「らくがき少女」第2話


荒野の中を二人が歩いている。

月島「荒野ってなんか落ち着くなー」
陽「そうなの?どうして?」
月島「だっていつもグレーの色ばっかり見てるから。荒野の色は地味だけどグレー以外の色があるじゃん」
陽「そうね」
月島「他にも落ち着く理由あるかも」
陽「え、なんなの?」
月島「隊長ってあんまし喋らないじゃん?」

陽は俯く。肩を落とし悲しそうにする。

陽「それは・・・うん・・・」
月島「僕は好きだよ」

月島が陽の顔の下から表情をのぞき込む。
陽は照れて顔をそらす。

月島「隊長は心で聞いてる感じがして」
陽「え?」
月島「喋りたくなってしまうんだよね。よく言われない?」
陽「・・・たまに」
月島「普段の僕はこんなに喋んないんだよ?」
陽「どうして?」

月島は俯く。近くの石ころを軽くける。

月島「だから、それは・・・なんでだろう?」

月島は陽をパッと見る。

月島「とにかく!陽隊長(ヒナたいちょう)といるとお話したくなるんだ」
陽「陽隊長(ヒナたいちょう)?・・・」
月島「あー、呼びにくかったから勝手にヒナ隊長にしてみた。どう?」
陽「まあ、どっちでもいいけど」

陽は少し嬉しそうにほほ笑む。少年もそれを見て微笑む。

×××
数日間二人は歩いている。朝から晩まで歩き、夜は野宿した。たまにキャンプファイヤーもしたりなど。そこで月島はどのように牢屋を脱出できたのか、陽の能力についても聞いた。二人は自分たちの街付近に戻って来た。グレー一色の街に。

月島「ザ・ドール・オブ・アートへ戻ろう!ヒナ隊長!」
陽「うん!」

二人は戻って衝撃の光景を目の当たりにした。それは、ザ・ドール・オブ・アートまでもがグレー一色しかなくなっていた。住人たちもいつもは様々な色の服を着てるが、グレーの服をみな着ていた。そこにある色は陽の囚人服についた赤い血だけだった。

その少女はただでさえ青白い肌の血相を変えて走る。より青白くなった肌は血の色が良く映えている。付近にいた住人に聞く。

陽「おばさん!なんでグレー一色に?どうして?ここ街だけは大丈夫じゃなかったの?」
おばさん「陽ちゃん!あなたの、あなたのお父さんが・・」
陽「お父さんがどうしたの?え。お父さん」

陽は必至に家まで走る。陽の家の外観がグレーになっていた。中に入ると、家具から食器までもがグレー一色に。かつてのカラフルな家ではなくなっていた。陽は自分の部屋に入る。グレー一色である。泣いてへたり込む。少ししてから思い立ったように立ち上がる。

陽「地下室!」

キッチンにあるダイニングテーブルを移動させ、下に敷いてある絨毯をどける。扉がある。扉を開けると地下室に続く階段がある。陽は急いで階段を降りようとして、転げ落ちてしまう。立ち上がる。

陽「父さん!」

地下室は真っ暗である。電気をつける。ガランとしている。地下室は工房のような作りになっている。机には小さめの箱が置いてある。陽は箱を開ける。そこにはキャラクターの書かれている子供用のピンク色の手紙と、三日月のネックレスと鍵が入っている。陽は手紙を読む。

ー陽へ。この手紙を見てるということは、また地下室にはいったな。ダメだと言ったのに。でもまあ、今回ばかりは怒れそうにないな。よくやった。陽。よくここまでこれたな。やっぱり父さんと母さんの子だ。箱にネックレスが入ってるだろう?お前がピンチの時に助けてくれるから、肌身離さず持っていてくれ。あと父さんのことは今は探すな。わかったな?お前なら何でもやれる。父さんと母さんはそれを知っている。そしてお前を助けるものも現れる。今はつらいだろうが未来は開ける。そう信じている。父さんと母さんはいつもお前を見守っている。
PS.この手紙に書くのは恥ずかしかったが、色が恋しくてな。子供用のに書いちまったよ(笑)
父さんよりー

陽は手紙を胸に当てへたり込み。ワンワンと泣き出す。
階段から足音が聞こえる。陽は階段へ視線を移す。

月島「ヒナ隊長!ここにいるの?うわっ!」

階段から月島が転げ落ちてくる。

月島「痛てて」
陽「大丈夫?」

陽は涙をぬぐい、笑いだす。
月島が照れる。

月島「この階段、歩きづらいんだよ、もう」
陽「転びやすいよね、その階段」
月島「そんなに階段から転げ落ちたのが面白い?ふんっ」

月島は少しそっぽを向いて怒る。

月島「そんなことより、大変なんだ」
陽「どうしたの?」

陽は近くにあったカラフルのポーチに手紙と鍵をしまい込み、三日月のネックレスを首につける。月島は階段を上り始めている。

陽「待って。何があったの?」
月島「君のお父さんが・・・」
陽「え、私のお父さんが何?」
月島「殺されそうになってる」

陽は急いで階段を駆け上る。二人は広場に向かう。

×××
広場には大勢の人がいる。中心には絞首刑に使われる縄があり、その横には兵士が銃をもって立っている。

兵士A「この者を今日処刑する事になった」
兵士B「願わくば、こいつの最後の言葉を皆に聞いてもらいたい」

兵士が陽の父に耳打ちする。

兵士A「これが我々の最大の譲歩だ。いらんことは言わない方が身のためだぞ。ザ・ガール・オブ・アート国王ならそれぐらいわかるだろ?」
陽・父「恩に切る。名もなき兵士よ」

