雑誌『會計』の休刊と「日本型会計学」の終焉①まえがき
まえがき
大正時代から続いてきた『會計』という雑誌が来年3月で休刊となります。これは、一雑誌の休刊を越えて「日本型会計学」の終焉を意味します。「日本型会計学」というのは、日本の会計学ではなく、特に戦前昭和から戦後昭和にかけて日本の会計基準をめぐって展開されてきた日本独自の会計学領域を指します。つまり、かぎかっこ付の筆者独自の用語です。順を追って記していきたいと思います。
『會計』は、大正時代から刊行されていますが、そこにおいて戦前昭和期から日本独自の会計基準について、会計基準策定の当事者たちの論文、討論会などが掲載され、日本独自の会計基準策定に積極的役割を果たしました。
詳しくは、今後、別稿として論じていきたいと思いますが、今回は、その問題意識をかいつまんで紹介したいと思います。
戦後も、雑誌『會計』は「企業会計原則」をめぐって戦前と同じような役割を果たしました。「企業会計原則」の経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告として公表されたのは、昭和24年でした。当時は、商法や税法に詳細な会計に関する規定は存在しませんでした。
「企業会計原則」の制定前に、商法や税法などの会計関連法令のための共通の会計規定から成る「企業会計基準法」が構想され、立法の準備がなされました。結果的に当法律は草案のまま立ち消えになってしまいました。「企業会計原則」は、「企業会計基準法」の構想を一部引き継ぐ形で制定されました。このあたりの事情についても次回以降、順を追って論じたいと思います。。
なお、現在の「財務諸表論」と称される教科書や大学の講義は、元々、「企業会計原則」を解説する書物や講義でした。その証拠として1990年代までの財務教科書の巻末には「企業会計原則」そのものが掲載されていました。
今回は、「まえがき」として連載の意図と概略を説明しました。