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うみいろノートNo.23 エッセイ
エッセイ本といえば世の中にたくさんの種類であふれているが、僕が初めてお金を出して買ったエッセイは、お笑い芸人のオードリー若林さんが書いた『社会人大学人見知り学部 卒業見込』だった。
発売当初は書店の新刊コーナーに大々的に紹介されていて、実物を手に取るまではいわゆる芸能人が書いたエッセイものという認識しかなかった。しかし、記憶を掘り起こしてみると、以前にお笑い芸人が出して売れた本、『ホームレス中学生』や『陰日向に咲く』を手にしたことがあり、そこから感じ取れたお笑い芸人としての顔ではない、一人の人間としての顔が印象に残っていた。
テレビの中では明るいキャラクターだが、そうした人間くさい一面を垣間見えることを期待して若林さんのエッセイに手を伸ばした。
お笑い芸人らしからぬ、人見知りで考え込んでしまう人間像。気がつくと、オードリーが売れる前、社会や周りの人たちから置いていかれるような焦燥感や寂しさが心に刺さった。どんな分野でもそうだけど、一流の人は全体のほんの一握りで、大多数がその存在すら知られずに消えていく。そんな厳しい業界で這い上がっていくために時には相方とぶつかったり、芸風をガラッと変えてみたりと試行錯誤をしながら芸を磨いていく過程。人見知りの若林さんがこんなにも真摯に人間に向き合っていた時代があったなんて、僕はこのエッセイ本を手にしなければ知らなかっただろう。
そんな若林さんに対してどこか共感めいたものを感じ、2冊目となる『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』も即買いし一気に読んでいた。
売れっ子芸人になっていた若林さんが周囲の変化や多忙な日々から逃れるためにキューバへ旅する内容だった。途中までは前回同様、若林節炸裂な(あくまでも褒め言葉として)斜に構えた文体と旅先で出会う人たちとの掛け合いが面白く映って、今すぐにでも日本を飛び出して、海を越えて、知らない国に行きたくなった。
そして、終盤では思いもよらないキューバへ旅行に来たもう一つの理由が明らかになった時、僕は泣いていた。エッセイ本で初めて泣いた。それは悲しいというよりも、これまで人見知りだった若林さんが人知れず育んでいた人との絆だからこそ余計に泣けたのかもしれない。
3冊目のエッセイ『ナナメの夕暮れ』は発売日に購入し、同日に誕生日を迎えたオードリーファンの友人にプレゼントした。僕もすっかりオードリーファンの一人だ。
昨年コンビ揃って結婚し、新たなステージに上がったオードリー。テレビで見せてくれる芸はもちろん、ラジオ、漫才ライブなど、これからも楽しみなことはたくさんあるけど、僕は若林さんの次回作を一番楽しみに待っている。
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