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工業簿記~器が簿記、中身が原価計算Ⅵ「中身」の話、材料費、労務費、経費

 今回は、「中身」の話として、材料費、労務費および経費について詳しく見ていきましょう。ただし、経費については、「中身」と「器」の話です。

①    「中身」の話、材料費

(a)消費単価の決定

 材料費の計算は、以下のように行われます。

材料費 = 消費単価 × 消費数量

 消費単価の決定方法については、商業簿記における棚卸資産の仕入単価の場合とほぼ同じで、先入先出法平均法があります。

㋐先入先出法
 上図のように、消費単価が徐々に高騰している場合には、製造過程投入分に比較的安い初期の消費単価を割り当てる方法と平均単価を割り当てる方法とでは製造原価の値が違ってきます。前者が先入先出法です(下図)。

 安い消費単価の材料が製造原価に入っているとすると、「④製品売上原価」は小さく、「③製品期末棚卸高」は大きくなります。その結果、「⑤当期売上高」と「④製品売上原価」との差額である「⑥売上総利益」は大きくなります。

㋑平均法
 平均法は、製造過程投入分に平均単価を割り当てる方法です。つまり、平均法を採用する場合、比較的高い消費単価の材料が製品原価に入ることになります(下図)。

 高い消費単価の材料が製造原価に入っているとすると、「④製品売上原価」は大きく、「③製品期末棚卸高」は小さくなります。その結果、「⑤当期売上高」と「④製品売上原価」との差額である「⑥売上総利益」は小さくなります。

(b)材料費の分類

 材料費のうち、製造に直接かかわる主要材料費と買入部品費は「直接材料費」ですが、それ以外はすべて「間接材料費」となります。

②    「中身」の話、労務費

(a)労務費の分類

 労務費とは、働く人にかかる費用で、以下のようなものがあります。(1) 賃金
(2) 給料
(3) 従業員賞与手当
(4) 退職給付費用
(5) 法定福利費

 以上の費用のうち、製造に直接かかわる直接工の賃金だけは「直接労務費」ですが、それ以外はすべて「間接労務費」となります。

(b)労務費の当月消費額

 材料費の対象である材料は、形のあるモノなのでイメージしやすいですが、労務費の対象は人の労働力という無形のモノなのでイメージしにくいと思います。材料は有形で、材料倉庫に一旦収納されます。そこから、製造過程に必要な分だけ投入されます。一方、従業員から提供される労働力は、直接、製造過程に投入され、無形であるため、金額で計算します。

 毎月1日から月末までの原価計算期間と給料の支払い期間がズレる場合、原価計算期間の労務費は賃金支給額とイコールではありません。そこで、下図のように、賃金支給額から「支給額中前月分」をマイナスし、「当月未払額」をプラスして求められる「当月消費額」を用いて計算します。

③    「中身」と「器」の話、経費

(a)経費の分類

 材料費と労務費以外の費用が経費です。経費には以下のようなものがあります。
(1) 支払経費
  外注加工賃、特許権使用料など
(2) 月割経費
  工場建物の減価償却費や賃借料など
(3)  測定経費
  電気代、ガス代
(4) 発生経費
  材料棚卸減耗費

 これらのうち、支払経費(外注加工賃、特許権使用料など)は、直接経費ですが、それ以外はすべて間接経費です。

(b)経費の「器」の話:経費の処理

 経費の処理には「器」の相違によって、㋐経費の諸勘定を用いない処理、㋑経費勘定を用いる処理そして㋒経費の諸勘定を用いる処理があります。

㋐経費の諸勘定を用いない処理
 
例えば、外注加工賃は、直接経費なので、直接「仕掛品」勘定で処理し、工場建物の減価償却費は、直接「製造間接費」勘定で処理します。

㋑経費勘定を用いる処理
 例えば、外注加工賃や減価償却費は「経費」勘定を用いて一旦処理し、その後、直接経費は「仕掛品」勘定に直接振替えます。そして、減価償却費などの間接経費は「製造間接費」勘定に一旦振替えます。その後、製造間接費のうち製造投入分を「仕掛品」勘定に振替ます。

㋒経費の諸勘定を用いる処理
 例えば、外注加工賃や減価償却費はまずは「外注加工賃」勘定や「減価償却費」勘定を用いて処理します。そして、外注加工賃などの直接経費は「仕掛品」勘定に振替え、減価償却費などの間接経費は「製造間接費」勘定に振替えます。その後、製造間接費のうち製造投入分を「仕掛品」勘定に振替ます。

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