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六甲山地獄の道行き・前編(大阪302日目)
友人・Hそ氏に誘われて、六甲山に行ってきた。
「六甲山のぼって有馬温泉入って帰ってくる」というお気楽登山。何度も六甲山に登っているという私の部下も、スニーカーでも登れるような平易な山と言っていたので、気持ち的にはハイキングぐらいの気分である。
今回のメンバーは、Hそ氏、妻・Mさん、そして自分の3人。登り口となる芦屋川駅前に8時に到着すると、すでに多くの登山客が集まっていた。人気なんだなあ。3人でわいわい雑談しながら芦屋の高級住宅街を抜けていく。
しばらくいくと滝の茶屋という場所にたどり着き、いよいよ登山が始まる雰囲気だな~・・・と思った矢先、Hそ氏が「今日は楽しいルートを行きましょう」と言いながら、道をそれて川の方へ向かっていく。そして土石流検知用のロープ(下手に触ると警報がなるで、と書いてる)をくぐって、川が流れる岩場の方へ向かっていく。
え。
*
昨年、芥川賞を受賞した「バリ山行/松永K三蔵」。あえて登山道を外れて難易度の高い山登りをする「バリ山行」の物語。Hそ氏は、最近この本を読んだと言ってたが、本気のバリをやる気なのか。
「全然バリちゃいます。ここもひとつの登山ルートで、沢登りだったり、岩登りだったりが楽しめるんです(Hそ氏)」
「前来たときは、もっと水量があって、きゃー水冷たーいなんて大騒ぎしながら登りましたよ(Mさん)」
いやいや。1月に沢登りだなんて。冷たいがな。
「そうそう。ここ、地獄谷っていうんですw(Hそ氏)」
地獄谷・・・。
さっそくHそ氏がずんずんと岩場を登り始める。
えー待ってー。
思ってた登山と全然ちゃうって。
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自分が履いていったランニング用のスニーカーは、岩場で足を支えることを想定してないらしく(そりゃそうだ)、つるつる滑って全然グリップできない。
「両手と両足のどれか3点で身体を支えるように。3点支持で!(Hそ氏)」
そういう大事なことは、岩場にへばりつく前に言うて〜!
幸いにして、登山好きの部下が「念のために」と言って手袋を貸してくれていた。このイボイボのついた手袋はしっかり岩を掴むことができる。岩に張り付くようにして、2点(両手)を中心に、足は滑るかもしれない前提で体重移動していく。
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「山登りすると、不思議と二の腕が筋肉痛になるんですよね(Mさん)」
いやーそりゃそやろー。
ほぼ腕で登ってんぞ。
*
そんな感じで、ひーひー言いながら沢を登りきったと思ったら、今度は万物相と呼ばれるモロモロに壊れる花崗岩層エリアにやってきた。
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この万物相が曲者で、長年、雨・雪で垂直方向に削られてる地形になっているので、登っては降り、登っては降りを繰り返しながら、前に進むしかない。水平方向にロープが渡してあれば、滑車をつけて10秒ぐらいでシャーって移動できる距離に30分くらいかかる。
しかも、表面がモロモロしているから、よく滑る。下りも怖いし、登りも怖い。人が登ったあとが凹んでいて、その凹みに足をかけて登るんだが、そもそも人が足を踏ん張った程度で削れている岩に体重をかけることがまた怖い。ひー。
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*
そんなこんなで、なんとかこのハードコースを登りきる。
2回ぐらいは本気で生命の危機を感じた。
そして、その先に待っていたのは、大阪湾を見下ろす絶景だった。ああ、本当に絶景。梅田近辺の高層ビル群、一際のっぽなあべのハルカス、あるいは大阪府咲洲庁舎(さきしまコスモタワー)も見える。すごい。
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「ここからは一般道なので楽勝です(Hそ氏)」
「一般道は面白くない(Mさん)」
やっと一般道!
助かった!
一般道は楽勝。
一般道は面白くない(くらい楽)。
Hそ氏とMさんの言葉を、一瞬であれ信じてしまった自分がバカだった。
(つづく)