カカオショック
昔から糖分はアルコールから摂る派(派という言葉に逃げる私)なので、よほどでなければ普段甘いものを買うことがない。
そのよほどのタイミングが久しぶりにやってきてチョコレートを買いに行った。
あれ、高くなってる?
めったに買わないので細かい値段までは覚えていないが、こんなにしたかな?
そんな話をスィーツ専門家の友人にしたら「だってカカオショックだもの」遅っ、今頃かよ?みたいな顔をされた。
「カカオショック」
その場でざっくり教わったが調べてみた。
大雨、洪水、干ばつなどに見舞われ、カカオの木が弱まっていたところに、今までなかったウイルス"カカオ膨梢(ぼうしょう)"が、2023年末頃から出てきたのだと言う。
チョコレートの原料となるカカオ豆の主要生産地は西アフリカにあるコートジボワールとガーナの2カ国だが、特にガーナにおけるカカオ生産の落ち込みは気候変動や"カカオ膨梢"の蔓延に加え、違法な金採掘の横行により有毒化学物質で多くのカカオ農園が汚染され使用不能となってしまい、また業界の運営ミスなど、さまざまな要因が重なったことが原因だとわかってきたそうだ。
感染対策として4億7000万本以上ものカカオの木が焼き払われ、深刻なカカオ豆不足となった結果、カカオ豆の奪い合いが世界中で起こり、価格が釣り上がっていると知った。
カカオ豆の値段はおよそ倍以上になっており、日本で買って食べるチョコレートの価格も単純に今後は倍になる見込みで、去年に比べ既に4割程値上がりしているとのこと。
焼き払ったカカオ畑にたとえカカオの木を新たに植え替えても、木が成熟して豆を生産できるようになるまでに最低でも2〜4年、長ければ6年は掛かるとされているため、今後も値上がりは続くと見られている。
後日TVをつけたら、来たるバレンタイン商戦に向け、企業努力によりいかにこの高騰を乗り切るかを特集していた。
カカオが生産される高温多湿地帯では、チョコレートが溶けてしまうので、現地では消費されず、生産されたカカオ豆はそのまま麻袋に詰められて輸出される。そのため最終的にどのような製品になるか知らない生産者が多いと言われる。
世界のカカオ総生産量の約6割を担うコートジボワールとガーナの2国以外、カカオ原産地とされる中米の一部では今もチョコレートを飲む文化が残っているそうだが、生産を目的としてカカオがもたらされた西アフリカにはそうした文化はないため、生産者や生産者の子どもたちが高級嗜好品であるチョコレートを口にする機会はめったにないと言う。そんな彼らに思いを巡らせるとカカオに限らず地球規模での"食"について数々の問題を改めて突きつけられたように感じる。
「国民の皆さま方は輸入した物が食べたいんです」
この発言は、TPP関連予算と国内向け物価高対策予算の配分の差について大臣が質問された際になされたもので、発言の真意は国際貿易の現実を直視する姿勢だったと思われるが、その表現方法の唐突さゆえに多くの誤解を招く結果となった。
それにしてもワードセンスよ。
この問題は単なる大臣の失言では終わらない。食料安全保障や農業政策全般について私たちが考えなければならないのは対アメリカだけでないのだと思いながらチョコレートを眺めている。