ポストカードのデザインを依頼しました
小説同人誌を頒布する際におつけするサンクスカードを作りました。
制作にあたり、小説面のデザインを有償依頼したときの流れを記録した記事です。どなたかの参考になれば幸いです。
サンクスカードがどんなものかというと、表面には約500文字の小説(SSですね)、裏面にはサークルの活動紹介を掲載したポストカードです。
こんなご時世で活動予定が不確定なので、小説面のみ印刷所さんに発注し、裏面は都度、自宅印刷することにしました。
(一部ぼかしましたが)こんな感じです。
(小説面は実際の印刷物を撮影、裏面は画像データを縮小したもの)
デザインは緋田すだちさん(@hd_sdt)にお願いしました。春に発行した短編集「Jubilee!」の表紙イラストに続いて、二度目の依頼です。
装画の依頼はこれまでにも何度か経験があるのですが、「デザイン」の依頼は初めてでしたので、流れを記録しておきます。
すだちさんがまとめてくださった「Jubilee!」の装画制作過程⇒
https://hdsdt.tumblr.com/post/614732008354103296
と、今回の「Epitaph」の紹介記事⇒
https://hdsdt.tumblr.com/post/630025747622412288
1)印刷に至るまで(長い前置き)
そもそも小説「Epitaph」はTwitterに掲載したもので(印刷にあたり削除しています)、その時は文庫ページメーカーさんを使用しました。
じわじわとハマり続けている「聖剣伝説3 TRIALS of MANA」のキャラクター・世界観を意識した作品ですが、どうとでも取れる(=固有名詞を出さず、オリジナル作品のようにも読める)ように書いたつもりです。(二次云々とは書かずに掲載したため、創作ジャンルの方にも多く反応をいただきました)
二人称のような、手紙形式というか語りかけの文体で書きましたが、(拙さには目を瞑るとして)けっこう気に入っています。
その後、二次本を発行し、二次でイベント参加(エアブー)を決めたこともあり、印刷所さん支援の意味合いも込めてこれを何とか活かしたいと思うようになりました。
制作の慣れと印刷費用、取り扱いのしやすさからポストカードにしようとはすぐに決まったのですが、デザインでどうにも行き詰まってしまいました。
・ファンタジーの世界観
・俯瞰
・文字数が多い(約450字、文庫判同人誌1Pぶんほどあります)
これだ!という素材がなかなか見つかりません。自分で絵が描けたらいいんですけどね。
悩みに悩んだすえ、すだちさんに依頼することにしました。
以前にもすだちさんに依頼したことがあるので、依頼のハードルは低かったですが、最初にお声がけしたときの判断基準は
・Skebを受けていらっしゃる
・サイトに「ご依頼・お問い合わせ」の項目がある
……でした。「個人で依頼したいのですが」と尋ねやすいか否か、ということですね。
Twitterやpixivで見かける「お仕事募集中」だと、企業案件なのか、個人でもOKなのかわからず躊躇しがちなので、個人の依頼でもどんと来いやでという方は、どこかわかりやすいところに書き添えていただけますとたいへんありがたいです。
(もちろん最初に、個人での依頼がOKかどうか+スケジュールの確認はしますが)
そもそもすだちさんをどこで知ったのか?というところまで遡ると、2018年に開催されたネプリ企画「ペーパーウェル」さんです。
作品を拝見して、ウワッ好き……!と思ってフォローして、その後「逢断」などの漫画を拝見していました。
2)依頼時にお伝えしたこと
・掌編小説掲載のポストカード(サンクスカードとして使用)
・テキストの配置込みでデザインをお願いしたい
・サイズ(はがきサイズ縦置き、塗り足し込み154*106、フルカラーRGB、350dpi)
・納品形式(PSD)
・希望納品日
・テキストはオリジナルとしても読めるだろう二次小説
同時に「Epitaph」テキストデータをお渡し、見積もりを出していただきました。
依頼しようと決める前に悩む時間が長すぎて、納品日まで約ひと月しかないというスケジュールでしたが、ご快諾いただきました。
というわけで、制作開始です。
3)ヒアリング
すだちさんは原作ゲームをご存じないとのことで、公式サイトのキャラクター紹介ページをご案内し、背景や人物の人となりが察せられるようなシーンのスクショをお渡ししました。
並行して、デザインの方向性を決めるべく打ち合わせを行いました。
・どんな雰囲気にしたいか
・小説において重要なポイント
・イメージカラー、印象など
↓
・中心となるモチーフは「風」「鳥」
・色みについては「金」「透き通った」
・小説の意図や構図について説明
・厚塗りよりは水彩イメージ
「Epitaph」については、かなりはっきりとした意図があって書いたものなので、どういったふうに仕上げたいか、というイメージも明確にありました。
ですからこの打ち合わせについては、私の希望をしっかりお伝えできたのではと思っています。
(自分の中のイメージに合う素材が見つけられなかったので悩んでいたわけで……)
4)ラフ1~4
最初のラフは3案いただきました。
「こんな感じかな」と漠然と考えていたイメージに近いものも意外なものもあり、もうこの段階で「しゅごい(語彙昇天)」「頼んで良かった……」という心もちです。
いただいた中から好みの感じ、強調したい・残したい要素などをお伝えします。
・人物イメージである猛禽のシンボルが素敵
・八芒星も入れて欲しい
・「金色」の使い方が好きなのでこういう方向性でお願いしたい
・個人的なイメージはこれ、こっちは意外だけれどもかっこいい など。
ラフ2では「ロゴのタイプ」「全体のスタイル」「背景の色味」「フォント」を決定しました。
それぞれ、
・鳥っぽさがあるロゴ
・墓碑イメージ
・砂漠、風などをイメージした色
・強めのフォント(秀英明朝かな……?)
