持家と賃貸はどちらが有利か
よく目にする賃貸か持家かの議論
結局、人それぞれで結論は出ませんが、諸論点をクイズ形式で拾っていきます。
はじめに(筆者について)
筆者は持家(投資)派です。これまで持家投資により4桁万円の投資効果(利益ではない)を実現しました。具体的には、10年前に購入した港区の持家マンションを6年半後に購入価格+14%で売却しております。この投資効果はどのように測定するのでしょうか。売却価格ー購入価格=売却益だけではありません。賃貸か持家かの文脈で考えるとき、節約できた家賃も投資効果に含まれます。筆者の場合、家賃15万円×12か月×6.5年=1170万円もの家賃が節約できました(家賃は仮定の数値ですが、直前に払っていた家賃はもう少し高いです)。売却後に賃貸に戻ったとすると、この分が丸々貯金として残ることになります。実際には、2件目の持家を購入するのが自然ですから、EXITのタイミングの見極めが難しいのですが、今回の記事の趣旨から外れるので、別の機会に譲ります。
クイズ
Q1 持家は住宅ローンの金利負担があるから不利である。
A1 不正解 家賃には金利も含まれています。
そもそも家賃はどのようにして決まるのでしょうか。価格は需要と供給が一致するところで決まる、すなわち市場の家賃相場を見て決める、というのはある意味正しいですが、これでは大家さんの投資採算が分かりません。一般的に賃貸マンションに投資する大家さんは、利益が出ると思っているから投資するはずです。そして、大家さんの多くは銀行等から借金して賃貸マンションを建築又は購入します。そうです、大家さんも借金に対する金利を負担しているのです。これを家賃に乗せて回収しないと利益が出ません。さらに、事業用のローン金利は住宅ローン金利よりも高いことが通常なので、金利の面ではむしろ賃貸の方が不利なのです。
Q2 持家は固定資産税の負担があるから不利である。
A2 不正解 家賃には固定資産税も含まれています。
大家さんの投資採算についてはA1を参照。大家さんが保有する賃貸マンションには固定資産税が課税されます。これを家賃に乗せて回収しないと大家さんは利益が出ません。
Q3 持家は修繕費の負担があるから不利である。
A3 不正解 家賃には修繕費も含まれています。
民法の規定により、賃貸マンションに生じた破損等の修繕費は大家さんが負担することになっています。しかし、大家さんも通常生ずべき修繕費については、家賃に乗せて回収しないと利益が出ません。
Q4 持家の購入価格にはディベロッパーの利益が含まれているから不利である。
A4 不正解 家賃には大家さんの利益が含まれています。
これまでのQで家賃には様々な費用が含まれていることを見てきましたが、大家さんは投下した費用を回収できれば十分ではありません。これではただのボランティアです。大家さんの生活費の原資になる利益を家賃に乗せないことには、大家さんは生活していけません。
Q5 毎月の住宅ローンの返済額(金利込み)と同額の家賃で同じ広さのマンションを借りられる。
A5 不正解 一般的に同額の負担では、狭い部屋しか借りられません。
これは、大家さんの投資回収期間が関係しています。例えば、賃貸マンション1部屋の建築費等の投資額5000万円を20年で回収しようと思ったら、家賃は約21万円になります。一方、住宅ローンは35年間で返済すれば良いので、5000万円のローンを組むと、毎月約12万円の負担で済みます。毎月の返済額を家賃と同じ21万円に揃えると、8750万円のマンションが買えるはずです。すなわち、毎月同額の負担を前提にすると、賃貸の方が部屋が狭くなってしまうのです(上記の計算では、簡単化のために金利や諸費用を無視しています)。
ちなみに、大家さんが銀行等からローンを借りるとき、返済期間はどれくらいになるでしょうか。住宅ローンのように35年ということは滅多にないでしょう。ローンの返済原資となる家賃は、マンションが古くなればなるほど空室リスク等により目減りしていくはずだからです。一方、サラリーマンが住宅ローンを借りる場合、返済原資は安定した給与や退職金であるため、長期のローンでも銀行等は安心してお金を貸すことができますし、高い金利を取ってリスクに備える必要もありません。
Q6 住宅ローン控除(減税)があるから持家は有利である。
A6 正解 10年間〜13年間、年末ローン残高の1%が所得税から引かれるため、トータルで400万円〜500万円の節税になります。
購入した年度や中古・新築といった条件で控除額が変わるため、制度の詳細は割愛しますが、賃貸では決して受けることができないメリットです。
Q7 持家は地震等の被災リスクがあるから不利である。
A7 正解 耐震基準を満たす鉄筋コンクリート造のマンションでは稀な事象と思いますが、地震保険でカバーされない場合、持家が滅殺してもローンが残ってしまうことがあります。この点を重視するか否かは個人のリスク選好によるでしょう。
Q8 気分によって住み替えたいから賃貸が良い。
A8 正解 持家では、短期間で売買を繰り返すと損失が発生する可能性が高くなります。
不動産は流動性が低く、相場も株式のように変動は激しくありません。このため、短期間で売り抜けるというようなことはできません。また、購入時には不動産取得税や登記費用が発生しますし、購入時・売却時ともに通常仲介手数料(新築物件は購入時なし)が発生します。このため、短期間で売買を繰り返すと、損失が発生する可能性が高くなります。
若いときは色々な所があり住んでみたいという人も多いでしょうから、その場合、賃貸が合理的とも言えます。ただ、結婚し、子供も生まれて、10年単位で引越しはないかなと思ったら、賃貸を続けることは慎重になった方が良いかもしれません。
Q9 持家は買った瞬間価値が半額になる。
A9 不正解 価格は上がったり下がったりしますが、直ぐに半額にはなりません。
不動産の相場は需要と供給で決まります。人口が増え続けている東京23区では、リーマンショック後を底として、ほぼ一貫して相場は上昇基調にあります。このエリアで価値が半額になるということはあり得ないですね。ちゃんとした物件を半額で売ってくれる人がいるなら筆者に今すぐ売ってください(笑) 一方、過疎化の進む地方では下落基調の相場になっていますし、今後もこの状況は変わらないでしょう。秒で半額にはならないはずですが。
ところで、賃貸か持家かの文脈では、持家の価格下落リスクは考慮すべきではないはずです。ずっとそこに住み続ける限り、売ることはないからです。持家の購入を投資の側面でも行う場合にだけ、リセールバリューを考慮すべきです。大多数の人は、一生に一度の買い物になっていますからね。
Q10 持家(マンション)は管理不良のリスクがある。
A10 正解 マンションの場合、管理組合が各区分所有者から管理費・修繕積立金を徴収して、日常的な管理費や大規模修繕に充当しますが、空室が多くなると、資金難から必要な修繕ができなくなるおそれがあります。特に人口減少地域では、空室リスクが高くなるため、購入には慎重さが必要です。
まとめ
冒頭に記載したように結局人によるということで結論は出ませんが、持家購入に躊躇している方に何かの気づきがあれば幸いです。
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