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美大生と就職【美大進学を考えている人・美大就活生へ】
美大を卒業してそろそろ2年経つので、美大生の就職について書きます。
芸術・美術系大学進学を考えている方や、その親御さん、現役美大生に、進路の参考になれば…と思い筆を執りました。主にファイン系の話になります。
恐らくオープンキャンパスだと、大学側は就職に対して、前向きな意見しか出してこないと思います。
この記事では良い点も悪い点も、リアルな所感を書いていくので、参考にして頂ければ幸いです。
あくまで私の視点での話なので、考えに偏りがあるかもしれませんが、ご了承ください。
筆者は東京五美術大のファイン系専攻出身で、一般企業(美術とは無関係)に就職しました。専業画家志望ではありませんが、展示を年2回くらいで続けていて、それなりのお給料で、結構楽しく暮らしています。
大学での成績は、座学はちょっと出来る、実技は成績にムラがある感じでした。決して優等生では無いです。中高での成績は下位でしたが一応進学校だったので、比較的座学の緩い美大では少し有利でした。在学中資格等は一切取っていません。
美大受験生の時に知りたかったこと、就活時の自分に伝えたいことを中心にまとめていきます。
専業の画家になるやつって結局いるの?
結論から言うと、今現在専業の画家になった方は、少なくとも私の周りには居ません。アルバイトとの掛け持ちをしたり、正社員もしくは派遣社員で働いて、生活費は確保しながら制作をしている人が多いです。ほんのひと握り、大成した方も中にはいるかもしれませんが、卒業後2年くらいではまだギャラリーとの付き合いを深めたり、作品のクオリティを上げたり、画家仲間を集める段階にいる人が大半だと思います。
とはいえ、絶望しないでください。普通の社会人でも、新卒で入社して、いきなり課長とか部長にはなれません。下積みと言うのはどんな職種にもあります。画家もまた然りです。若くしていきなり大成したように見える人というのは、人の何倍も努力して絵を描いて、量をこなしているか、もしくは、幼い頃に絵を専門的に習い始めたり、学ぶ環境があった人のどちらかだと思います。
それが現実です。焦らずコツコツ頑張りましょう。
これはあくまで所感ですが、本気で専業を目指している方は大学院を目指している人が多いです。金銭的に余裕がある人はそのまま進学、一旦就職して一生懸命学費を稼いでいる人もいます。勿論大学院に入らずに、専業を目指している人もいます。
天下の東京藝大卒の同級生が、私大の大学院に進学していました。受験生目線で見たらありえない話ですよね。とりあえずみんな藝大とかムサタマとか入りたいとか色々考えると思いますが、指導してくれる教員も色んな人がいます。どこに入ったから将来安泰とかはないです。最悪第一志望に入れたのに病んだとかもザラにあります。
結局、適材適所‼️‼️‼️‼️‼️
ファイン系って就職できるんか?在学中にできることは?
本人次第なところはありますが、
とりあえず、バイトをしておけばなんとかなる!
制作費はかかるし、大学生だからそれなりに遊ぶお金も欲しいし…
バイトは当然するだろ…
と思っている方も多いと思います。
ですが、敢えてここで私が念を押して、バイトをお勧めしているのにはちゃんとした理由があります。
美大、めっちゃ浮世離れしとる!!!
美大に進学する人は自分の世界を持っている人が多いと思います。良くも悪くも他人に関心があまり無いというか。
そして教員もだいたいそんな感じです。
教員も学生も他人に関心がないと、絶望的に協調性が育ちにくいし、元々入学前はあったとしても、そんな環境に居続けたら、普通に退化していきます。謎ルールがまかり通ったり、倫理観がアレな発言も許されやすい環境です。気楽っちゃ気楽ですが、そんな状況に慣れた状態で、集団行動ありきの日本の社会に放り込まれたら…当然、適応できなくなります。
小中高での集団行動に飽き飽きしているかと思いますが、週何回かはバイトをして、適度に社会に馴染む練習をしておく方が、後々困らないで済みます。できたら、二つくらい長期のバイトを経験しておくといいでしょう。バイトを通して、社会に出た時にどんな立ち回りが自分には向いているのか、把握することもできます。積極的に前に出てバイトリーダーになる人、逆に淡々と与えられた業務をこなす人、後輩とフラットに接して業務を教えるのが得意な人、何年かやっていくうちに自分の得意な役割が分かってくるかと思います。高校生の時は接客業くらいしか選択肢が無いかもしれませんが、大学生だとちゃんと探すと軽めのオフィスワークなんかも選べます。お給料が出るインターンなんかもありますね。
