備前地域の信仰まとめ1
岡山県は備前地域のおもに南側でよくみられる民間信仰についてまとめておく。
対象とする範囲
ここでの対象となるのは
備前市
和気郡
赤磐市
瀬戸内市
岡山市東区、中区、北区の一部
を主とする。※実際の備前国自体はさらに広い範囲を示す。
①地神塔
地神塔は県のほぼ全域で見られる。特にこの地域では五角形の五神名地神塔がスタンダードである。自然石に「地神」と彫った地神碑や、自然石だけのものもみられる。
各地区の社日講がだいたい江戸末期~大正期に建立したもので、現在でも社日に祭事を行っているものもある。社日の禁忌として、田畑に入らない、つまり土いじりをしないということを守っている地区も多い。五神は表記揺れはあるが「天照皇太神、倉稲魂命、埴安媛命、少彦名命、大己貴命」である。
地神塔の場所についてはその多くが水路のそばか神社の境内であり、石燈が一緒に建てられていることもある。
②瓦質祠
岡山県以外でも見られる瓦質祠だが、備前地域のみならず県下では殊にメジャーなものである。他地域のように小祠としての性格を持つものだけでなく、各家の特に本家に置かれるものが多くある。呼び方としては「瓦屋敷」「瓦宮」「瓦宝殿」「瓦厨子」「瓦クド」というものがあるが、呼び方を設けていないことも多い。
個人の家に置かれるものはその多くが切妻造の前面に丸穴を持ったものである。瓦質祠が一般に普及した大正期ごろに庶民向けに量産されたものと思われる。しかし、大棟の装飾や、前面に稲穂や注連縄と竹を線刻されているものがあったりとどこも完全に同じものというわけではない。また、地区ごとに同じ形のものが使われているなど考察の余地がある。
個人宅のもので祀られるのは主に
北東や南西など鬼門に置かれる場合の「艮金神」「坤金神」
井戸などの脇に置かれる場合の「井戸の神」「水神」
家をつぶした後などに置かれる場合の「土公神(おどくうさん)」
などがある。金神が井戸に遊行している場合もあるので注意されたい。
ただし、個人宅のものは現在では回収されて神社に安置されていることも多い。
③最上位稲荷
この地域で見られる稲荷社のほとんどが最上位稲荷である。備中高松の最上位経王大菩薩を勧請してきている。
④ラントウ墓
この地域で見られる古い墓石の形態として「ラントウ墓」というものがある。僧侶の墓石としてよく見る無縫塔型ではなく家型のもので、多くは享保年間など江戸時代ごろのものである。
ただ単に家型のみのものや、上に石塔を乗せたもの、扉付きのなどが存在する。中には位牌や石仏を入れたり、奥面に戒名や五輪塔の形を彫ることがある。大きさはまちまちで人の背丈以上の巨大なものから高さ1尺にも満たないような小さなものまである。
材質は主に豊島石である。
⑤大師堂
岡山県では江戸時代に藩主池田光政が小祠や寺社を破却した。寺院の数は少ないが、大師信仰が盛んである。大師堂を設け、弘法大師や十一面観音などを祀る。
大師堂が開かれたのは例えば赤磐郡では大正三年の四国霊場が開かれてから1100年を記念したときである。郡内の寺や辻堂など八十八か所に勧請して合祀し、八十八霊場ができた。
県下では真言宗の信仰が盛んである。墓に建てる卒塔婆には「南無大師遍照金剛」と書く。
▲参考:岡山市中区海吉の大師講について
⑥木野山神社
木野山神社は高梁市にある大山祇命,豊玉彦命,大己貴命神社を祀る神社だが、神姿が狼だとされる末社の高龗神、闇龗神が精神病やコレラなどの流行病に対し進徳が高いとされ信仰されてきた。
江戸末期など、流行病のあった時期に各地に勧請されている。木野山のお札を玄関に貼っておくと悪いものが侵入してこないとも言われている。お供え物は狼の好物とされる塩である。
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