でお願いしました。
※
(余談です)
「こういう要素をこういう感じで」とお願いして画にしていただくわけですが、すだちさんは提示した要素の解釈と表現がとても詩的で、かつ物語性も備えていて、私はそのあたりをとても信頼しています。(前回お願いした短編集の表紙もすごいんだわ)
それを見た受け手がさまざまに想像を膨らませることができる、画と受け手とのあいだに物語が発生する、というような。
前回もすだちさんには掲載作を(完成稿ではないものの)ほとんどすべてお渡ししており、その上で描いていただきました。
だから、作者である私と小説、すだちさんと小説、すだちさんとイラスト、私とイラスト、読み手の方と小説、イラスト……と輪唱のようにイメージが連なっていくのかなと思うわけですが、これってすごいことじゃないですか。漠然としたイメージの話で申し訳ないのですけど……。
私は基本的に感想不要派(⇒こちらの記事)(あればうれしい)(嬉しくて舞い上がる)なのですが、自分以外の誰かの解釈を見せていただくのは大好きです。良い悪いではなく、こう書いたことがこう受け止められるのかとか、それがこう表現されるのかとか。
ある意味、ひとさまの解釈が見たくて依頼している部分もあります。
(もちろん、お任せしたほうが良いものができるからというのは大前提なのですが)
依頼のかたちも様々でしょうが、私がこれまでお願いしてきた方は設定まわりだけでなく、小説も読んで描きたいと仰ってくださったので、本当にありがたいです。
設定で書ききれないから小説を書いてるんやで……泣いちゃう。
(余談おわり)
※
続くラフ3で「ロゴ(八芒星の位置)」「背景」「文字組み(縦or横)」を決定しました。
これまではあまり考えることなく、イメージに近いものをお答えしていたのですけど、完成に近づくにつれ、「好き」と「イメージ」が競るようになりました。
最終ラフにて、
・テキストの背景部分の透過有無
・ロゴの色味、太字か細字か
・テキスト校正
を決定しました。こちらはほぼ悩むことなく決定し、校正に関してはルビの大きさのみ修正をお願いしました。これにて完成です!
5)完成、入稿
塗り足し込みでデータを作って頂いたので、印刷所さんのテンプレートに乗っけてサイズの不備がないことを確認するのみでした。入稿作業はすぐに終わりました。
印刷所さんについては最初の段階でお伝えして(RGB入稿できる印刷所さんだったので、納品の形式もRGBでお願いした)、背景画像のにじみ感やテキストの空気感に合うだろう五感紙(マーメイドに似た質感のざらっとした紙)を使うことにしましたが、この風合いがすごく良くて、めちゃくちゃ素敵に仕上がりました……!!
実物をすだちさんにもお送りしましたが、「(テキスト背景の)透け感がデータよりも良い」と喜んで頂けたようです。
印刷所さんは、紙ものの印刷でお世話になっているおたクラブさんです。
6)宣伝とか
「サンクス」カードやのに「エピタフ(墓碑銘)」とはこれいかに、という気持ちはあれど、前向きな小説なので勘弁してください……。
こちらのポストカードは通販時に同梱するほか、イベント参加の際(できる日が来たら)にはお買い上げの方におつけする予定です。
「お前の本全部持ってるけどポスカが気になってんだよ……/////」って神はこっそりお声がけください。
自家通販はこちら⇒https://bgkaisei.booth.pm/
※すだちさんに装画をお願いした短編集「Jubilee!」もあるよ!(大量に刷ったので)
デザインをお願いした緋田すだちさんの連絡先を再掲します。
Twitter:https://twitter.com/hd_sdt
サイト:http://storiastoria.com/
BOOTH:https://stowaways.booth.pm/
もうすぐ漫画の本を発行されるとのこと、とても楽しみです。すだちさんの漫画はお話が熱いだけでなく、一コマ一コマがイラストのようで、すごく読み応えがあるのです。おすすめおすすめ。
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