プロジェクトの立ち上げ方3

ルーティンワーク(と思われる)仕事を担当しているみなさん。それは本当にルーティンなんだろうか。

この15年近く「新規立ち上げ」的な仕事をしてきた自分だけれど、途中3年間は「ルーティン」だと思われた職場に配置されたことがある。雇用対策の担当である。

当時、リーマンショックによって悪化した雇用情勢を回復するため、「緊急雇用創出事業」を担っていた。失業者を雇用すれば、その人件費に見合う事業費を10/10で負担するという太っ腹な事業で、悪化する雇用情勢に対応するため巨額の事業費が国から流れてきていていた。

予算が膨大であるため事務量自体はやたら多かったが、国の制度なので、県が判断する余地はそれほど多くはなかったことから、クリエイティブな要素なあまりない・・・と思われていた。実際、某幹部から「さすがにそろそろ地道な事業をしろってことだよ」と言われもした。(まあ、こういうことを口にする時点で、この幹部は地道とクリエイティブが別物だと勘違いしているのだが)。

さて。そのルーティンであったハズの雇用対策だが、ぼくは3年間の在籍中にいくつかのプロジェクトを立ち上げた。中でも規模的に大きかったのが厚生労働省の「戦略的雇用創造プロジェクト」である。厚労省の分厚い予算資料から「宮崎にもってこい」の予算枠をみつけたのだ。

仲間に声をかけ、一緒に企画書を書き、コンペに応募し、かなり大規模な予算を獲得することができた。この予算こそがフードビジネス推進の原資となったものであり、ミラノ万博をはじめとした海外戦略や中小企業の新商品開発の基盤になった。

ちなみに自分の所属していた部内ではこの予算の意義をまったく理解して貰えず、他の部に応援を頼んだという経緯もある。新しいプロジェクトは、仲間づくりから苦労をするのだ。

以上は、我ながら良い仕事だと思うものの一つだが、実は同じ職場で大きな失敗もしている。高校生の県内就職率が低いことの課題認識が甘かった、ということだ。

そもそも宮崎県では高校生の県内就職率が、長年40番台で低迷していた。

進学を選ばず就職を選ぶ高校生の率が他県より多い、県内企業から求人のでるタイミングが遅い、高校の就職担当教諭と県内企業との接点が少ない・・・という要因は把握していたし、いくつかの新たな対策も打ってはいたものの、決定打には欠けていた。昨日書いたように「自分たちはこれだけ多方面から検討を重ねたが、事案が事案だけにそうそう解は見出せるべくもないから、引き続き検討していく」という状態だった。最低だ。たぶん、本気度がどこか足りなかった。

自分が異動した翌年。宮崎県の県内就職率は全国最下位となった。

何につけ「最下位」というのはよろしくない。報道でも議会でも話題になり、雇用対策担当だけではなく、経済団体や教育委員会等を巻き込んだ総合的な対策の必要性が認識され、若者の県外流出を止めるための大きなプロジェクトが動き始めた。

大反省である。反省しかない。

これは自分が在籍しているうちに立ち上げるべきプロジェクトだったのだ。穿った見方をすれば、「最下位になったからこそ、注目され、予算もついて動きはじめた」面もある。だが、そこに「課題」があるのに、根本から見直すようなプロジェクトを立ち上げなかったことには反省しかない。

そうなのだ。ルーティンだと思っている目の前の仕事に「課題」は本当にないのか。将来、「あのとき手を打っていればこんなに大きな傷にはならなかった」というものはないのか。将来、「なんであんな効率の悪いやり方をやっていたんだろう」と言われるような事務作業はないのか。

人口急減時代を迎え、社会の有り様を変えていかなくてはならない今、昨日と同じ仕事をやっていればオッケーなルーティン業務なんて皆無なハズだ。きっとあなたが、そしてぼくが立ち上げるべきプロジェクトは目の前にある。

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