コロナ禍の振り返り

2025年3月で現病院を去るに当たり、2023年時点でICDとしてメンバーに伝えた感染対策の方針について、記録として残しておきます。

院内感染予防

社会が感染を許容する方針へシフトしていますので、院内感染ゼロを目指すのは現実的ではないですし、致死率・重症化率の低さと感染力の強さ (空気感染)を踏まえると尚更です。

流行度に応じて一定数の感染者(無症候性含め)が院内に存在することになりますが、 そのような状況下において、予定入院患者への全例抗原検査で患者をピックアップすることが、 全入院患者の予後にどれだけの影響を与えるか?ということを考える必要があります。

予後に与える影響が大きくなりうるのは血内などごく一部の患者です (超高齢者は時に致命的ではありますが、予後に与える影響は小さいと考えます)。

易感染患者をどのようにコロナ感染から守るかということが最も重要ですが、その前提として、標準的SSI予防をしても一定率でSSIを発症してしまうことが現代の医療で許容されているように、 易感染性患者が一定率でコロナに院内感染することは許容せざるを得ないと思います。

現実的な線引きをしないといけないです。それが個人的には易感染患者に関わる範囲内での標準予防策+経路別予防策だと思います。 それ以上の患者・スタッフを巻き込んでの予防策(例えば入院患者全例抗原検査、一律の面会制限、スタッフの黙食、健常スタッフへのワクチン推奨など)は過剰と考えます。

  • 易感染患者が自身(±介助者)で出来る範囲内での感染予防を行う

  • 易感染患者でCOVID-19を疑った場合には速やかに検査する

  • 治療薬はリスク・ベネフィットを考慮して投与するか検討する

シンプルにそれだけだと私は思います。


面会制限

平日のみ面会、近親者のみ、子供不可、2名まで、15分といった規制に、医学的・法律的根拠は示せるのでしょうか?

デルタ期コロナや2類相当の時期ならまだしも、5類移行で社会も感染を許容するステージにおいて、基本的人権とも言える移動の自由を制限できる根拠が、我々医療者にあるのでしょうか?

患者は病気を治すために生きているのではありません。生きるために病気を治そうとしているのです。病院で生きていく中でキーパーソン以外の親しい人や子供と面会する権利を、患者から剥奪する権利が我々にあるのでしょうか?

抑制の問題と同様、これは根深い問題だと思います。感染症家・医療従事者が人権を軽視して我が物顔で意見を押し通してきたことに関して、省察すべき時期だと私は考えています。この面会制限に私は反対です。


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