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学問としての会計学⑤減価償却の目的と効果

(1)  減価償却の目的(正しい損益の計算)


 減価償却の目的は、正しい損益の計算です。簡単な例で見てみましょう。まず、取得原価90万円の固定資産を使ってビジネスを行い、3年間、毎年40万円の収益が計上されたとします。単純化のために固定資産購入以外の支出は生じないとします。減価償却を行わず、単純な収入支出計算で損益を計算すると以下のようになります。

 第1期は、固定資産の購入のための支出が90万なので、収益が40万円の場合、50万円の損失となります。そして、第2期と第3期は固定資産購入のための支出が生じないので40万円が丸々利益となります。収益が各期とも40万円なわけですから、損益にバラツキがあるのは不合理です。
 次に、取得原価90万円の固定資産について、耐用年数3年、残存価額ゼロ、定額法で減価償却をするとします。この場合の損益計算は以下のようになります。

 この場合は、収益が各期とも40万円で、利益も各期10万円ですから、正しい損益計算が行われていることが分かります。このように、正しい損益計算を行うことが減価償却の「目的」です。

(2)  減価償却の効果


 以上の減価償却の「目的」とは別に、減価償却の「効果」について見てみましょう。先のほどの例の各期の損益は以下のようになります。

 利益は、配当や税金の形で社外に流出してしまう可能性があります。それに対して、費用は企業内に留保され、社外には流出しません。但し、それは現金として蓄えられるわけではありません。同じことを別の図で表したものが下図です。

 この図では、費用を「種もみ」に例えています。来年の収穫のためには「種もみ」は残しておかなければなりません。「種もみ」以外は食べてしまっても来年の収穫には影響しません。この例えでいうと、費用とは「種もみ」であり、利益とは消費可能な分ということになります。
 固定資産の場合、来年の収穫の確保に相当するのが、減価償却の対象となる固定資産の再調達です。先ほどの例の耐用年数3年の固定資産であれば、3年使用した後も同じビジネスを続けるためには、固定資産を再調達する必要があります。そのための資金が減価償却費の計上によって社内に留保されていますので、3年経過後に当該固定資産を再調達することができます。これが、減価償却の「効果」です。

 但し、先ほども述べたように、減価償却累計額分の現金が蓄えられているわけではありません。棚卸資産や他の固定資産などに姿を変えているかもしれません。しかし、そうした場合でも、それらを担保に資金を借りて有形固定資産を購入することができます。

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