魚講S2 レポート#2:究極のたこ体験をあなたに~こんなに官能的な食べ物があっていいのか~
海洋水産技術研究所(KAIKEN)の取り組みの一つである「魚講」が2024年10月より再開しました。
noteでは、その「魚講 Season2」の各講演内容を簡単に振り返り、講演に参加できなかった方にもその学びをお届けしたいと思います。
「魚講」についての詳細は以下の記事をご覧ください。
はじめに
2024年12月12日に開催された魚講では、
『究極のたこ体験をあなたに~こんなに官能的な食べ物があっていいのか~』
というタイトルで、兵庫県明石市の老舗 “金楠水産” にて “四代目 たこ匠” を務めておられる「樟陽介」さまから講演をいただきました。
樟さまは、代々受け継がれてきたタコの加工技術を駆使し、明石ダコを全国に届ける一方で、クラウドファンディングを通じ、その魅力を広める活動にも力を注いでおられます。
樟さまのご活動内容などについては、下記のInstagramのアカウントよりご確認ください。
明石ダコの魅力に目覚めた瞬間
まずは樟さまが明石ダコの魅力に気付いたきっかけについてお話を伺いました。
明石で生まれ育ち、幼少期から海や魚に親しんでこられた樟さまは、高校卒業後に東京の築地市場で6年間修行し、水産に関する知識や技術を磨かれました。
その経験の中で数多くの海産物に触れる中で、「明石ダコの品質、およびその価値の高さ」に気付いたと仰っていました。
この目覚めをきっかけに、家業である金楠水産に戻ること決め、現在は父親からから職人技を学びつつ、自らが気付いた明石ダコの魅力を多くの人々と共有する活動に力を注いでおられます。
ウチのタコの凄さ
続いて、金楠水産(ウチ)が取り扱う明石ダコについてご説明いただきました。
長年明石ダコの加工を手掛けてきた金楠水産では、その加工に卓越した技術と徹底したこだわりを持っており、特に「塩もみ」と「茹で」に注力しているとのことです。
「塩もみ」は、タコのぬめりを取り、食感を引き出す重要な工程ですが、金楠水産では塩加減や力加減を明石ダコ一匹一匹の状態に合わせて調整しているそうです。
一方、「茹で」は味や食感に大きく影響を与えるため、茹でる際の温度や水質、さらには茹で時間までも秒単位で管理するほどの徹底した作業を行っているそうです。
これらの工程は効率的とは言えないものの、明石ダコを最も美味しく仕上げるためには欠かせない作業だといいます。
こうした細部へのこだわりが積み重なり、金楠水産が取り扱う明石ダコの品質や価値を一層高めているのだと仰っていました。
詳細は公式サイトをご確認ください。
また、金楠水産こだわりの明石ダコ加工の工程を紹介する動画がありますので、興味のある方はぜひご確認ください。
明石ダコを守り、未来へつなぐ挑戦
耳にされたことがある方も多いと思いますが、実はこの明石ダコ、近年資源量が激減しているのが現状です。
こちらのグラフにもあるように、平成25年から令和5年の間に約80%も減少しており、これは広く問題視されているだけではなく、明石ダコの加工を専門とする金楠水産にとっても大きな課題となっています。
このまま明石ダコの数が減少していけば、仕事が無くなってしまうかもしれない…
そうした危機感の中で、樟さまが取り組み始めたのが「明石ダコの魅力を広める」ことです。
認知度を高めることで明石ダコの価値をより向上させるだけでなく、資源量減少などの諸問題に気付いてもらうきっかけを作りたいと考えたと仰っていました。
さて、その取り組みの一つが、明石ダコの写真集『たこ88』です。
「え?タコの写真集??」と思われた方も多いのではないでしょうか(笑)
ページを開くと、様々な姿のタコの写真が並んでいます。
樟さまによると、「この写真集を通して、タコの『美しさ』を感じてもらいたい。そして、視覚的な美しさが味覚にも影響を与えることに注目し、食材として魅力をさらに高めたい。」という想いが込められているそうです。
この明石ダコのグラビア写真集は金楠水産のオンラインショップにて販売されておりますので、気になる方はぜひ購入して、明石ダコの美しさ、そしてさらなる美味しさを体感してみてください!
この他、次は「タコの美味しさを楽しんでもらうタコ焼き」に挑戦しようと考えていると仰っていたので、今後の活動内容も要チェックです!
講演を聞いての感想
最後に、講演を聞いて感じた筆者の感想です。
まずは何といってもタコ愛溢れる講演で、『タコ』の魅力・奥深さを知ることができ、非常に良い経験になりました。
特にタコの加工方法について、たとえ非効率的であっても「最高の美味しさ」のために手間を惜しまない姿勢が印象的でした。
実際、クラウドファンディングの一環で、“素人が茹でたタコとプロが茹でたタコの食べ比べ” という企画を行ったところ、体験した人たちからは全く美味しさが違うという感想が多かったと仰っていました。
タコも魚も、丁寧な下処理・調理が大切だということですね。
また、本講演では明石ダコの資源量減少についても触れられましたが、これは全国各地の多様な海産物にも共通する問題です。
こうした現状や、その解決に繋がる持続可能な漁業のあり方・資源管理の重要性は広く発信されます。
しかし、本講演を通じて考えたのは、それだけでは不十分だということです。
重要なのは、
「まずは食べてもらって、その美味しさを知ってもらうこと」、
そして、
「その美味しい食材が食べられなくなる現状に気付いてもらうこと」
だと思います。
こういったステップを踏むことが、日本の水産業が抱える課題解決に向けて重要だと考えました。
まずは「最高の美味しさ」を誇る金楠水産の明石ダコから、
その美味しさと美しさを体験し、そしてその資源量減少の解決に向けて私ができることを考えてみたいと思います。
皆さまも、ご一緒いかがでしょうか?
最後に
本記事では、2024年12月12日に開催された「魚講 Seson2」にて、樟陽介さまから講演いただいた内容について簡単にご紹介しました。
さらに詳しい内容や聴講者からの質疑応答、講演後のトークセッションをご覧になりたい方は、下記のサイトからログインした後にアーカイブ動画を視聴できますので、ぜひご覧ください。
特にこれから水産物の発信・ブランド化に取り組みたいと考えている方にとって大変参考になる内容だと思います。
次回の魚講は2025年1月21日(火)に開催されます。
講演者は福井県立大学 海洋生物資源学部の「渡慶次 力」さまで、タイトルは「ICTが拓く水産資源管理の未来 〜豊かな海を次世代へ〜」です。
詳細は下記のサイトをご確認ください。
今回も現地(神戸三宮)とオンラインのどちらでも参加できますので、奮ってご参加ください。
皆さまとお会いできることを楽しみにしています!
それではまた次回の記事で🐟