フンっと鼻を鳴らして兵士は自分の位置に戻っていく。

兵士「これから3分間、こいつからの最後の言葉があるそうだ」

陽・父「私はザ・ガール・オブ・アート10代目国王、キャサリン・クロフォードである」

人々はざわつき始める。何言ってんだ?あいつ、と笑うものあれば、ガール?ドールの間違えじゃないのか?と疑問を持つ人。スラムの住人なんか興味ねえから早く死刑を見せろ、とはやし立てる人も。広場はより一層ざわつき始める。
景観国王は首を切る仕草をして兵士に殺せと命じている。

陽「父さん、何を言って・・・」

陽・父「我々の国とは、、、」

陽・父は兵士に銃でハチの巣にされる。

陽「父さん!!」

陽は全速力で走る。人込みをかき分ける。指を思い切り噛みちぎり、血で地面に針の絵を描く。人込みの中で針を絵から出す。ピカッと光る。その光に周りの人が反応する。人込みの少し離れたところで、景観警備隊Cも光に気づく。陽はまた走る。月島が後ろから陽の服を引っ張るが陽は気づいていない。

月島「ヒナ隊長!!」

周りの音がかき消される。陽には何も聞こえなくなっていた。月島の声さえも。人込みを抜け思い切り振るかぶり、針を兵士めがけて投げつけようとした瞬間ー

景観警備隊Cが陽を抱きかかえ走りだす。他の人や兵士は気づいていない様子。

陽を抱えながら走っていると、後ろから兵士が何名か追っかけてくる。

兵士「待て!何をしている!?その少女はなんだ?」

景観警備隊C「くそっ!」

景観警備隊Cは路地裏はいる。兵士たちが大声をあげながら通り過ぎていく。陽は暴れる。

陽「離してよ!!」

景観警備隊Cは陽を下し、陽の前に立つ。道をふさぐ。

陽「私はあいつらを殺す。そこをどいて」
景観警備隊C「子供がそんな事してはいけない。特にお前は。。」

陽は片足を思い切り地面にたたきつける。

陽「どいて!どかないとこの針であんたを・・」
景観警備隊C「今!五感があまり使えないんだろう?」
陽「え?なんで・・」
景観警備隊C「お前の父さんと俺は知り合いだ。しかも、かなりの古い仲でな・・お前のことならお前よりも知ってるかもしれんぞ」

疑いの目を向ける陽。

景観警備隊C「信じてもらえなくても結構。俺はお前の父に伝言を頼まれてな。行くかどうかはそれから決めろ」

景観警備隊Cの後方から月島が現れる。手にはナイフを持っている。
月島は大声を出しながら景観警備隊Cに突進していく。

月島「ヒナ隊長から離れろー!」
陽「待って。この人は」

景観警備隊Cはしゃがみ込み、月島に抱き着く。月島のナイフが景観警備隊Cの死蔵部分付近に刺さる。

景観警備隊C「君か。さっきはごめんな。蹴ったりして。悪かったよ。ああするしか俺には思いつかなかった」
月島「あんた・・どうして・・・」

月島はパニックを起こしている。

景観警備隊C「陽ちゃん、お前の親父からの伝言だ。ー世界を旅してこい。お前のその感受性は人の役に立てる。大丈夫。死刑でも俺を殺す事はできん。今お前が戻ればすべてが台無しなる。旅をすればわかる。進め。そして照らせ!ーだそうだ」

陽は呟く。

陽「訳わからないよ。。」

景観警備隊C「よし、お前ら。もういけ。俺のことは誰か見つけてくれるさ。いけ!」

月島「行こう!やつらがくる!」

少年は少女の手を取り、路地裏を抜けていく。意識朦朧とその後ろ姿を見つめる景観警備隊C。

景観警備隊C「さー俺の役目は終わったぞ。クロフォード。紡いで来た者は果たして吉と出るか、凶出るか。本当はお前にもわからんのだろう?まーあとでたくさん話し合おうぜ。未来についてよ・・」

景観警備隊Cの周りには人だかりができる。救急車を呼ぶもの。ただのじゃじゃ馬。色々な人が回りに集まる。景観警備隊Cはこんなに人だかりができているのに、本当に人の命を救おうと思ってるやつなんて数名しかいないのか。なんてことを考えていた。

そのころー深い傷を心に負った少年と少女は手を固くつなぎ走り続ける。二人はこれまでにないスピードで長い距離を走り続けていた。





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