会食恐怖症のカミングアウト

会食恐怖症であることをカミングアウトないしは
誰かに相談するということは、緊張などの症状を和らげ、
他人と食事をするために有効な手段だと考えることもできる。

では、なぜカミングアウトできなかったのか。
私が自身の身の上話をできるような
信頼できる人間関係を築いていなかったということは
別として、その理由を考える。

まず、自分の身に起きていることが何なのか
具体的に説明できるほどの情報がなかったということは大きい。

当時はとにかく情報が少なかった。
会食恐怖症という病名を知る術がないのだ。
PCは学校のコンピュータールームにある特別な機器であり、
ネットで気軽に検索などという発想はなかった。
精神疾患というものも今よりは、身近なものではなく
その存在自体を意識することなく生きていた。
何か自分たちとは、別の世界の人間の話のように感じていたくらいだ。
情報もない分、おそらく現代よりも
そういった心の病気に対する偏見や嫌悪も強かったのではないだろうか。

これでは、自分の症状を説明し、他人を納得させることは出来ない。


そして、食事が出来ないということが人間として異常なことであるということを幼いながらにも感じていたためだ。
食べるということは、人間だけではなく生物にとっては生きるために
欠かせない行為。
まして、人間は食事をコミュニケーションツールとしても娯楽としても
重要視している。

今日の昼食は何を食べようかと心弾ませている相手に
「私は、他人と食事が出来ません」などと言えない。

打ち明けたところで、理解はされず、
自分と食事をするのが面倒だから
適当なことを言って断っているのだろうと思われる。

簡単に言えば、食事という楽しみが出来ないことによって
変な人、おかしい人というレッテルを貼られるのが怖かったのだ。

他人からどう思われるか、気にしない人間はいない。

逆の立場から考えても、学校のクラスメイトや会社の同僚から
「他人との食事ができない」と言われたら
どう受け取るだろうか。分からない。

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