プロジェクトの立ち上げ方

公務員にとっての戦略的な位置付けとなる「プロジェクトの立ち上げ方」を考えてみる。

あくまでイメージだが、一つのプロジェクトは「3〜5年単位で実現できる(できそうな)もの」が望ましいと思う。スタート時点では到達できるかどうか自信が持てないけれど、なんとなく実現できたらいいなあとリアルに想像できるミライの姿があるものがプロジェクトにふさわしい。

ざっくりとでも「1年目では何をして、それがうまくいったら2年目ではこのステージに進み、3年目では・・・」といったイメージがあるべきだろう。

では、プロジェクト(≒戦略)と事業(=戦術)との違いは何なのか。先に述べたようにレイヤーの違いもあるが、「巻き込む相手の多様性」もプロジェクトの大きな特徴だろうと思う。事業(=戦術)の場合、対する相手方は1であることが多い。委託事業であれば委託先、補助事業であれば補助先である。もちろん、1本の補助事業で複数の市町村だったり、複数の団体を対象とする例もあるが、内容が同じであれば「量」の問題なので、ここでは相手方は1(単数)と考える。

プロジェクト(≒戦略)では、相手方は「多様な複数」になっていく。

卑近な例で恐縮だが、私が担当した「防災ヘリ導入プロジェクト」で考えてみよう。
*公式にはそんなプロジェクト名は存在せず、自分自身でも取り組んでいた最中はプロジェクトという意識はなかった。改めて振り返ってみて、それなりの規模感と意義を持ったプロジェクトであったと思う。

3年間の間にゼロ(何の準備もない段階)から100(運航開始)までに至ったタイムスケージュールを振り返るとこんな感じであった。

●1年目:関係団体の協議の場の設定。各種調査。協議会による調査結果(必要性の有無)の取りまとめ。議会対応。予算化。

●2年目:用地の確保。基地の基本設計>実施設計。ヘリコプターの機種選定。購入手続・契約。隊員の採用準備。

●3年目:隊員の採用。運航委託先の決定。基地の建設。備品等の購入。隊員の訓練。各種規程の整備。運航開始式典。

2年目からは事務補助(いとうちゃん)を付けてもらったものの、企画・折衝・事務処理のほぼ全てを1人でやった(やれた)。それは1年目の比較的早い段階で、3年後の姿をリアルにイメージできたことが大きい。そしてステージ(時間)が進むにつれて、折衝の相手方も次々に変わっていった。

●1年目:県内外消防・県内警察・近隣自衛隊等(協議会メンバー)、財政当局(予算確保)

●2年目:大阪航空局(用地交渉)、設計会社(基地)、ヘリ輸入代理店やメーカー(機体)、資機材メーカー(装備品)、県内市町村(費用負担)、県内消防(隊員派遣協定)

●3年目:ヘリ運航会社(運航委託)、保険会社(航空保険)、県外消防(隊員の訓練)、県内医療機関(連携)、県内市町村(ヘリポート確保・式典)

ちなみに1年目→2年目→3年目と流れるにあたって、折衝の相手は「入れ替わる」のではなく、ほぼほぼ「積み上がっていく」。調整が必要な案件はどんどん増えていくのだ。

では右肩上がりで増え続ける事務をどうやって処理していくのか。それはひたすらこちらがスキルアップをしていくしかないのである。プロジェクトはそうやって人材育成にも繋がっていく。


しかし、スタート時点で完成形が見えるものばかりがプロジェクトではない。大義はあっても行方がわからないプロジェクトの場合はどのように立ち上げていくのだろうか。

この話つづく。

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