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パワハラの話。
兵庫の知事のパワハラにまつわる報道をテレビで観ていたら、かつて働いていた会社でのパワハラを思い出しました。あまり人に話していないことですが、ちょっとここでお話ししようと思います。気づいたらかなり長くなってしまいましたが、ご興味あれば読んでみてください。
社長からのパワハラと暴言
20年ちょっと前ですが、僕はC社という小さな広告制作会社に中途採用で入社しました。グラフィックデザイナーしか所属していない会社で、初のコピーライターとして採用されたのが僕だったのです。F社という同じく広告制作会社へ出向するための要員として採用されました。F社はC社より規模が大きな会社で、僕はF社の名刺を持たされて働いていました。C社はワンマンな社長S氏が個人経営する会社だったのですが、用事がない限り僕がC社に顔を出す必要はありませんでした。
F社でコピーライターとして勤務していたのですが、とにかく仕事が止めどなく稼働しているため残業が異常なくらい多くて、真夜中3時にやっと仕事が終わってタクシーで帰宅して、ほんの数時間寝てから翌朝また出勤なんていうことが連日でした。タクシー代は会社の経費です。
あまりにも深夜残業が多すぎて睡眠時間が足りなかったので、ランチタイムはパパッと適当に食べた後、昼寝をすることも多かったのですが、ある日昼寝をしていたらいきなり誰かに起こされました。見たら、S社長でした。
「お前、何寝てんだよ」
社長からそう言われたので、「昼休憩だから寝てるんです」と言ったら、「それはお前の自己管理がなってないからだ。寝るんじゃない!」と怒鳴りつけられました。もちろん、社長は連日の鬼のような残業のことを知っています。でも、止めどない連日の残業の上に、休憩時間すら自由に寝ることも許されないという理不尽さ。かなりのストレスを感じていました。S社長はいつもそんな感じで、たまに会うと何かしら言いがかりや文句を言ってくる感じでした。
数年働いたある日のことでした。F社の親しいコピーライター数人と話していて、給料をどのくらいもらっているのかという話を振られて、ここだけの話ということでそれぞれの給料を言い合ったら、あまりにも僕の給料が少なすぎることに驚かれました。いくら何でもそれは少なすぎる、と。僕も彼らとの金額の差に愕然としました。
そこから数日後、珍しくS社長から呼び出しがかかりました。なんでも社長のゴルフ仲間がゴルフクラブの会報誌に執筆しなくてはならないものの、文章を書くのが苦手だということで、その代筆をしろというのです。打ち合わせのためにC社に行きました。
「お前、F社でうちの給料が安いって文句を言ってるらしいな?」
着いて早々、僕が待機していた部屋にS社長がやってきて怒鳴りつけました。F社の誰かが良心で社長に言ってくれたのか、もしくは「文句を言ってる」と捏造して社長に伝えたのか、そこらへんは定かではないにせよ、社長に誰かがこっそり告げ口をしたのです。すると社長はこう怒鳴りつけて言いました。
「あの給料で生活がやり繰りできないのは、テメェの母親がパチンコでもやり狂ってるのか?それとも、光熱費が馬鹿みたいに高い家にでも住んでるのか?だったらそんな家、とっとと引っ越しちまえ!!」
それを言われたときは怒りを通り越えて、なんでこんな会社を選んだんだろうという自分に落胆しました。今思うと怒ってもいい場面だったと思いますが、当時の僕は解雇されて仕事を失うことばかり心配して何も言えませんでした。S社長のその言葉でC社を辞めることを決めました。F社のメンツの口の軽さにも失望しました。すぐに転職活動を始めて、C社を退社しました。
女上司からのパワハラ
そういえば、F社には同じC社からNさんという女性も出向していました。Nさんは僕の上司でグラフィックデザイナー兼ディレクターだったのですが、このNさんもパワハラがひどい人でした。
F社では朝9:30までに出勤しなければならなくて、1分でも遅刻をするとタクシー代が経費として落とせなくなるというルールがありました。多くの人が深夜まで残業をしているのに、9:30ルールは厳守というなんとも厳しい状況でした。
ある朝、駅からF社まで歩いていたのですが、ギリギリ間に合うか間に合わないかという感じだったので小走りで急ぎました。だけど1Fでエレベーターを待っていたもののなかなか降りてこないため、4Fのオフィスまで階段を走って上り始めました。走り始めたとき、「お前、ふざけんな!!」と1Fから怒鳴る女性の声が聞こえました。ギリギリ9:30に間に合ってタイムカードを押して、自分のデスクに座ったら、Nさんが僕の所にヅカヅカと凄い形相で歩いてきました。
「あんたさ、アタシが来たのをわかってて、エレベーターの閉のボタンを押して先に行ったでしょ?ふざけんじゃないわよ!!」
そう怒鳴りつけるNさん。もちろん僕は階段を上って行ったのでエレベーターには乗っていません。そのことをNさんに告げたのですが、
「ウソウソ。あんたみたいなタイプっていい人そうに振る舞ってるけど、いざとなるとそういうことをするのはわかってるから」
どんなに僕がエレベーターに乗っていないことを主張しても、Nさんの中では僕が自分に嫌がらせをしたと思い込んでいて、自分が時間に間に合わなかった怒りを僕にぶつけまくってました。Nさんは常日頃からそんな感じで、自分が苛立ったときに他人に対して怒りをぶつけるタイプで、僕はそのターゲットになることがよくありました。これは仕方がないことだと思って黙っていましたが、S社長の言葉が会社を辞めるきっかけになったものの、Nさんと一緒に仕事をすることも辞める原因のひとつではありました。
