学問としての会計学④投下資本回収計算としての減価償却
取得原価主義会計は、事業投資についての回収計算を意味します。すなわち、収益によって回収された原価が費用であり、収益との差額(回収余剰)が事業利益です。この点を計算例で説明してみましょう。
《例題》
仮に取得原価3,000万円の固定資産(設備)について、残存価額ゼロ、耐用年数3年で定額法で減価償却しているとしましょう。毎期の減価償却費は、1,000万円です。これは、投資の観点からすると、毎期、1,000万円以上の収益が見込まれ、3年間では総収益が3,000万円以上になるとの見込の下に当該固定資産が取得されていることを意味します。
仮に、各年度の収益が1,200円だとし、費用が減価償却費のみだとしましょう。その場合、利益額(回収余剰)は以下のようになります。
すなわち 、取得原価3,000円の固定資産のアウトフロー(投資額)は、それ以上の額のインフロー(回収額)を見込んだ投資であり、各年度の利益(回収余剰)は、投下資本の回収計算の結果としての事業利益であることが理解できます。
この観点からすると、貸借対照表は、取引記録を基礎とした未回収残高の一覧表として理解できます。取引記録を前提とするということは、取引時点での価額である取得原価が基礎となり、これを取得原価主義と呼びます。取得原価主義会計を国際会計基準(IFRS)は、「原価モデル」と呼んでいます。取得原価で表される投資額から、収益の実現によって回収された分を除いた、未回収残高が貸借対照表に計上されます。そして、回収時点において利益を認識する原則が実現原則です。
原価モデルにおける資産は、原価評価された投下資本の未回収高を示します。但し、これは、事業投資に対してのみ意味があります。
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