カイ書林 Webマガ Vol 13 No10
このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。
【近刊案内】
・長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本 A5判 350ページ ¥4,400
11月末刊行 ISBN 978-4-904865-65-1
・医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之 A5判 116ページ カラー30ページ ¥2,750 12月中旬刊行 ISBN 978-4-904865-64-4
【好評発売中】
4 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)
5 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)
7 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)
8 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)
9 樫尾明彦・長瀬眞彦:問診から選べる漢方薬ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ②)
■第18回ジェネラリスト教育コンソーシアムが盛会裏に行われました
第18回 看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう(オンライン開催)
とき:2022年10月23日(日)13:00~16:00の3時間
世話人:筒井孝子(兵庫県立大学大学院 社会科学研究科教授)
東 光久(奈良県総合医療センター 総合診療科部長)
長谷川友美(白河厚生総合病院 副看護師長)
参加者は、医師8,看護師16、薬剤師2,事務2、会社員2,MSW1、家政学部1の32名でした。
*参加者の声より:
・有意義なコンソーシアムでした。看護必要度の変遷が良く分かりました。目的を知って業務をすることが必要と感じました。
・訪問看護師をしておりますが、在宅で看護必要度のような共通ツールを用いて多職種が連携できないか常に模索しています。病院との地域連携でまずは使っていきたいと思います。
・大変貴重なお話ばかりで、勉強になりました。もっと、たくさんの方が参加して欲しいと思うコンソーシアムでした。
・患者医療者関係と臨床上の意思決定については、特に関心を持っています。医師の提案に従わない患者、困難事例、マルチモビディディ、緩和医療、人生の最終段階一歩手前など、様々な場面でこの議論をすべきです。
・看護必要度のデータをどう活かすか、とても勉強になりました。
* Mook版ジェネラリスト教育コンソーシアムは、科学技術振興機構(JST)の文献データベース収録(JDreamIII、J-GLOBAL等)および「医中誌」に収録されています。
■全国ジェネラリストリポート
様変わりしたコミュニケーションスタイル
埼玉医科大学 総合診療内科 / HAPPINESS館クリニック 木村琢磨
「話し方」、「反応の仕方」などのコミュニケーションスタイルは、数十年ぶりに会った人でも、あまり変わらないように感じることが多い。しかし、近年、新型コロナウイルス感染症に伴うマスク装着の影響で、自身のコミュニケーションスタイルは、とくに診療において様変わりしたように思う。
「話し方」は声が大きくなった。高齢者を診療する機会が多いので、こちらの声がマスク装着によって聴き取り難くなり、より大きな声で話すようになったのであろう。本来、相手に合わせて徐々に大きな声にすればいいが、どうもコロナ前に比べて“デフォルト”の声が大きくなったようで、自宅で「声が大きい」と言われることが多い。
「反応の仕方」は、身振り・手振りが多くなった。第一に頷きが増えた。相手の発話に対する比較的小さな声での「はい」「えぇ」を、いちいち大きな声で言うのは現実的ではなく、首を上下するなどの動作が増えたのである。第二に、ジェスチャーも多くなった。これは、音声の補完のみならず、マスク装着で表情を捉え難いためではないか。具体的には、「分かりました」「大丈夫ですよ」を両手や指で“丸”をつくって示したり、お礼・挨拶で「敬礼」の仕草をするなどが増えた。これらを思いがけず自宅ですれば、滑稽なようだ。
診療においてのみならず、ともすれば、私に久々に会う人は「コミュニケーションスタイルが変わった」と思うかもしれない。今後、マスク装着時のコミュニケーションスタイルについての認識が深まること、それ以上に、一刻も早くマスク装着を標準としない時代に復することを切に願う。
■マンスリー・ジャーナルクラブ
医学生はSDHをコミュニティでどのように学ぶのか?
大阪医科薬科大学医学研究支援センター医療統計室 講師
南丹市国民健康保険美山林健センター診療所 所長 西岡大輔
論文情報
Haruta J, Takayashiki A, Ozone S, et al. How do medical students learn about SDH in the community? A qualitative study with a realist approach. Medical Teacher 2022:1-8. doi: 10.1080/0142159X.2022.2072282
内容の要旨
【背景】格差社会において健康の社会的決定要因(SDH)を医学教育で学ぶ意義が高まっているが、教育介入は複雑でメカニズムも不明である。リアリストアプローチの手法で、医学生がコミュニティでSDHについて学ぶパターンを明らかにすることを目的とした。
【方法】医学部5,6年生を対象に実施された、コミュニティでSDHを学ぶ臨床実習(4週間)への医学生のレポートを文脈、メカニズム、アウトカムの観点から分析した。
【結果】医学生は4つの学習パターンで社会と医療のつながりを学んでいった。1)学習する医学生がSDHの概念をあらかじめ予見した上で、社会モデルが中心となっているコミュニティにおける観察学習などを通じて視点を変容させた。2)医学生は医療モデルの矛盾に直面することで、確かな事実を統合的に説明するようになった。3)複数の地域での具体的な経験を比較し、言語化することで、SDHの概念的な理解が深まった。4)医療現場とは異なる権威のない立場から参加することで、一般人への共感が醸成された。
【結論】医学生は社会と医療のつながりを4つのパターンで学ぶことができることがわかった。
コメント:
現在の医学教育のコアカリキュラムには「社会構造と健康・疾病の関係」が明記され、SDHを学ぶことが求められている。筆者は社会福祉の実習において、医学部・医療機関の外で、医療者でない立場で、SDHの影響が大きいと考えられる人々と関わってきた経験があり、「社会構造と健康・疾病の関係」に直面することが多々あった。非常にわかりやすく学びのメカニズムが整理されており、学生や専攻医、指導医がSDHの学びを振り返る際にも活用できると考えられた。
■カイ書林図書館
長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本
「この本は,これまで学会や様々な勉強会,また書籍などで学ばれ,1種類の漢方エキス製剤の使い方をある程度マスターされている先生方を対象としています(もしそうでない場合は,まず拙著,問診から選べる漢方薬ツールキット.カイ書林. 2020 をまずお読み下さい).
内容は,主として複数の漢方エキス製剤の様々な疾患に対する臨床応用についてです.著者の20 年以上の経験も踏まえてあります.これまで,学んだ通りに処方してみても,「漢方薬ってそんなに効かないよなあ…」とか「効くときは効くんだけど,効く確率が低いなあ…」などという印象をお持ちの先生に特に読んでいただきたいです.
この本を診察室に置いて,ことある毎に必要な項目を読んで頂き,先生方の日常診療の一助になる内容で,さらにその先にいる患者さんの苦痛を軽減できるようなものであれば幸いです.(著者のことばより)
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