生成AIの活用における日米比較データから浮かび上がる日本企業の課題
「生成AIはこれからの経営に欠かせない」という主張は多く耳にしますが、実際に生成AIの導入と浸透、そこからP/Lにヒットするレベルの成果を上げられている日本企業は多くありません。
実際にPwC Japanグループが公開した「生成AIに関する実態調査2024 春 米国との比較」という調査レポートを見ると、米国企業は生成AIについて「期待を大きく上回っている」と回答した割合が日本企業に比べて非常に高い一方で、日本企業は米国に比べて、生成AIに対して「期待以下だった」と回答している割合が高くなっています。
要因はいくつも考えられますが、大きな要因の一つは以下の画像にあるように、日本では企業向けChatGPTサービスの導入による「全社活用」がメインなのに対して、米国は逆に全社活用はあまり進めておらず、バックオフィス、CS対応、社内ナレッジ検索など「特定部署に特化したAIサービスの導入」を積極的に進めている、という点が挙げられそうです。
汎用的な企業向けChatGPT的サービスは、導入企業としても始めやすいですし、販売企業側としてもコンサルに繋げられる&作りやすいので魅力的な商品です。
しかし、汎用的なサービスを導入するに留まり、部署個別の課題解決に深く入り込んでいかないと期待以下の結果になりがち、ということが上記のデータから言えると思います。
導入企業としては、しっかりと特定用途に特化したAIサービスを選定して導入していく、生成AI事業を展開している企業としては汎用にとどまらない部署特化のツールの開発と販売に力を入れていくことが重要です。
また、日本企業は生成AI活用の指標として、「社員生産性」や「工数・コスト」などの短期的な指標に評価が偏っているのに対して、米国では「社員エンゲージメント」や「顧客満足度」などの長期的な指標についても重要な項目だと捉えて取り組んでいるのも対照的です。
また、日本企業がそもそも生成AIの導入に及び腰な状況に対して「日本企業はリスクに怯えすぎて生成AI導入進んでいない一方で、米国はリスクを一定無視して導入を進めている」という印象が持たれがちですが、以下のデータを見る限りでは「日本企業の多くは単に生成AI活用のリスクを低減するためのアクションを知らず、うまく対処できていないだけ」ということが言えそうです。
この姿勢は活用領域とインパクトにも影響していそうです。
以下のPwCの考察は非常に鋭いところを突いています。
日本企業が「既存事業×社内プロセス」に終始しているのに対して、米国企業はそれに加えて「新規事業×顧客体験」にまで活用対象業務を広く捉えて成果を出せている、というのは日米間の大きな差と言えるでしょう。
社内活用、新規事業創出の双方において生成AIを最適な形で活用して事業や組織を変革する方法については、以下の拙著や過去記事で解説しているのでぜひ企業経営層の方々はご一読頂けますと幸いです。
さいごに
生成AIも「銀の弾丸」ではないことを理解して、そのリターンとリスクを正しく理解した上で愚直に活用法を探り続ける、ということが日本企業がインターネットシフト、スマホシフトの二の舞いになるのを避けるためにも重要です。
私自身は、生成AIのような先端テクノロジーと、自社の事業戦略をリンクさせて、サービスの立ち上げ・成長や組織変革を支援するアドバイザーとして活動しています。
生成AIをうまく自社の事業や組織に活かせていないという課題感を持たれている経営層の方はまずはラフに課題をご相談ください。
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