ちなみにオススメのバイトはスポーツジムのフロントや清掃です。日本の社会のなんか強い新人は大体体育会系なので(ド偏見)、体育会系の人の思考回路を知っておくと、社会に出た時の参考になるかと思います。完全に真似する必要はありませんが、時々処世術として役に立つこともあるでしょう。
就活はどうやって進めるんだ…
大学に来る求人は、デザイン職以外だと※カスみたいな条件・給料の求人が多いため、将来的に一人暮らしをしたい、ちゃんと稼ぎたいなどと考えている人は、マイナビなりリクナビなりクリ博なり駆使して、自力で就活を頑張る必要があります。
※私の就活時はコロナ禍だったので、もしかしたら今は良い求人もあるかもしれません。
デザイン職であれば、大学にそれなりにいい企業から求人が来るのと、ポートフォリオありきの面接になるので、対策や相談の為に大学の就職センターを頼るといいと思います。
大学で教員免許や学芸員資格を取ることも出来ます。ここからは全部聞いた話なので真偽は怪しいですが、美術の資格職はその二つに限られてしまうのと、辞める人も少ないため、求人倍率が結構高いみたいです。本気でなりたい人は絶対目指すべき!!ですが、「とりあえず資格取っとくか……」でやると、めちゃくちゃ辛いらしいです。
美大出たのに美術関係の仕事に就かないなんて…
これはあくまで私の考えですが、美大出ていても、美術関係の仕事に就かなかったら、大学生活意味ないだろ!ということはないと思います。
舞台美術や制作職、ギャラリー運営など、色々美術のお仕事はありますが、お給料が低いか、高くて拘束時間が長いケースが多いです。年間休日も少なめのところが多いです。自主制作もしたいから、ワークライフバランス重視したい!と思うなら、業界としてはIT関係、または事務職などの一般職種に就職する方が圧倒的に良いです。もしくはフリーターや派遣社員という手もあります。会社にもよりますがこの辺の業界・職種は副業に対しても緩めな印象があります。
凄く舞台を愛しているとか、超テレビっ子とか、展示作業がめっちゃ大好きだとか、自主制作する時間を犠牲にしてでもやりたいことがあるなら、その道を選ぶべきだと思います。しかし、「美大に入ったし、美術の仕事をしなきゃ……!」と思い込んでそれらの仕事を選ぶのであれば、辞めておいた方が良いです。病む確率が高いです。
そもそも、大学は専門学校と違って、就職するために行く場所ではありません。ご自身の知識や知見、作品制作の経験を積むところです。文学部を出たからと言って皆がみんな文豪にはなりませんよね。それと一緒です。
美大は学費が高いし、入試も大変です。在学中もアホみたいなペースで作品の締切やレポートに追われます。だからといって美大生全員が美術と心中する義務はありません。したい人がするのは大いに結構ですが。
美大に入学後、あなたは色々な価値観を持った自我の強い人と出会うことで、多角的な視点を持てるようになるでしょう。大喜利作品制作でタスク管理を学び、また柔軟なアイデアを捻出できるようになるでしょう。自分の「好き」「怒り」「悲しみ」「問題提起」、色々な意見や感情を作品で発表し、自分を表現できるようになるでしょう。
これらは、人生を豊かにしてくれるスキルです。
一部は一般企業に入っても役に立つスキルです。
特に、自己表現や、自分の感情を認知し、出力するスキルは、あなたが物凄く辛い目に会った時、必ず助けになります。それが出来なくて、気持ちが解消できず、辛い思いをしている大人も沢山見かけました。社会に出てからも在学中に磨いた感性は、大事に持っておきましょう。
結論、美大を卒業してからやりたいことを探してもいい
こんな世の中なので、20代のうちは、転職したければいくらでも見つかります。極論、とりあえずどこかで働き始めてから、やりたいことを考えても大丈夫です。寧ろ、卒業後やりたい仕事がないから何もしない、みたいな状況が一番後々キツくなってくると思います。人にもよりますが。
一旦美術から離れて一般職を始めて、やっぱり休み少なめでもギャラリーで働きたいと考え直すとか、ワークライフバランス重視で自主制作をやっていく方が楽しいとか、もう卒業したら自主制作なんてしないとか、色んな考えがあると思います。どれかが正解ということは無いので、貴方が1番幸せだと思える生活を選びましょう。
就活時期になった途端、なんか浮世離れしてるとか、社不っぽいとか、偏見持たれがちかつ自虐しがちな美大生ですが、この世に欠けていない人間なんていません。欠けているのを隠すのが上手い人がそこそこ居るだけです。欠けている部分を埋めてくれる環境を探すことをサボらないで、自分の人生と向き合った方が幸福度は高いです。
という訳で、美大生の就職に関する私のお気持ち表明noteは以上になります。参考になりましたら幸いです。