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カイ書林 Webマガ Vol 16 No1

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【新刊案内】

病棟教育学論
“卓越した18人の米国指導医に対して行った質的研究に基づく病棟教育の本質”
Sanjay Saint,他著(Oxford UP)、和足孝之,翻訳
ISBN 978-4-904865-74-3
A5判、200ページ、定価3,000円+税、2025年2月3日刊行

徳田安春&鎌田一宏:バイタルサインでここまでわかる! 第2版
A5判 200ページ 定価2800円+税 11月20日発売中 
ISBN 978-4-904865-73-6


【好評発売中】

  1. 筒井孝子著:必携 入門看護必要度 2024年診療報酬改定対応
    5月11日発売 A5判 254ページ 定価:2500円+税  
    ISBN 978-4-904865-70-5 C3047

  2. 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度 2024年診療報酬改定対応
    5月11日発売 A6版 113ページ 定価:500円+税
    ISBN 978-4-904865-71-2 C3047

  3. 草場鉄周監修:「総合診療・家庭医療のエッセンス 第2版」
    5月17日発売 A5判 380ページ 定価:3800円+税
    ISBN 978-4-904865-72-9 C3047

  4. 澤村匡史著:循環器救急・集中治療の高価値医療 日本の高価値医療⑧

  5. 和足孝之・坂口公太編集:医療現場に必要なリーダーシップ・スキル ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.19

  6. 筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18

  7. 杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

  8. 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

  9. 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

  10. 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

*2025年度 第12回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャー:

「Choosing Wiselyからみた19番目の専門医:Micro/ Meso/ Macro system levelの課題の診断と治療」

とき;2025年2月9日(日) 20:00~21:30
演者:和足 孝之先生 京都大学附属病院  総合臨床教育・研修センター
参加ご希望の方は下記よりお申し込みください。


*第13回Choosing Wisely Japan オンライン・レクチャー

かかりつけ医からみた地域フォーミュラリとその活用

とき:2025年4月6日(日)20:00~21:30
演者:近藤太郎先生 日本フォーミュラリ学会 副理事長、近藤医院 院長
近日参加者を募集します。

上記オンライン・レクチャーの記録は,Choosing Wisely JapanのNewsletterとして会員の皆さまにお送りします.会員入会ご希望の方はこちら


■全国ジェネラリスト・リポート

「若手だって指導医だ」―若手指導医講習会(RaTsプログラム)のすすめ

小杉俊介
飯塚記念病院/九州大学医学教育学講座

「あなたにとって一番思い出深い指導医は誰ですか?」と聞かれて思い浮かぶのは誰だろうか.色々な意見があると思うが,研修医などの時に直接指導を受けた年次の比較的近い指導医のことを思い浮かべる方も多いだろう.世界的にも,若手指導医が臨床教育上重要であるとの報告が出ている.

では,その若手指導医たちはどうやって指導をしているのだろうか.本邦では若手医師が教育手法について学ぶ機会は限られていた.わたしが後期研修医の時にも,初期研修医を手探りで教えてみながら教え方を学ぶというスタイルであったように思う.

その後,根拠がある指導方法があることを知り,RaTsフェローシップというものの立ち上げを先輩方と一緒に行い,これまでに100名を超える履修者を出すことができた.が,まだ100名程度である.北米では,全プログラムにRaTsフェローシップと同様の若手医師が指導方法を学ぶ機会を作ることが求められており,実際に内科などでは80%を超えるプログラムで実装されている.

若手医師は教える側であると同時に,教わる側でもある.そういう立場のうちに根拠に基づいた指導方法を学ぶことにより,成長度がさらに伸びることが期待できる.より多くの日本の若手医師に届けられるように今後も活動を続けていきたい.


■マンスリー・ジャーナルクラブ

敗血症性ショックに対する適切な血管作動薬のタイミング

熊谷知博
湘南鎌倉総合病院 総合診療科 

Chiwon Ahn, Gina Yu, Tae Gun Shin, et al. Comparison of early and late Norepinephrine administration in patients with septic shock: a systematic review and meta-analysis. Chest 2024; 166(6):1417-1430.

内容の要旨
背景:敗血症性ショックは生命を脅かす状態であり,適切な血管作動薬のタイミングが予後に影響を与える可能性があるが,その最適なタイミングについては議論が続いている.早期ノルアドレナリン投与は,臓器灌流の維持や血圧低下の改善に有用とされる一方,エビデンスは限定的である.

目的:敗血症性ショック患者において,ノルアドレナリンの早期投与と遅延投与が予後に与える影響を比較し,安全性と有効性を検討すること.

方法:システマティックレビューおよびメタ解析(RCT(4件)および観察研究(8件),計7,281例)

結果:早期投与群と後期投与群で全死亡率に対して有意差はなかった(RCT: OR 0.70; 95% CI 0.41–1.19; 観察研究: OR 0.83; 95% CI 0.54–1.29).ただし,輸液制限を行わなかった2件のRCTでは,早期投与群で死亡率が有意に低下した(OR 0.49; 95% CI 0.25–0.96).肺水腫に対しては早期投与群で発生率が低下した(OR 0.43; 95% CI 0.25–0.74).

コメント
敗血症性ショック患者に対する早期ノルアドレナリン投与は近年多く論じられており,計929例を対象としたメタ解析(Crit Care. 2020 Aug 6;24:488.)でも,早期投与による短期死亡率の低下が報告された.この研究はさらに対照例を増やしたメタ解析となったが,早期投与による全死亡率の改善は示されなかった.しかし肺水腫の発生率低下や人工呼吸器離脱日数延長などの有益な効果が示され,かつ早期投与による不整脈といった有害事象の増加は示されていない.輸液管理とノルアドレナリン投与の最適なバランスはやはり重要であり,最適なタイミングに加えて,利益を得やすい患者選択基準についてもさらなる研究が必要となるだろう.


■カイ書林図書館

医療安全の更なる展開と教育
東京財団政策研究所ウエビナーに参加して

2025年1月8日のウエビナーでは下記のようなレクチャーと討論が行われました.

現在,1)病院のマンパワー不足(働き方改革による医師不足による),2)病院予算不足(診療報酬のマイナス改定),3)高齢患者のmultimobidityにより,患者安全上のリスクが増大している.今日定められるべき目標は「回避可能な害をなくすこと」である.

① 『日本と世界の患者安全の現状と課題』(栗原 健)
患者安全の向上は世界的な課題であり,医療過誤の減少と患者の信頼回復が重要で,そのためにはエビデンスに基づく介入の実装が必須である.

② 『医学教育と医療安全』(田中和美)
医学教育は医療安全を向上させるための基盤であり,安全な医療提供のための知識とスキルの習得が望まれる.診断エラーや薬剤処方ミス,手技ミスなどには,それぞれエビデンスに基づく教育介入が求められている.

③ 『患者経験,協働など市民参画を活かした医療安全対策』(青木拓也)
患者の経験を取り入れた協働や市民参画は,医療安全対策の重要な要素であり,患者の視点からの改善が期待される.診断エラー予防のための診断エクセレンスでは,患者をコアメンバーとしたチームコンセプトが必須とされている.

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