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夜を歩く〈うみいろノートNo.36〉
ほのかに灯る街灯が道を照らす静かな夜。
何もかも空っぽにして、ただ歩いていると
生きていることに精一杯の毎日が何かのパノラマみたいに見えた。
時折、予告なく降ってくる不安。
それを何かで埋めたくて、懸命に走る。
細かな感情の変化に目を瞑って、体に鞭を打っては飴を舐める。
そんな風に勝手に追い込まれていたのかもしれない。
世界を救ってくれる英雄は
頑張っている人みんなに与えられる勲章。
そのしるしを果たして僕は持っているのか。
そんなこと誰も知らないし答えてもくれない。
聴こえてくるのは遠くで鳴いている虫と、
歩調はゆっくりだけど確かな自分の足音。
こうして道標すらなく歩くこと。
風の吹く方角を目指すのも悪くない。
一軒だけポツンと建っているコンビニ。
「いらっしゃいませ」
名前の知らない自分にもそう声をかけてくれる。
ここにもまた一人、僕らの英雄が活躍している。
夏の兆しを涼ませてくれる缶コーヒー。
値段以上の旨味が喉を潤していく。
不思議とエネルギーが湧いてきて、少しだけ走ってみる。
顔を上げたら月が浮かんでいた。
「ずっと夜を彩ってくれてありがとう」なんて言ったら白い目で見られるだろうけど。
まだ当たり前にいてくれる存在に想いの込めた言葉を。
道端に転がる石ころすら、いつかいなくなってしまうのだから。
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