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良い本って何だろう?

編集者にも私のようなフリーランスにも「良い本を作りたい」という気持ちが根底にあります。だからこそ、「どう表現すればよいのか」「どこを解説し、どこを画像で補うのか」「どこまで平易な言葉を使おうか」など事あるごとに関係者らと意見交換をし、完成形を共有するようにしています。

たいていの場合、それで何とか発売までこぎつけるのですが、実際に「良い本とは何か」までを議論するには至りません。そこまで議論したのは、私の経験上ほんの2~3回程度です。

「良い本」は、個人の価値観に大きく左右されます。
おもしろい、わかりやすい、(テーマに対して)詳細・網羅的に解説されている、いい言葉が書いてある、感動する、ためになる、(行間を読むと)意味が深い……etc
そこだけ見ると、万人が「良い本」と言える本は到底不可能な部類です。

本づくりはまさに迷宮。悩みながら楽しみながら進めます
(画像提供:Pinterest TABI LABO / この世界は、もっと広いはずだ。様)

でも、視点を変えるとちょっと変わってきます。
「良い本」を「取っておきたくなる本」に置き換えると、辞典類やマナー本、データブックや図鑑など、一度に全部は読まないし覚えきれないけど、困ったときに助けてくれる本が想起されます。
「ためになる本」でも、結構固い本が並ぶでしょう。

同じように「読み返したくなる本」に置き換えると、物語が好き、写真やイラストが好み、かっこいい、ワクワクするといった、思いっきり主観の入る小説や漫画、写真集・画集などが最初に出てきます。
「長く読まれる本」だと、物語や普遍的な要素で構成された本が多くなると思います。

ところが、私が携わることの多い実用書となると、良い本の定義は格段に難しくなります。

携わった実用書の一部

「実用」なので、実際に日常で使える情報、役立つ情報がベースになりますが、一回読んだらわかった気になってしまうことがほとんどです。
その実用書で「良い本」を目指すのであれば、何かの機会に「どうだったっけ?」「どうすればいいの?」と都度本を開けるような項目が並んでいること、それらをわかりやすく説明していることが必要です。

しかし私は、それにもう一つ要素を加えたいのです。それは
「あとから、『あ、これはこういうことなんだ』と納得できる要素」

これが難しい。
わかりやすく説明するためには、要点をかみ砕く必要がある。忠実にそれをやると「その場での理解」になり、「時間差での理解」にはならない。
かといって、要点説明を端折ると不親切になってしまう。

著者がそういう要素を持っていれば別です。
「日々繰り返して、はじめて理解できる瞬間が訪れる」という要素があるなら、それが体感できたときに読者は理解が深まって1レベルステップアップでき、より深く知りたいと考えるようになります。
しかし、そういう著者ばかりではないですし、たいていの実用書はそうしたところまで説明してしまうか、その手前でとどまるかしてしまいます。

そうした著者の要素に頼らなくても時間差の理解の要素を入れられないか、と毎回悩みながら仕事を進めています。
それがきちんとできないうちは、私も未熟なのだと思います。

【使用画像】
・TOP画像:PhotoAC様 Nozomi0001様の写真

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