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夜明けのすべてと夜明けのすべて(大阪308日目)
小説や漫画が実写化されることは嫌いじゃない。頭の中でぼんやり想像していたものが、リアルな映像として目の前に立ち上がってくるとテンションがあがる。
もちろん、好きな作品であればあるほど、警戒もする。素晴らしい世界観を壊さないでね、と祈るような気持ちになる。経験的にはガッカリする率が高いような気がするけども(苦笑)
そして、吉田大八監督の最新作「敵」のように、「これは絶対面白そう!」という期待感がある実写化作品が公開されるとなれば、慌てて原作を読んだりする。基本的には、原作を先に読みたい派だ。
これまで、実写を先に見て、原作に立ち戻るということは、あんまり経験がなかった。原作を知らずに実写版を観て、それが良ければなんだかもう満足してしまうし、実写版が良くなければ原作に遡ろうとは思わないし。
ところが、ひょんなことから実写映画を先に見て、原作小説を読み直した。
「夜明けのすべて」という作品だ。
映画版は、昨年公開されてあちこちで評判の良さを聞いていたので、年末年始の休みに配信で観た。とっても良かった。その時点ではいつものように十分満足してしまい、原作を読もうとは考えてなかった。
ところが先日、阪急梅田にある紀伊國屋に行った際、文庫本の棚を眺めていたら、
「著者サイン本」というポップが目に入り、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」と「夜明けのすべて」が並んでいたのである。
前から「そして・・・」の方は前から読みたいと思っていたので、サインに背中を押されて即決。でも、2冊並んで1冊だけその場に残すのもしのびない気がして「夜明け」も購入したんであった。
で、帰宅して封を切り、なんとなく「夜明けのすべて」を読み始めたら、あの映画の世界にグーッと引き込まれる感じがあって、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。
小説を読むと映画化にあたって改変されたところが少なくないことに気が付く。舞台設定から人と人との繋がりから、後半の展開まで。でも、映画にあったあのなんとも愛おしい世界感はそのままで、改変した部分も納得のいくものだった。そして原作は原作で、小説という形式だからこそ、その時々の登場人物の心象風景がとても丁寧に描かれていた。
原作を読んだことで、実写映画の素晴らしさに改めて気付き、また映像が先にあったからこそ、小説の中の主人公たちがより映像的にクリアに脳内で動いてくれた。
映像が優れている場合は映像先っていうのもアリだなあ。結局、読んだり観たりしないとどういう順番が良いかはわからないのだけど。