あこがるる
「大学、どこに行くと?」
中間テスト前の日曜日。
友達と集まって勉強するから、
と、家を出たあたしは
駅前のゲームセンターにいた。
大音量のアーケード版ダンスゲームで汗だくになりながら、
上手いことステップを踏む男子に問いかけた。
『 美大 』
画面から目を離さず、男子はそう答えた。
田舎の進学校。
はみ出さないように生きていたあたしにとってその進路を口に出すのは、
羨ましくっても、出来ない。ことだった。
音がやむと男子は、左手でペットボトルのキャップを外して口に持って行って傾けた。
その仕草をじっと見つめていたのを、物欲しそうに見ている、と感じたのだろうか。
『飲むか?』
まっすぐこちらを見て、
右腕で差し出されたシュワシュワした飲み物。
くちびるから
なぜか顔じゅう、かぁあっとなった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?