工業簿記~器が簿記、中身が原価計算Ⅴ総合原価計算(仕掛品の評価:先入先出法)
① 総合原価計算(先入先出法)
今回も、第Ⅳ部同様、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいる【設例】で説明します。今回は、先入先出法による計算です。
② 仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定
今回の【設例】は、第Ⅳ部と同じです。すなわち、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいます。
(a)直接材料費
最初に、下図の左側の直接材料費について見ていきましょう。これも第3課と同じです。
【設例】の【生産データ】により、仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。
(b)加工費
次に、加工費です。下の図を見てください。「③月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので完成品に換算して(120個×80%)96個に換算されます。それに「④当月完成」(完成品)600個を足します。「④当月完成」(完成品)は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「①月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので完成品に換算して(180個×50%)換算個数は90個となります。
「③月末繰越」96個に「②当月完成」(完成品)600個を加え、そこから「①月初繰越」90個を引くと「②当月投入高」は、606個となります。ここまでは、第3課と同じです。
③ 仕掛品の評価(先入先出法)
ここからは、第Ⅳ部とは違います。「②当月完成高」には、まず、「①月初繰越高」が入ります。「①月初繰越高」は、月初の時点で作りかけの状態で引き継がれたものなので、これから仕上げて完成させたと考えるわけです。
そして、「④当月完成高」の残りについては、「②当月投入高」の一部が割り当てられ、「①月末繰越高」には、「④当月投入高」の残りが割り当てられます。
以上の説明をもとに、直接材料費と加工費について、「月初繰越」と「当月投入」の割り当てを示したのが下図です。
この図をもとに、金額を割り振りましょう。
(a)直接材料費
直接材料費については、月初繰越36,000円が、そのまま完成品に入ります。完成品の残り420個については、当月投入129,600円×420個/540個の100,800円が割り当てられます。月末繰越は、129,600円×120個/540個=28,800円が割り当てられます。
(b)加工費
次に、加工費です。月初繰越28,080円は、そのまま完成品に入ります。完成品の残り510個については、当月投入189,072円×510個/606個の159,120円が割り当てられます。月末繰越は、189,072円×96個/606個=29,952円が割り当てられます。
④ 総合原価計算表:【設例】の解答
これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。
右端の「合計」の下3行が設例の解答です。ちなみに、一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の600個で割ったものです。