするんだ」
「そんな事ねえだろ、なかなかナウいと思うぜ?」
「まあ、いいんだよ。今は好意がばれないようにしないと。下心見え見えで仲良くなれるわけないしな」
「お前はいつまでLesson1をやってるつもりなんだ。もうすぐ期末もあるのに」
「うるさい。Lesson2に向かうには大きな勇気が必要なんだよ。きみにはわからない」
「そういうもんかね、まあそろそろ風呂入ってくるわ・・・あ、そうだ明日の放課後って空いてるか?」
「空いてるよ」
「じゃあ勉強会をやろう。数ⅡBの微分がどうしてもわからなくてさ」
「いいよ、じゃあ放課後待ち合わせをしようか」
「おうけい。じゃあ明日」
「じゃあ明日」
Mがお決まりの別れを告げると電話は切れた。
風呂に入り、歯を磨く。そしてベッドに向かい
「大丈夫、まだばれてない。明日こそLesson1を終えてLesson2へ行く」
さしていつもと変わらぬ決心をし眠りにつく。

 朝が来た。目覚ましに起こされMは目を覚ます。
いつもの支度を済ませMは家を出る。高校までの徒歩20分Mはいつも音楽を聴く。昨日のランダム再生にお気に入りの曲があった


『少年の声は風に消されても、ラララ・・・・・・間違ちゃいない』



予定通り。なんの問題もなかった。
「おはよう」
友人が声をかける。彼はフレンドリーさと可憐さを振りまきながら誰にでも、当たり前のように挨拶をする。もちろんそれはそうなのだが、Mはそのことをしばしば失念する。
「あ、おはよう」
Mは挨拶を返す。いつものように努めて冷静に。
「テスト勉強した?」
彼は続けて言う。今日は世界史の小テストがある日だった。
「あ・・・そうか忘れてた」
Mは何の勉強もしていなかった。
「あれ、珍しい。普段はきっちり勉強してくるのに・・・それなら今日のテスト・・・」
と、彼が勝算を述べようとしたところで予鈴がなった。じぶんの席に着く。
今日の時間割は、古文、世界史、科学基礎、英語表現、数学IAとなっていた。小テストは10点満点中4点。彼は8点だったらしい。
「ほらみろ」
彼は得意げに言った。Mが悔しがる素振りを見せると益々上機嫌になる。
Mもそれを見て気分が上がる。もちろんおくびにも出さない。
下校の時間になった。来週テストがあるため部活動には向かわずそのまま帰る。
約束通り校門の前で待っていると彼が声をかける
「おまたせ」
「ああ」
Mはまたも努めて冷静に返事をする。
そしてゆっくりと家に向かう。あまり急ぐと顔からすべてばれてしまいそうな気がするからだ。
校門をでると、すっかり動揺は収まり、頭のなかで反省会が始まる。「なにも変なことはいってないだろうか・・・」
今日は家路につく。道草を食ってもよいが、なにせテストが迫っている。それどころではない。
彼を家に迎え入れた。テスト勉強をともにするためである。18時を過ぎたころには一単元を終え、期末テストの範囲の広さを憂いた。しかし、実のところMはそれどころではなかったのだが。
彼が帰宅し、一人で補講を続けているところ、一本の電話がかかる。友人からだった。先ほどともに勉強した友人である彼。
「勉強してるか?」電話をつなぐなり親みたいなことを言う。
「まあ、ぼちぼち」
Mは定型文で返事をする
「今回の範囲広すぎない?これを9教科もやらなきゃならないなんて。しかも一週間だぜ?間に合うわけないだろ」
かれは不満を言う
「昨日も言ったけどさ、普通の人は10%、20%の積み立てがあるんだよ」
Mはいう。
「よく言うよ・・・まあ、お前も頑張ってあの子にいいとこ見せられるようにしなきゃな」
彼が反撃のように言う
「まだいうのか。そんな古めかしいいじり方をするなと言ってるだろ」
「あの子と勉強会は?こんなところで勉強してていいのか」
「いいんだ、いいんだよ。どうして君はそんな古い言い回しをするんだ」
「そんな事ねえだろ、なかなかナウいと思うぜ?」
「とにかく、今は好意がばれないようにしないと。下心見え見えで仲良くなれるわけないしな」
「お前はいつまでLesson1をやってるつもりなんだ。もうすぐ期末もあるのに」
「うるさい。Lesson2に向かうには大きな勇気が必要なんだよ。きみにはわからない」
「そういうもんかね、まあそろそろ風呂入ってくるわ・・・あ、そうだ明日の放課後って空いてるか?」
「またかい?空いてるけどさ」
「じゃあ勉強会をやろう。今度は英語がどうしてもわからなくてさ」
「いいよ、じゃあ放課後待ち合わせをしようか」
「おうけい。じゃあ明日」
「じゃあ明日」
Mがお決まりの別れを告げると電話は切れた。
風呂に入り、歯を磨く。そしてベッドに向かい
「大丈夫、まだばれてない。明日こそLesson1を終えてLesson2へ行く」
いつもとさして変わらぬ決心をし眠りにつく。

そして朝になる。「今日もまた」Mは心の中でつぶやく。
いつもの支度。そして家をでる。
今日も音楽を聴く。またあの曲だった。Mは放課後の算段をしながら高校へ向かう。


『いろんなことが・・・思い通りに・・・なったら、いいのにな・・・』



(the blue hearts 「THE BLUE HEARTS」作詞作曲甲本ヒロト『少年の詩』より一部引用)