「東洋医学診療に自信がつく本」を書き終えて―長瀬眞彦先生著者インタビュー
Q1 「東洋医学診療に自信がつく本」は、まるで長瀬先生の動画レクチャーを視聴しているように理解しやすいのですが、これは先生の執筆方針だったのですか。
これまで医師や医学部の学生、また一般の方向けに講義や講演をしていますが、やはり「わかりやすい」が私の話し方のモットーで、これがベースにあります。また、今回本書を執筆して、これまで多くのところで話したことをまとめる機会になりました。さらに本書には日常研修医に教えているような内容も含めていますので、私が診察室で研修医に教えているような雰囲気が伝わっているのではないでしょうか。
Q2 本書は、婦人科から始まりCOVID-19に至るまでのよく出会う症状、疾患を西洋医学のカテゴリーに沿って教育的な症例を挙げて東洋医学診療を解説しています。一般内科医の先生を含めて読者の皆様の日常診療に役立つと思いますが、読者の方々に、とくにこういう点を読み込んでほしいということはございますか?
東洋医学は、症状指向型医学、症状を改善する医学ですので、西洋医学的に問題があってもなくても対応できます。いろいろな科の先生が、お困りの症状があると思います。西洋医学的に精査してもわからないし、治療しても取れない症状がある。そういうものに対する一つのアプローチ方法が東洋医学の方法ですので、それを読み込んでほしいです。
もう一つは、基本にある東洋医学的な考え方を把握しておかないと、単なる対症療法になりかねません。その東洋医学的なロジックが本書のすべての項目に落とし込んであるので、そこを読んでいただきたい。例えば「水毒(すいどく)」という水が溜まってしまうという病態がありますが、女性の月経前緊張症でも、慢性腎臓病でも、膀胱炎でも、さらにはめまいでも見られる病態です。そのような西洋医学を縦軸とすると、東洋医学の横軸もあり、その縦軸と横軸がつながってくると、もっと効果が出るし、興味深くなってくると思います。本文中にも、「p〇〇」と参照ページをすべてお示ししてありますので、そこを読み込んでほしいですね。
Q3 多くの著者の皆様はおひとりで本を書きたいと望んでもその願いを果たせないのが常ですが、本書で長瀬先生はついに単著を成し遂げました。その成功の秘訣、情熱の源泉をきかせてください。
本書は、そもそも最初にカイ書林からお話をいただいたことが契機となりましたが、私には、元来自分だけのためにしておくのでなく、いろいろな人に伝えたいという願いがあります。東洋医学の書籍はたくさん刊行されていますが、一方には表層をなぞっただけの本や、他方、逆に非常に高度で専門的な本もあります。私はそれらのどちらにも満足していなくて、もっと日常診療に役に立つ従来にない本があってもいいのではないかと思っていました。また漢方薬のエキス剤を2剤以上使用することはしばしばありますが、それについて解説している書籍がないので、そういうことにも言及しました。基本的に私には有用なことは人に伝えたいという欲求があって、本書を読んだ先生がそれを学んでいただいて、処方された患者さんが効果を享受すればありがたいです。さらに本書は研修医のテキストとしても活用できます。繰り返しますが、私には自分のためだけという発想がないので、いろいろな人から、研修医からも医学生からもそのようなエネルギーをいただいてこの本を書いたように思います。正直な話、ひとりで書いたという実感はないのです。これが単著の秘訣でしょうか(笑)。
(このインタビューは、2022年11月22日、吉祥寺中医クリニックで行われました。)