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昭和枯れすすきが枯れきってしまわないように

チャンネルを替えていて、ふと懐かしい曲が流れてくると、リモコンを手にしたまま動作を止めることがある。

曲と共に思い出される当時の記憶、自分がどこで何をしていたか、誰とその曲を聴いていたか。

それだけではない。

グループからソロに活動のステージを移して久しい男性歌い手の歌声があまりにも声が出ておらず、寂しくそして気の毒になった。ご本人が一番自覚されていることだろう。声帯も老化する。そう感じる歌い手が増えた。

一方、デュオでデビューした後、同じくソロに転じた知人である男性歌い手の歌唱力は驚くほど変わっていないが、そこには並大抵ではない努力がある。

招かれたコンサートでも、アンコールまで決して枯れることのない彼の伸びやかな歌声に驚愕する。コンサート後、呑んで歌をご一緒することもあるが、彼の喉には声の泉が湧いている。

実際のところ、一時期の需要に比べると世間的な露出は少なくなったが、ご自宅の地下防音室で早朝ギターを爪弾きながら三時間のボイストレーニングを彼は一日も欠かさないのだ。一日も。

それを知っているので、枯れた声で苦しそうに歌う歌い手を観ると、ついつい自分に重ねてしまう。歌をやめてボイストレーニングを全くしなくなってから、進んでカラオケには行かなくなった。いや、行けなくなった。枯れた自分の声を聴きたくないし、聴かせたくないからだ。

声に限らず歳と共に枯れていくことは多いが、老いに身を任せるのではなく、抗うことが必要だと最近強く意識するようになった。

新しいマイクを買った。また練習を始めよう。自分の歌声を聴いていて楽しい、もう一度そう思いたい。

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