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心地よい笑いのシンフォニー『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』

2024年7月現在、僕は5つのラジオ番組を習慣的に聴いている。
その中でもパーソナリティが3人もいるという点で他番組とは一線を画しているのが、NHKラジオ『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』だ。
 
お笑い芸人のピース・又吉直樹、サルゴリラ・児玉智洋、パンサー・向井慧が、近況を話したり他愛もないトークを繰り広げる、通称『あと寝る』。
2016年に特番として企画、翌年には月イチ放送になり、2019年から現在にかけては毎週月曜日に放送されている。

個人的に思う本番組の魅力は、誰が聴いても思わず頬を緩めてしまうトークにある。
芸人3人が出演している番組なのだから面白さはもちろん彼らも意識しているだろうが、その内容はいかにも「笑わせたるで!」といったものではなく、「ラーメン屋入ったらこんなことあってな」「近所の鳥の鳴き声がうるさくてさ」というような、どれをとっても素朴で親近感溢れるものばかり。それが聴いていて耳に自然と馴染んでいくし、まさに寝る前に聴くのにとても心地のよいものなのだ。


 そもそも、この番組を知らない読者にしてみれば、「なぜこの3人?」と疑問に思った方もいるだろう。
実はこの3人、かつて約3年間ルームシェアをしていた時代があった。当時すでに人気芸人だった又吉が児玉の才能を見つけ声をかけたことがきっかけになり、仲の良かった向井も誘って3人で暮らし始めたらしい。まさにこのルームシェアがあったからこそ、『あと寝る』が誕生したといっても過言ではない。
 
僕はつまるところ、この3人の関係性がどうしようもなく好きなようだ。
それはとても些細な話題だったりするのだが、最も先輩の又吉がその天然ぶりを後輩2人に問い詰められているかと思えば、繊細で丁寧な性格が似ている又吉と向井が児玉のがさつな部分をあげつらう時もあったりする。

しかし、その中に敵意や悪意なんかは一切なく、お互いの違いを楽しむように終始笑い合っている。その様子を聴くたび、僕は親子や兄弟、友人関係、もちろんただの先輩後輩とは違う、この3人ならではの温かな間柄を感じずにはいられない。


芸人と作家の両輪で活動する又吉や、多くのラジオやテレビに引っ張りだこな向井とは相反して、売れない下積み時代が長かったのが児玉だった。しかし、昨年ついにキングオブコントで、相方の赤羽とサルゴリラとして見事優勝を飾る。児玉にとって、苦節20年の長い道のりだった。
 
もちろん、本番組でも2人が児玉を祝福。又吉は児玉の出番が近づくと緊張してソワソワしていたと吐露しつつ、「売れるためにスタイルを大きく変えたりせず、昔の児玉のまま優勝したのが凄かった」と嬉しさを滲ませた。

そして、この番組でも「児玉さんは時間だけはあるから」と冗談を言っていた向井が、サルゴリラ優勝後に見せた男泣き。それが、僕にはたまらなかった。
ともに暮らしていた仲間であり、途方もない時間を一緒にした軌跡があり。血にも勝る関係性がそうさせたのだと思うと、もらい泣きしてしまうのはどうしたって避けられなかった。
 
そんな熱い友情も持ち合わせている3人。全員売れっ子のため過密スケジュールのはずなのに、月曜の夜だけは同居していた頃のような空気感そのままでラジオを届けてくれる。長年ファンをしている僕にとっても嬉しい限りだ。
いつもそうなのだが、放送時間の50分間はあっという間に過ぎ去ってしまう。リスナーにとって、3人の話をうんうんと聴いている時間ほど幸せなことはない。彼らの笑いのシンフォニーは、これからも色褪せることなく僕らの心を響かせ続けることだろう。


皆さんから大事な大事なサポートをいただけた日にゃ、夜通し踊り狂ってしまいます🕺(冗談です。大切に文筆業に活かしたいと思います)