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蔬菜育種におけるDNAマーカー支援選抜と育種利用 スイカ編 #011 【スイカ・レスシード(種子が少ない)形質選抜マーカー】

有用形質選抜のためのDNAマーカー
スイカ編 #011 【スイカ・レスシード(種子が少ない)形質選抜マーカー】

【概要】
 種なしはスイカ(Citrullus lanatus)育種において価値ある農業形質である。従来の種子が少ないスイカは3倍体が主流で、アンバランスなゲノム含量のため、多くのデメリットがある。種子が少ないスイカは、特定の生殖遺伝子の変異や、減数分裂の際の染色体の転座によって、2倍体レベルで達せられることがある。しかし、2倍体の種子が少ない形質のメカニズムはほとんどわかっていない。

 我々は自家受粉すると正常に種子が生じる自然発生変異系統、スイカ系統「148」を同定した。「148」 × 「JM」のF1交雑植物は総じて、2つの親系統の種子数のそれぞれ50.3%、47.3%への減少がみられ、種子が少ないと考えられるものであった。

 花粉生存率の検定や交配試験の結果、F1交雑体は半不稔の花粉と胚珠を生じることを明らかにした。さらに細胞学的観察により、半不稔性は、減数分裂時のプロメタフェーズIにおいて、4本の染色体からなる1つの4価の環を呈するという染色体相互転座の結果であることを示した。

 RT-qPCR解析により、半不稔性の表現型は特定の減数分裂遺伝子の発現崩壊ではなく、染色体転座によって引き起こされることを間接的に確認した。

 F2集団の遺伝学的解析は、「148」スイカ系統はホモ接合型の転座であり、F1交雑体の種子が少ない表現型は、1つの染色体断片の転座により促進されていることを示唆した。

 その転座断片は、全ゲノムリシーケンスと遺伝地図クローニング法により、さらに6番染色体の2.09 Mb領域にファインマッピングされた。我々の研究により、6番染色体上の2.09Mbの染色体断片の転座が、減数分裂期のメタフェースⅠにおいて減数分裂の異常を引き起こし、結果として2倍体の種子が少ないスイカを生じさせることを明らかにした。

 我々の発見は、2倍体レベルで種子が少ないスイカの育種に新しく有望な方法を提供するとともに、種子が少ないスイカの育種において、人為的に染色体転座を誘導し、その断片の大きさは参考となるものであった。

【出典論文】

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