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外伝 超私的スキッパーキ3

カイルのお散歩秘話

2024年9月15日、海瑠は10歳となりました。
今でこそ、二人でのんびりまったり散歩を楽しんでいますが、ここまでの道のりは長くとても根気のいるものでした。


散歩を知らない犬

犬を飼うか猫を飼うかという議論には、必ず「散歩」というキーワードが出てきます。そう、犬には散歩が必要。
2016年5月から始まった初めての犬との生活。小学生時代に近所のシェルティと毎日のように散歩に行っていた飼い主は、1日2回の散歩に行く気満々でした。そして、学生時代、愛馬と散歩に行くときは必ず勝手に犬たちが付いてきたので、犬は散歩が好きなものと思い込んでいました。
しかし、ケージの中しか知らない犬は、外に連れ出しても、まったく、一歩も、歩きませんでした。

さて、困った。
抱っこでマンションから出てきて道に下ろした途端、座り込んで動かない!
マンション敷地内のちょっぴり草地まで抱っこで行って下ろすと、ちょっと匂いを嗅いだのでそのままのノリ?で散歩に行けるか?とこちらが期待しても、また草地で座り込むだけでした。
「さんぽ」を歌ってみるたり(←おバカ)、娘が前をちょっと走ってみたりしましたが、全く効果なしで、仕方なく首輪につけたリードをちょんちょんと引っ張ると仕方なさそうに歩き出したものです。

最初のうちの海瑠は、引っ張られることもあって、なんとなく人についてくるという感じで、仕方なさそうに歩いては座り、座っては歩くという日が続きました。お互いに、とにかく楽しくないよね、という感じなのと、首輪をちょいちょい引っ張るというのがなんか嫌!生理的に嫌!という気持ちが強くありました。
犬だから慣れたら普通に散歩が好きになるだろうなどと思っていました。
今の私なら、犬だからとか普通にとか考えること自体あり得ない話ではありますが、当時は何も知らない飼い主と散歩を知らない犬のコンビでした。

ケージの中しか知らない犬、外の世界を知らない犬、外の世界が怖い犬、それが海瑠でした。

散歩を楽しんでもらうために工夫したこと

細かいことは覚えていないのですが、迎えてから3ヶ月までにしたことは、
 ①スリングを使って抱っこで近所の公園などまで行く
 ②公園で持ってきたご飯を小分けして食べる
 ③別の公園に行く、またご飯を小分けで食べる
 ④公園から歩いて帰ってくる
でした。こんな感じで徐々に「帰ってくる散歩」の練習をする日々が続きました。ちなみに、2ヶ月目の写真ではすでに、とりあえずハーネスと9mリードを使っているので、その頃にへちまこさん(https://note.com/goyatouri99)の旧ブログにたどり着いたんだと思います。(ちなみに、へちまこさんとは後年、SNS上で一方的再会を果たし現在に至ります(^^))

迎えてから2ヶ月の頃

3ヶ月以降

「帰ってくる散歩」を続けるうちに家の周囲の環境に慣れてきたのか、マンションから出てからも歩けるようになり、歩いて出て、歩いて帰るという普通の犬の?散歩っぽくなってきました。ただ、このときは散歩に出たら、常に朝でも晩でも1時間半は歩き、海瑠本人にはちょうど良い散歩の長さが分からず、とにかく長時間ただ歩くというものでした。
また、この3ヶ月目以降から、すれ違う犬に対してガウガウ吠えるよう、望ましくない方向へと変わってきました(泣)。それまでは他犬に全くの無反応であったのですが、無反応=平気ではなかったのでした。これも今だから言えることです。
さらに、その年の秋から冬にかけての夜明け前と仕事から帰ってきてからの散歩は恐ろしいものでした。暗くてよく見えないこともあり常にソワソワ興奮モードで、とくに帰りの長い一本道では、背中が反って警戒モードとなり狂ったように走ってとにかく家に早く帰ろうとしていました。
その他、さらに望ましくない行動が増え、ジョギング中のウインドブレーカーのシャカシャカおじさんにも吠えかかる、私に声をかけてくるママ友にも吠えかかる、道行く子どもが走れば追おうとする、すれ違った学生の集団にはあわや噛みつこうとしたこともあり、このまま同じ内容の散歩を続けるのはお互いに精神を消耗すると感じました。

