熊野滞在記 -玉置山編- 2016.9.28-30
Facebookの「ノート機能」がいつの間にか無くなったのですが、そこに書いた熊野古道の滞在記が出てきたので、こちらのnoteに書き移しておくことにしました。2016年秋、2回目の熊野古道の旅の記録です。不思議な出来事が色々あった旅の回想録です。ちょっと修正・加筆もしました。
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9月28日から30日の二泊三日で熊野に滞在してきました。熊野は今年5月以来、2度目。今回は当初10月半ばあたりで計画していましたが、ちょっと早まって9月23日に急遽決定となりました。
9月27日に奈良駅近くで前泊をして、28日の朝、前回ガイドをお願いした山伏の中澤さんと奈良駅で落ち合い、中澤さんの車で玉置神社へ向かいました。
途中、吉祥草寺という修験道の開祖として尊崇される、役行者という人物が誕生して産湯として使った井戸があるお寺へ寄って参拝しました。こんなこじんまりとした場所で生まれたんだ…と思うくらい、ひっそりとした小さなお寺。凄いものの始まりって、そういうものかもしれません。境内には熊野神社もありました。
玉置神社へ着いたときはかなり強めな雨でした。こういうときの雨って、歓迎されていないんじゃないかとか、「神さまからの歓迎の印」みたいな明確な意味づけをしようとする人もいるでしょうが、僕はどちらにも捉えていなくて、禊のような同化のようなニュアンスを感じました。
雨用の装備をして、玉置神社の駐車場から本殿へと向かいました。玉置神社は玉置山の9合目にあって、そこまで行くのも大変なのですが、駐車場から本殿まではさらに15分くらい歩きます。閉ざされて隠されているような印象を今回も感じました。だからこそ、そんな領域に立ち入らせていただけることをありがたく思うんです。
本殿をお参りしてから樹齢三千年と言われる杉の巨樹群を眺め、摂社の三柱神社をお参りしました。そこからさらに玉置山の頂上を目指して本格的に山中へ。途中にある末社の玉石社へお参りを済ませてから、頂上を目指しました。
前回は朝まで雨が降っていたものの、玉置神社に着いたときには雨がピタッと上がっていましたが、今回はかなりの本降り。霧深いことが多い山はさらに霧が深くて雨で煙っていて、あの世のような感じがしました。ちょっと怖さすら感じました。僕ひとりきりでは前に進めないくらいです。
山中には幾つもの鳥居があって、結界が何層にも張られている感じ。中途半端な気持ちで入るなと言われているようです。玉置神社は日本で一番古く、熊野・大峰修験の行場のひとつとされていて、熊野三山の奥院と称された霊場。大地創造のエネルギーが詰まった場所です。
僕は前回も今回も、この玉置神社に行くことが大きな目的でした。どんなに行きたくてもカーナビが壊れたり、土砂で道がふさがっていたり、あるいは突然体調を崩したりなどで、辿り着けないこともある場所。だから僕はふた月も断酒して願掛けをしていました。
雨の森は怖くもあり、心地よくもありました。玉置山の頂上からその奥の森へと。僕はひたすら中澤さんの後をついて歩きました。足を滑らせたらおしまいという足場もあり、気を引き締めて歩きました。
中澤さんは夏の間ずっと富士山のガイドをされていて、富士山のシーズンが終わり、下山してちょっと経ったタイミングで今回の熊野行きに同行してくださいました。
富士山シーズンが始まる直前、秋くらいにまた熊野に行きたいという話、そしてどんな感じの滞在にしたいのかを電話でしました。ですがそれ以降、彼が富士山から下山するまでの夏の間は、SNSを含めて一切やり取りをしていませんでした。だけど多くを説明しなくても、僕を理解してくれているんです。熊野の旅がこんなにも素晴らしいのは、中澤さんあってこそなんです。
2015年9月に京都の晴明神社の宮司さんから「熊野に行きなさい」とお告げをいただいた直後、山伏に案内してもらいたいと思ってネットで探しました。熊野なんてまったく知らなかった僕ですが、どんなに熊野に詳しいとしてもただの山岳ガイドに案内してもらうのは、ちょっと違うと感じていました。案内してもらうなら山伏だろうな、と。漠然とそう思いながらネットを漠然と検索していました。
で、熊野を案内しているとある山岳ガイドさんのブログをふたつ見つけたのですが、そこにケータイが書いてあったのでそれぞれに電話をしたのです。ひとつは不通でしたが、もうひとつの方が繋がりました。そして事情を説明して、山伏と知り合いたいと言ったところ「私が山伏です」という答えが返ってきました。それが中澤さんなんです。
中澤さんは僕の熊野の旅はツアーで行くものではなく、ひとりで行った方がいいものだとすぐに察知してくださいました。なので僕がプライヴェートでのガイドをお願いしたところ、快諾してくださいました。中澤さんにとって、僕の熊野が初めてのプライヴェートガイドなんだそうです。
初めてコンタクトを取ってから7カ月後の2016年5月、春になったタイミングで初めての熊野が実現しました。晴明神社での熊野行きのお告げから、さほど時間が経たぬうちに現れた中澤さん。まさに導かれるような旅という感じです。
今回、本当は宝冠の森という場所にある鎖場で、鎖を使って岩の登り下りをする予定でした。前回は前日の雨のせいで中止になったため、今回はチャレンジしようということになっていたんです。だけど、今回はさらにひどい雨のために中止。またしても次回へと持ち越しとなりました。
玉置山はたくさんのキノコがありました。そう、もう秋なんですよね。森を引き返して下山して、巨大な岩が祀られた白山社をお参りした後、雨に濡れたパーカーを脱いだところ、何と左腕にヤマビルがいて、血を吸われていました。人生初。ですが、早めに対処したので大きな被害はありませんでした。雨が降っていたり雨上がりにはヤマビルがいるので、入り込まれないように足元や袖口、首元の対策は大事だなと身をもって思いました。
雨の玉置山は禊のような、瞑想のような、現実と夢の境目があやふやな感じで、何とも言えない感覚がありました。玉置神社はエネルギーが強すぎて、合わない人もいるらしいんですが、僕にとってはとても居心地のいい場所です。
雨の中の山歩きの後、日本最古の湯ノ峰温泉へと向かいました。宿で心地よい温泉に浸かってから、美味しいごはんをいただき、翌日のために早めに就寝しました。