社長と再会
C社を辞めて何年も過ぎて、僕がマナカードリーディングの個人セッションを始めてしばらく経った頃、Hさんという同い年の女社長と寿司を食べに行きました。HさんはF社で働いた後、自分の会社を立ち上げて経営をしています。ふたりで寿司を食べていたとき、Hさんが「あれ、Sさんじゃない?」と、ちょっと離れたところにS社長がいるのを指差しました。一瞬にして嫌悪感で胸がいっぱいになりました。
「挨拶してくれば?」
S社長とも交流のあるHさんからそう言われましたが、正直話したくないと思ったものの、そのままにしておくといつまでも自分の心に結び目を抱えたままになると思ったので、S社長に声をかけてにこやかに挨拶をしました。
すると社長が凄く喜んで「おぉ!お前、元気か?」「今は何やってるんだ?コピーライター、まだやってるのか?」とあっけらかんと色々話しかけてきました。「お前、たまには会社に遊びに来いよな」なんて、ニコニコしながら言う社長。嫌なことって言われりされたりしたほうはずっと残っているけれど、言った本人は覚えていないものなんですよね。これって本当によくあることだなぁと実感しました。
女上司との再会
後日、Hさんから電話がありました。
「Nさんとごはんを食べるんだけど、よかったら一緒にどう?」
実はHさんは、S社長やNさんが僕に言った暴言のことを一切知らないので、そんな感じで普通に言ってくれたのです。Nさんの名前を久しぶりに耳にして嫌悪感が走ったものの、S社長との再会の流れに乗るように、Nさんとも会ってみようと思ってYESと伝えました。
Nさんは結婚してC社を辞めて北海道に移住。子育てをしながらグラフィックデザインの仕事をしているそうですが、たまに東京に来るのだそう。で、Hさんとごはんを食べる約束をしたそうです。Nさんには僕が行くことを内緒にして、サプライズにしてあるとHさんから言われました。
僕とHさんが先に店に着き、しばらくするとNさんが登場。僕を見たNさんはもの凄く喜んでいて「え?久しぶりじゃん!元気だった?」「今はどうしてるの?」とニコニコ笑ってました。言った本人は覚えていないというS社長と同じやつです。
3人で乾杯をしてひと呼吸置いた後、僕はNさんにこう言いました。
「今日はどうしても言いたいことがあってここに来たんです。Nさんと働いていたとき、Nさんから凄く失礼なことや暴言を浴びせられることが多くて、僕はあの会社で働くことが本当に辛かった」
そう告げるとNさんの表情が固まって、
「アタシ、そんなに失礼なことしてた?」
と神妙な顔つきで僕に言いました。なので、エレベーターの件を話したところ、Nさんはしばらく黙ってから「本当にごめんなさい」と深々と謝りました。こういうときって、勝ち誇ったように思う人や和解できたと思う人もいるかもしれませんが、僕は単に長年抱えていた自分の中の心の結び目が解けた感触があって、自分自身がやっと身軽になれたと思いました。S社長のときも同じでした。S社長やNさんと自分の関係がどうのというよりは、どうやって片づけたらいいのかすらわからない自分自身の宿題が、やっと終わったような感じだったのです。心の底からホッとしました。
我慢をする必要なんてない
今は自分の中でのわだかまりが一切なくなって、心の結び目が完全に解けたことで、本当に自分自身が楽になりました。あのとき意固地になって、寿司屋でS社長に声をかけなかったり、Nさんとのごはんの誘いを断ったりしていたら、心の結び目はもっと固く大きなものになっていたと思います。
当時、S社長やNさんにきちんと反論して直接物申していれば、心に結び目を長年抱えることもありませんでした。自分を守るために戦うべきときは、逃げずに戦うことが本当に必要だと思います。そのときの怒りや悔しさという感情を他人事のように流さずに、もっとしっかりと味わうべきだったと思います。
でも、仕事を失いたくない一心で変に我慢をして、反論できずにそのままにした当時の自分を、否定することも卑下することもしません。S社長やNさんを赦すことはもちろんですが、当時のそんな自分自身を赦してあげるということが、心の結び目を解くことに繋がっていったと思います。
時代が変わって、今はここまでひどい労働環境は少なくなったとは思います。でも、上司からの理不尽な押しつけやパワハラで苦しみながら働いている人もいると思います。我慢をする必要なんて一切ありません。
会社で雇われて働くこと=我慢をすること
という昔ながらの間違った認識を未だに持っている人がいるかもしれませんが、本当にそれは大きな間違いです。
ちょうどこの投稿をした日からの一週間に向けて、X(旧 Twitter)にポストしたメッセージが、まさにそんな感じの内容なので最後にシェアしておきます。これって一週間だけのことじゃなく、人生においてとても大切なことです。
【2024 8/26-9/1のメッセージ】必要な忍耐もありますが、必要じゃない忍耐もあるわけです。まずはそれを見極めましょう。必要じゃない忍耐は今すぐやめてください。自分の心を曇らせることはやめましょう。もっと自由にもっと楽しく、自分の心を満たすようなことをどんどんやりましょう。 #週マナ
— Naoya (@kaimana708) August 25, 2024
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