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初期サービス・ブランドのユーザー獲得における基本戦略

新しくサービスやブランドを立ち上げた人から、「最初のユーザー獲得で苦戦しているのだが、どうすればいいか?」といった相談を受けることが多い。

どのサービス・ブランドでも共通している基本戦略があるので、いつもそれを答えているのだが、意外にもそれで道が開けている人が多いようなので今日はそれについて書こうと思う。

初期ユーザー獲得の大前提

まず、大前提として、大規模なマスプロモーションを打てる大企業ではない場合、初期のサービス・ブランドにおいてお金を使った広告などの施策は不向きだ。

なぜなら、まだ立ち上がったばかりのサービス・ブランドにおいては、

・ユーザーが1人あたりいくら使ってくれるか = LTVが分からないため、1人あたりの獲得にいくらコストを使って良いかが分からない
・サービス・ブランドのコアな価値を端的に説明する"売り文句"が定まっていない

という二重の不確実性を抱えているからだ。


初期ユーザー獲得の基本戦略

したがって、初期ユーザー獲得の基本戦略は、以下の2つがメインとなる。

・ポテンシャルユーザーと対話しまくる
・チャネル ✕ アプローチの試行数最大化


ポテンシャルユーザーと対話しまくる

初期のユーザー獲得において、To Cサービス・ブランドであれば最初の500人は、対話による獲得であるべきだと考えている。

ポテンシャルユーザーと対話しまくる理由は以下の3つだ。

1. お金がかからない(= LTVが分からない問題を回避)

2. ユーザーにとっての価値が明確になる (= Value Propositionの発見)

3. プロダクトの致命的な欠点に早く気付ける(= PSF検証で漏れた問題の発見)

具体的な方法としては、

Step1:以下のいずれかでとにかくポテンシャルユーザーに会う

・実際にターゲットとなる人のところへ行く
・ポテンシャルユーザーにオフィスに来てもらう
・カフェや道端などで属性が合ってそうな人に声をかける(USではよく行われている)


Step2:とにかく意見を聞く

・自社のプロダクトを触ってもらって意見を聞く
・そもそもきちんとプロダクトが課題解決になっているかをでインタビューする
・このサービス・ブランドのユーザーはどういう人達か、という解像度を上げるために彼らの趣味嗜好や習慣について聞く
・このサービス・ブランドがもっとよくなるためにどうすれば良いかをフリーにディスカッションする
・このサービス・ブランドをもっと多くの人に知ってもらう、使ってもらうためにはどうすれば良いかをフリーにディスカッションする

この際の注意点は、「自社のサービス・ブランドを推し売らない」ことだ。

あくまで、会話を通してユーザーの意見から学びを得ることに意識を向ける。


Step3:結果としてユーザー、もしくはそれ以上の存在になってもらう

新しいサービス・ブランドに対して、ポテンシャルユーザーから意見をもらっていると、その人があたかも一緒にそのサービス・ブランドを作っているような感覚になり、気づくとユーザーになってくれていることが非常に多い。

場合によっては、ヨチヨチ歩きでどこかほっとけない新規サービス・ブランドのために、周りに紹介してくれたりといったエヴァンジェリスト的存在になってくれる人も少なくない。

基本的に初期サービス・ブランドのユーザー獲得の基本はこれだ。

スタートアップの一番の武器は、ビジョンへの共感であり、直接そのビジョンに共感してもらう、共犯者になってもらうことで初期のコアなユーザーを獲得していく。


もう一つの初期獲得戦略:チャネル ✕ アプローチの試行数最大化


上述のポテンシャルユーザーと話しまくる、というのが初期ユーザー獲得の基本になるのだが、平行してそれ以外の獲得経路を確保する動きを早めに行っておくことも重要だ。

検索連動広告などの各種広告や、SEOなどはもちろん、AirbnbのCraigslist HackやPaypalのeBay Hackなど、予想外のチャネルが初期獲得に貢献することは多々あるため、とにかく数多く試す。

ここでの基本戦略は、思いつく獲得施策を洗い出して、筋の良さそうなものから少量のお金と労力を投下して、芽がありそうだったら投下リソースを増やす、芽がなさそうであればすぐに身を引いて次の施策に移る、だ。

さいごに、Airbnbなどのようにオリジナルでクレバーなハックをどうすれば思いつけるのか、という質問もよく受けるのでそれについても答えておくと、以下の3つを考えると思いつきやすい。

・ユーザーはどこにたむろしているのか
・どうやってそこに出ていけるか
・どんな餌に食いつくのか

たとえばPinterestが初期に、デザイナーのミートアップにしきりに参加して直接ユーザーを獲得していたり、Apple Storeに陳列してある各種端末でひたすらPinterestを勝手に開いてまわったのも同じ思考プロセスの先にある。

Pinterestのターゲット層はデザイン感度とデジタルリテラシーが高い人たち
 ↓
彼らは、デザイナーミートアップやApple Storeにたむろしている
 ↓
ミートアップであれば自分が直接話しかける、Apple Storeであれば端末の画面を勝手に変えまくる
 ↓
デザイナーミートアップではビジョンや機能を直接伝え、Apple Storeであれば珍しいUIと美しいコンテンツ群に食いついてもらう

といった感じだ。


まとめ

初期のユーザー獲得戦略をざっとまとめてみた。

もちろん個々のサービス・ブランド、市場環境に応じて戦い方は異なってくるが、ここで書いた戦略は必ず基本になってくると思う。

この記事があなたのサービス・ブランドを伸ばしていく助けの一つとなったなら幸いです。

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梶谷健人 / 新著「生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方」
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