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僕は何でもない日と、小説が好きだった
< 第4話 最終回>
「やばぁーい」
花織はそう言うと、きびすを返すようにして人混みを避けた。それから、ミオの腕にしがみついた。
ヨシオが振り向くと、背後から3人ほどのオトコが花織をとりまいた。
「カオリじゃないか!」
3人のうちのリーダ格のオトコが、花織に顔を近づけて威嚇するようにコトバを吐いた。
花織は、そのオトコと視線を合わせようとはしなかった。ミオの腕にしがみついたまま俯いてい
僕は何でもない日と、小説が好きだった
その週の土曜日。
六本木交差点にあるピンクカラーがキャッチーなアマンド前で、ミオと花織は待っていた。2人ともショートパンツとロングブーツを合わせたコーディで、熱帯ジャングルの島からココはTOKYOだった。
「やぁ」と俺が片手を上げてあいさつをすると、花織は、「オッス」と敬礼の真似をした。ミオは、アウターのポケットに両手を突っ込んで、小さく笑いかけた。
ミオにはあれから1度だけ電話をしていた
僕は何でもない日と、小説が好きだった。
前編 <第2話>
俺とミオは、ふたりを見送った。
しばらく、俺はできる限り平静を装い、ソファに寝転がって英字雑誌のページをめくっていた。ミオは、窓際にあるチェアに腰掛けて、外の景色を眺めている。ホテルのコートヤードで、ガーデンライトが幻想的に浮き立っていた。
ミオは、ベランダに出た。
俺はしばらく、ミオの後ろ姿をボンヤリと眺めていた。ブーゲンビリアの花びらをあしらったリゾートワンピースから、
僕はなんでもない日と、小説が好きだった
1日、85ドルだったかで借りたレンタカーは、絵の具でペイントしたようなコバルトブルーのアメリカ車だった。走行距離は10万キロを超えていたが、潮風でボディにサビが浮いてもいなく、強く明るいブルートーンは胸が空くようだった、シートに腰掛けてアクセルペダルを軽く踏み込むと、ブオン!と鳴いた。
カーラジオをチューニングすると、ハワイ出身のロックバンド、カラパナのパラダイスが流れた。アーバンでメロウなAO
GOLDEN SISTERS あらすじ
こんにちは、カイオトフミです。
最近、毎週投稿しているGOLDEN SISTERS。ここいらで、すこしあらすじとか。
GOLDEN SISTERSは、映像、音楽、文字系コンテンツに共通したキャラクターをメディア・フランチャイズさせていきたいなと思い、今から5年前に書き始めた作品です。
主人公の沙羅がソロデビューやタチバナ悠生の突然死など紆余曲折を経て、望都玲香らとGOLDEN SISTERS
GOLDEN SISTERS
ゴールデンシスターズ 第5話
12月の空は、チャコールグレーの雲が広がって何となく切ない。あと2週間もたてば、サンタが街にやってくる季節。やがて、夜のとばりが下りる時間。
沙羅の部屋。
クリスマスツリーが飾られ、ベッドにはサンタのコスチュームを着たクマのぬいぐるみが置かれている。
沙羅、わっとベッドに泣き崩れる。
アンティークな両面鏡の一方で、メイクを直していた42歳の沙羅はスツールから
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ゴールデンシスターズ 第4話
工藤 「また会えるのを楽しみにしているよ」
沙羅 「また会えるでしょうか?」
工藤はにっこり微笑んで、レコードシェルフの奥から一枚のシングル盤をピックアップした。レコードジャケットにはウエストを絞った薔薇柄のワンピースを着た小柄の女性と、リーゼントヘアに長めのジャケット、マンボズボンの四人の男性がストライクなポーズを決めていた。
沙羅 「これは・・・?」
工
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ゴールデンシスターズ 第3話
工藤 「スミちゃんは、元気かな?」
沙羅 「ええ、とても」
工藤 「三十年ぶりくらいになるかな?スミちゃんから連絡があったのは」
沙羅 「澄子さんとは、どういったお知り合いなのですか?」
工藤は、レコードプレーヤーのターンテーブルに、LONG PLAYING 盤のアルバムを1枚置いた。静かにレコード針を降ろすと、アナログ的なわずかなノイズが振動し、短いイント
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ゴールデンシスターズ シナリオ風#
18歳の沙羅は、いきなり男性に抱きしめられた。というより、沙羅のアタマが、勢いよく見知らぬ男性の胸に当たったと言った方が正解だ。沙羅は、その相手がタチバナ悠生であることがすぐにはわからなかった。
しかし、痩せていて身体はそれほど大きくはないが、しっかりとした骨格と、視線を隠すように伸ばした前髪が特徴的な若い男性がタチバナ悠生であることに気が付くと、沙羅は呼吸が
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ゴールデンシスターズ シナリオ#第1話
九月の澄みきった青空が広がる瀬戸内海に面した四国、愛媛県のとある小さな街。
旧家のお屋敷の一室。大きなアンティーク調の両面鏡をはさんで、二人の沙羅が向い合って椅子に腰掛けている。ひとりの沙羅は、18歳のサラ。もうひとりの沙羅は、42歳のサラだ。
サラ18 「明後日は、いよいよオーディションの日」
18歳のサラは、真剣な眼差しで鏡に映る自分の顔を見つめ
ロックミュージックと彼女
明日のことを考えると嫌になるくせに、とりあえず希望は捨てない。人間の脳は生き延びるために進化、言い換えれば発達したのだから当然のことだ。波瑠に関して言えば明日は月曜日で憂鬱だけど、週末の来ない明日はないことを信じて生きてみる。
今日は、6月10日水曜日の朝で、満員の通学バスに乗っている。途中のバス停から女子高の生徒2人が乗ってくる。毎週水曜日に限ってで、理由はもちろんわからない。その中の1人は、
戦争は幸せな顔をしていない
そとはまだ寒いけど、春の日差しにほっこり。
タラはクウネル遊んで、オレもなんだかフィルソーグッド。
フタゴタマガワひとつぎ、楽しいわが家のアフターヌーン。
オォ🎶
No peace No life.
ノート見せます。頭の中?
もしもこの世界に「時間」がなければ、私たちは3次元の檻の中に閉じ込められている。あなたや私がxyz座標空間の何処にいても、太陽や月は動かない。つまり、それは人間に「時間」という次元はなく、人間もショーウインドゥのマネキンのように止まったままということなのかもしれない。
1961年、手塚治虫の漫画で『ふしぎな少年』という時間を自由に止めたり動かしたりできる少年の物語があった。主人公サブタンは「時間よ
近々未来ストーリー Shall We Dance?
203X年、12月23日午前5時、ブッチギリ瀬名裕二はガレージの電動シャッターを開けた。スカイラインGT-Rのイグニッションスイッチを回し、エンジンを始動させる。通称「アール」と呼ばれ、『羊の皮を被った狼』と怖れられた猛禽なエンジンを搭載したハコスカの末裔車だ。
瀬名裕二は、マールボロの先に火を入れ、革ジャンの襟を立てた。足元はハイカットのバスケットシューズに、ジーンズはビンテージ。指なしのド