会食恐怖症の大学生活③


認知行動療法というものがあるように、恐怖症の克服の手立ては恐怖の対象から逃げずに飛び込んで行くこと以外にはない。回避行動の繰り返しは、苦手意識・恐怖心を増長させ症状を悪化させ、強化してしまうもの。


その後も、グループメンバーからの誘いは何度かあった。その度に何かと理由をつけて断った。
繰り返すうちに当然、声はかからなくなる。

「今日は何食べる?」
「オムライス」
「焼肉食べ放題行こう」


こんな会話で大学生の日常は彩られていた。


もっとも、人間の楽しみの大部分を食べ物が占めているのだろう。テレビ番組を見ていても毎日、毎時間のグルメ特集の多さに辟易する。今日は何を食べるか、あの店のあの料理が美味しそうだ、と。食は他人との当たり障りのない話題であり、皆が共通に盛り上がることができる事柄だ。
食べる事は生き物にとっては欠かすことができない。ましてや人間にとって、食はエンターテイメントといえよう楽しみなのだ。


大学生になり、日常が大きく変わったことは食の選択肢が広がったという点だ。

毎日の学校生活も、どこかに出かける際にも、食事がついてまわる。美味しいものを食べに行くという目的はもちろん、買い物が目的で出かけときであっても、行く先で何を食べるかということも重要な楽しみなのだから。

子供の頃は遊びに行くといえば学校の授業を終えた後、公園か友達の家に集まって17時の鐘がなる夕食時までには帰るものだった。食事なしで、楽しく遊べたあの頃とはもう違うのだ。


私は大学生になり、食べることが人間にとって当たり前の楽しみであると同時に、コミュニケーションをとるうえで欠かせないものであるということに気付かされたのだ。

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