異次元世界への旅ー私の‘’村‘’体験16
16 ‘’村‘’・外・死
そんなことがあった矢先なのに、またひっかかっている。
あちこちで試されるワナが仕掛けられている。
分岐点があり、選択を迫られる。
考えていると、つらいことばかりだ。
1と月前には、希望に燃えて、ここにやってきたのに、「これだ」と思ってつかんだと思って入ったのに、ここに来ても苦しい。このままおめおめと帰る気もない。大体、帰る気力すら、わいてこない。
かといってここにいても苦しい。死ぬ度胸はないし、相談できる人もいない。サークルも離れてしまって、心の支えを失ってしまった。どうしていけばいいのだろう。どこに脱出口があるのだろう。
事柄はこなせるから、とりあえず日をこなしていけば、時が解決するのか。いつかまた元気が湧いてくる日が来るのか。
オアシスのすぐ手前で、もうダメだと思って力尽きるのも損だと思う。どこかに突破口はないのか。ブレークスルーはあるのか。
だんだん追いつめられている気がする。今までだって、追いつめられて、ガケから飛んだじゃないか、と思う。飛んだらまた、新たな局面が、全く違う次元が開けてきた。私にはそんな原始力がある。何とかなる、と思いたい。
でも苦しい。どこかに逃げ出したい。でも、どこに逃げ道があるのだろう。戻ることはできない。死ぬ度胸もない。そうしたら、逃げ道すらふさがれている。
せっかく、汚れた現世を離れて、理想の‘’村‘’に入ったのに、そこでもやっていけない。現世でやっていけなくて、いわば逃げてきたのに、ここでもやっていけない。外の世界で、人を責めたり責められたりするのがいやで村に入ったのに、‘’村‘’でも責められてばかりいる。
ここにいても苦しいし、戻ってもやっていけないし、死ぬ度胸もないし、進むことも退くこともできない。傷ついた心を癒やそうとしても、厳しく問われるばかりだ。変わることを強いられる。「そんな生き方をしてるから苦しいのだ」と責められる。
もう、どこにも居場所がない気がしていた。いつも‘’村‘’・外・死の3つしか選択肢がない気がして、考えが堂々巡りしていた。適応できない自分を責めてばかりいた。
いつも「なぜここに来たのだろう」ということばかり考えていた。「特講」や「研鑽学校」では、「世話係」が答えの出ない質問を繰り返していたが、この頃には自分で同じ質問を繰り返し、袋小路にはまったような気がして、どこにも抜け道がないように思っていた。そのように誘導された、というより、自分で自分を追いつめていっていた気がする。
‘’村‘’の敷地内には、高速道路が走っていた。ある日の夜、そこに登って行った。ガードレールを越えて、車道に出た。
あと一歩、と思ったが、やはりそのときになると、恐くてすくんでしまい、その一歩はどうしても踏み出せなかった。怖かった。
死ぬ勇気や度胸すらない自分を責めた。でも、いくら責めても、体は頭の言うことを聞いてはくれなかった。
走り去る車のライトが涙ににじんで見える。ふっと、サークルの仲間の顔が頭に浮かんだ。もう一度会いたいと思った。「いなくなるとさびしくなる」と、あんなに引き止められたのに。
しばらく動けなくて、道路の端でうずくまっていたが、どうするあてもなく、すごすごと高速を降り、フラフラと‘’村‘’の中の道を歩いていたら、‘’村‘’の人に発見された。発見されれば責められることはわかっていたが、もう、どうなってもいい気がしていた。むしろ、見つかってホッともしていた。
「逃げるつもりだったのか」と詰問された。「そうではない」と答えたら、すべてを悟ったらしかった。そんなことは、よくあるのだろう。
そして、「研鑽」で「ここにはいられません」と言われた。そこにいるのはつらくてたまらなかったくせに、追い出されるのは恐かった。どこにも行く場がなかった。
結局、「予備寮」にいたのは1カ月と2日だった。
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