年が明けて、2017年。犬用リュックを購入し、毎朝リュックに入れて自転車で大きめの川の土手まで通いました。この土手は、川のすぐ横、一段高いところ、さらに一段高いところを歩くことができるのと、見晴らしが良いので他犬や走っている人が来たら、土手を上がったり下がったりしながら苦手なものを回避することができる場所でした。自転車を止めたところから散歩を始め、遠くの橋を渡って向こう岸を帰ってくるということをおよそ2年くらい続けました。

苦手なものを回避することを続けるうちに、家の近くでも犬がいなければ落ち着いて歩けるようになり、シャカシャカおじさんや走る子どもなどに反応しなくなりました。また、冬場でも帰りの一本道でソワソワ興奮することがなくなりました。散歩に出るときは、まあ行っても良いかという態度になり、散歩中は匂い取りを楽しむようになりました。歩く時間も朝は20分(夏場)~1時間(冬場)、夕方は20分~30分というように海瑠本人が決められるようになりました。
3ヶ月目から始まったリアクティブな行動は年単位で徐々に減っていき、穏やかな散歩と変わっていきました。
この頃使っていたのは、手作りのアクリルテープのハーネスとアクリルテープの3mリードです。軽くて良かったと思います。

クン活に余念がない

転機(2023年9月)

他犬への反応に対し、何年も何年も、犬がいたらUターン回避、距離があれば観察、次いでお知らせ行動を強化してきた結果、犬がいても吠えずに散歩をすることができるようになってきていましたが、海瑠と私にとって大きな転機となったのが、2023年のcaawt(Constructional Approach to Animal Welfare and Training)日本のカンファレンスです。

他犬への吠えという行動がその犬に対し「あっち行け!」「怖い」「嫌い」でなく、実は「その犬の飼い主さんとふれ合いたい」ことから起こっていたという事例に大きな衝撃を受けました。そんなことってある⁉
じゃあ、海瑠は何で吠えているの?

他犬に吠えかかるときの海瑠は、リードを固定した場所(数m~10数m)から吠え続けるという行動をしており、そんなときにチラリとこちらを見るような行動は一切なく、リードがなかったら間違いなく止まらず一直線に突っ込むことが想像できました。また、かつての経験から、お互いに匂いを嗅いだ後どちらかがカツンと鼻に一撃を入れることも想像されました。これはどちらの犬にとってもよくない経験になります。(この現象、お互いに挨拶した後にガウガウ言い出す意味が長年ずっと分からずにいたのですが、相手と離れ顔を背ける瞬間の「去り際の恐怖」のことをへちまこさんに教えていただいて、なるほどと腑に落ちました。)
でも、もし他犬が嫌いで吠えているのでなければ・・・?

その日の朝、今まで回避していた犬が前方からやってくるのを見て、心の中で相手の飼い主さんに謝りつつ、リードを調節しながら海瑠に任せて突進させてみました。一直線に相手に目掛けて早足で進む間は吠えず、いつもなら固定する距離からなお近づいても、吠え・・・ない???
相手と50cmくらいの距離(この距離以上には近づかないようにしました)でなんとなくすれ違い、すれ違ってから空気を匂いながら相手の後を追う行動が少し見られた後、私のそばに戻ってきたのです。その後3回、別の犬とこの1チャンスアセスメントを続けた結果、なんと吠える行動が全く出なかったのでした。
その日は感動しかなかったです!(最近は一期一会アセスメントと勝手に呼んでいます)

海瑠の、他犬へアクセスしたい、チェックをしたい、でもそれ以上の関係をとくに持ちたいわけではないという気持ちが推察されたので、相手犬にアクセスしたい気持ちを満たし、でも、去り際の恐怖がないようにといちばん近づけても50cmまでの距離としました。相手の飼い主さんから犬を近づけられたときも50cmと伝えて他犬との関わりを続けたところ、前方から他犬が来ても一直線に突進して近づくこともなくなり、弧を描くように相手に近づく行動が増えてきました。こうして、さらに海瑠との散歩は穏やかで快適なものとなりました。
ただ、相手が未去勢犬の場合は、かなり遠い距離からでも反応が激しすぎるため、(機能は分かりませんが)敢えて冒険するようなことはせずに道を変えるようにしています。

最後に

海瑠との散歩を始めて8年半の思い出を綴ってみました。初めは分からないことばかりでしたが、2024年現在、よく知った犬とは軽く鼻挨拶を交わすことも出てきて(また感動!)、ふたりでコミュニケーションをとりながらゆっくりまったり今日も二人五脚で歩いています。



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