NuPhy Air60 V2の静音化への道
なぜ静音化したいのか?
*以下、NuPhy Air60をV1とし、NuPhy Air60 V2をV2と省略した名称で用いていく。
V1の静音化は前回のnoteを一読して頂いた上で、茶軸はルブ(潤滑)することで軸特有のタクタイルの引っ掛かりは少なくなるが、打鍵時に感じる打鍵音の大きさはそこまで気になるものではないと感じている。しかし、今回購入したCowberry軸は打鍵している際に明らかに底打ちしている感覚があり、またV1よりも静音化を高めた構造とはいえども、他社のライバル製品でないかと考えられるのはLofree Flowなどではないか。またLofreeはロープロファイルの静音スイッチなどを発売しておりNuPhyの独自の軸よりも静音タイプでありそちらにも目移りしてしまいそうになる時がある。また個人的に好きな打鍵感としては、「コトコト」や「スコスコ」という感覚であり、持ち運びができかつBluetooth機能があるという魔法のようなキーボードを実現させたいという欲望が静音化の熱量を高めてくれている。
終わらない静音化
今回もまた前回同様に内部の分解をしてから静音化していく。分解してから気づいたのだが、ネジの穴の部分がV1と若干異なっていた。PCBにマスキングテープを貼る作業では、前回は普通のマスキングテープを貼ったが今回はスコッチの粗面用のテープを用いた。
こちらの動画内で使用されていたので参考に使用してみることにした。実際に貼ってみて、粗面用は普通のマスキングテープよりも密着しやすいのがメリットであるとは感じたが、ケースを戻す時にネジ穴へのアクセスために穴を開ける必要があるのだが、粗面用ということもありテープがくっつきやすくて作業自体が困難であった。そのためネジを緩める際に利用した、ドライバーを用いて穴を開けていけば効率よく作業できるかもしれない。マスキングテープを貼る際には、バッテリー端子に干渉しないように注意して貼り付けていく必要がある。
V1を静音化した時には、家に余っていたアンダーラップを敷き詰めていったが、後々分解してみるとスポンジ自体の弾性がなくなっており、キーの底打ち感の軽減はされていたとは言いにくい(むしろ時間が経過するにつれて劣化していくため)。アンダーラップはあくまで代替であるため専門的な商品に比べては防振・防音などの部分は劣ることに加え、全体的に耐久性がないことが証明された。今回はそのため前回の反省を活かしてNRスポンジという、amazonでキーボード好きからの評価が高かったこちらの商品を使用してみることとした。標準的な3mmの厚さのものを購入した。実際に敷き詰めていく中で、底面のケースには特有の窪みなどがあり、敷き詰めていくのがV1よりも難しくなっていた。
こちらの商品よりも以下で紹介しているポロンの1.5mmの方がオススメしやすい。どちらの商品も耐久性・防音といった点はクリアしているため作業のしやすから後者の商品(ポロン)を購入した方が効率がいいかもしれない。
またV2からは、高さ調整のためのキックスタンドが内蔵されているが、その部分にスポンジを敷き詰めていくと 厚みからネジがうまく閉まらない場合があり、その部分を調整する作業にも手間取った印象がある。YouTubeなどでは、この3mmが紹介されていたが、個人的にはホームセンターなどで販売されているポロンスポンジフォームの1.5mmの方が作業がしやすいのではないかと感じている。自分の住んでいる地域で商品を探してみたが、ニッチな商品であり、粘着式のみしか販売されていなかった。そのためamazonなどで非粘着式のタイプを購入した方が、失敗した場合も貼り直しがきくためこちらの商品の購入をオススメする。(以下の商品ページのもの。)
軸が問題か?
今回もケース・テープMODを中心に静音化を進めていったが、本質的な問題はケース独自の静音構造ではないかもしれないと日々の試行錯誤の中で感じることがある。そうなると消去法で「軸」が問題なのではないかと考えてしまうのも無理はない。YouTubeなどでCowberry軸(ルブ、ケース・テープMOD)の打鍵音チェックの動画を確認しても、やはりこの軸の底打ちは避けられない問題であると感じた。
さらにケース・テープMODに加えて一応、軸のルブ(潤滑)もした。軸を外していく際に、PCBの間のウレタンフォームには若干ではあるが、工場出荷状態時のルブによる潤滑油が付着していた。拭きとる作業から始め、それが終わり次第、軸を一つずつ潤滑していく作業を黙々と行う。ルブ済みの軸、ケース・テープMOD済みで打鍵してみても、やはり打鍵音は響いてしまうため、もちろん「軸」の構造的な問題もあるかもしれないが、これ以上効果は見込めないことを実感した。
このことから、「Cowberryは静音軸ではない」ことがこれらの静音化する作業を通して気づいたことである。それでもリニア軸特有の軽い打鍵感は好みであるため、具体的な改善策があれば是非教えて頂きたい。
Gateron Low-profile 2.0 Redが最適解なのか?
NuPhy公式サイトに掲載されていた技術仕様についてのページがあったのでそれらの仕様についてまとめてみたので紹介する。
技術仕様をまとめてみて、赤・茶・青軸ともにアクションストローク、キーストローク、ピンは同じ仕様であり、赤軸の押下荷重が一番軽いことがわかる。また遊舎工房さんのサイトでのスッタフメモが参考になったので是非一読して欲しい。
Cowberry軸は、スプリングが1本であるが、Gateron Low-profile 2.0 Redは2本あるという部分も打鍵感・静音性の向上が見込めると考えられるが、リニア軸ではなくタクタイル寄りの打鍵感になってしまうのではないかという部分については少し気になる部分ではあるが、それでも静音化は見込めるのではないかと感じている。
まとめ
個人的には、今回の静音化はそこまで期待できるものではないと感じた。V1と比べて本体もAir96などと同様の静音化が期待できると思っていたが、打鍵を比較してみてもそこまで変化が感じられるものでなかった。このことから、本体の構造上、静音化フォームを敷き詰めるのもサイズ的な制約もあり、これ以上の静音化を求めるのは難しいのではないかと考えている。それかlofree flowやHHKBなどの静粛性の高いタイピングが可能であるキーボードを購入するか悩んでいる最中である。
NuPhyやGateronが静音軸を販売してくれない限りは、軸の静音化はまだまだ続くかもしれない。最近の動画でLofreeが静音タイプのロープロファイルを販売していることを知ったが、 V2のCherry MX軸には対応していないことが悔やまれる。一方でLofreeのクラウドファンディングなどで定価よりも費用を抑えて購入することができることを知った。他に打鍵感がよいキーボードがあれば教えていただきたい。
余談
これまで長々と静音化について述べてきたが、V2の静音化MOD後の打鍵感・音は共に打鍵していて文字打ちの時間は至福の時間になると感じた。それでもなお、全体的な商品としての完成度は非常に高いレベルであると感じる。しかし、長時間タイピングになると指先に疲労が溜まることは改善することはできないかもしれない。メカニカルの中でも、ガスケットマウントという打鍵時の衝撃吸収材のようなものが入っているものも個人的には気にはなるが、指先の疲労が軽減されるのかは未知数である。それか、HHKBのような静電容量無接点方式のキーボードを購入するかの二択になるのではないかと考えている。持ち運びの際の重量についてだが、V2は500gを切るため携帯性という部分においてはHHKBに勝る。しかし、引き換えに指先の疲労軽減かつ静粛性の高いタイピングが可能になるということも捨てがたく、キーボードの沼はつくづく深いと感じる。