自分でできる決算分析⑤ パナソニックホールディングス(増収、一部減益)
会社自身やマスコミが公表する決算数値は、損益計算書の情報が中心です。でも、損益計算書以外の、包括利益計算書やキャッシュフロー計算書情報も掲載されています。それらを見れば会社の別の姿が見えてきます。
本稿では,財務諸表の数値を使って自分で会社の経営分析ができるよう,経営指標の比率や数字が何を示すかを学ぶことができます。分かりやすく書かれていますが,決して内容が初歩的なものに留まるわけではありません。本稿で身につけた知識だけで充分,自分で企業を分析し,診断することができます。
パナソニックホールディングスの2023年4月1日から2023年6月30日と2024年4月1日から2024年6月30日の第1四半期決算(決算短信)について分析します。
パナソニックHDの「決算短信」データの入手法は以下の通りです。
「決算短信」の1ページの赤枠に損益計算書の主な項目と包括利益が示されています。その後のページに損益計算書、包括利益計算書そしてキャッシュフロー計算書が掲載されています。
まずは、損益計算書項目の一部と包括利益、および営業活動によるキャッシュフローは以下の通りです。
上5行が損益計算書項目です。会社自身やマスコミが公表する決算数値は通常、これらに限られます。「売上高」は増えていますが、「売上総利益」以外は減少しています。3行目の「販管費」は「販売費及び一般管理費」の略で、利益ではなく費用項目なので、カッコを付けています。右の期間はこの「販売費及び一般管理費」が増えているため、「営業損益」が激減しています。営業活動によるキャッシュフローは、右の期間は多少増えています。
損益計算書上の損益について売上高に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上高」に対する2行目の「売上総利益」の比率は以下の通りです。
売上高と売上総利益との関係は、以下の通りです。
上掲の売上総利益率が上昇しているとうことは、逆に売上原価率が減少していることを意味します。
次に、「売上高」に対する4行目の「営業損益」の比率を見てみましょう。
売上高が増加し、営業利益が減少したので、売上高営業利益率は低下しています。売上高と営業利益との関係は、以下の通りです。
先ほど見たように売上高営業利益率が低いのは、 「販売費及び一般管理費」が増加しているためです。因みに、「販売費及び一般管理費」に属する項目は以下の通りです。
上記のうち、赤字で記している点について説明します。
上掲のスライドにあるように、人件費のうち「製造に携わる従業員等」のものは「製造原価」に含まれ、損益計算書上は売上原価の一部となります。他方、人件費のうち「販売及び一般管理業務に従事する従業員等」のものは、「販売費及び一般管理費」に含まれます。
次に、「減価償却費」についても、その費用計上について説明します。
上掲のスライドにあるように、減価償却費のうち「製造に関わる建物等」のものは「製造原価」に含まれ、損益計算書上は売上原価の一部となります。他方、減価償却費のうち「販売及び一般管理業務に関わる建物等」のものは、「販売費及び一般管理費」に含まれます。
次に、「売上高」に対する5行目の「四半期損益」の比率を見てみましょう。
分子の四半期損益の金額が減少し、分母の売上高が増えていたので、この比率も下がっています。
パナソニックホールディングスの各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。
左の期間は、投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大、そして財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借入の縮小のための資金に営業活動によるキャッシュフローの黒字を充てています。
右の期間は、資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大、そして財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借入の縮小のための資金が、営業活動によるキャッシュフローの黒字では足りないので、「現金及び現金同等物」の残高を充てています。
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