食虫植物・魅惑の機能美#1 甘い罠は、落とし穴
食虫植物で思い浮かぶのは、
ウツボカズラやハエトリグサでしょうか。
多くが奇妙な形をしているように思えますが、中には見た目が美しい植物もいます!
今もまだ発見されて続けている食虫植物。
実は、約550種類もあります!!
ウツボカズラと一口に言っても、実際には何種類もあります。
そもそも、なぜ虫を食べるのか??
食虫植物は、基本的にやせた土地に生育します。
そういう土地では、必要な栄養素が不足します。
その不足した栄養素を虫で補うというわけです。
だから、育てるのに肥料は必要ありません。
基本的に光合成をします。虫をわざわざあげる必要もありません。
実は、育てやすい植物です。
ただし、東南アジア原産のものは、寒いところが苦手です。
甘い罠の落とし穴
捕虫(ほちゅう)のための仕掛け、つまりトラップは5種類に大別されます。
今回は、その中の「落とし穴式」をご紹介いたします!
代表例は、ウツボカズラ(東南アジア原産)でしょう!
花言葉は「甘い罠」。。。
カエルほどの大きさの生物を捕らえることができます。中には,ネズミを捕らえたと言われているものさえあります。
雨水が入らないように蓋が付いています。
写真は、ウツボカズラ属のネペンテス・トランカータという、フィリピンのミンダナオ島だけに生息する大きなウツボカズラです。
昆虫は捕虫袋の明るい色と大量の蜜に誘われます。一部のウツボカズラの蜜には麻酔性の物質が含まれていて,獲物を麻痺させます。
もちろん消化液にもなっています。
袋の縁が滑りやすくなっているため、蜜を得ようとすると足が滑って、底にたまっている液の中に落ちてしまいます。
自分が虫だったら、嫌ですね。。。
ちなみに袋を触ると堅いので、一度捕まるとなかなか出られないことでしょう。
虫を活かし、虫を殺す花
もう一つ有名なのはサラセニア(北アメリカ原産)です。
筒状の葉っぱの底に蜜があります。(茎は地表を横に這っています。)
内側は毛が下向きに生えていて,昆虫が逃げられないようになっています。
さらに、葉が厚くなっているので、獲物が中から破って逃走できない仕掛けになっています。
「大魚に食べられたら、中から魚を食べてやればよい」という発想が許されないんですね。
湿地が好きなので、乾燥していると枯れやすいです。
1株で1シーズンに何千匹ものハエを捕ることができる、優秀なハエハンターです。
ただし、蜂はこの蜜に引き寄せられないので、蜂は殺しません。
さらにサラセニアは花を咲かせます。
虫を殺してしまう捕虫袋があると、虫媒花のサラセニアは受粉ができません。
そこで、まず花が咲いてから、この捕虫袋が徐々に出来るようになっています。(最初は筒状になっていない)
選択的に虫を食べるよう設計されているわけです。
こうした魅惑のシステム美が、食虫植物の魅力です。
人間にはかなわない
強そうに見えますが、実は絶滅の危機に瀕しています。
虫にも、動物にさえ時として勝ってしまう食虫植物ですが、
人間にはかないません。
東南アジアでは、焼畑農業によって多くのウツボカズラが自生地を失い、いくつかの種類はすでに絶滅しています。
これほど魅力的な機能美を有する食虫植物。
是非、守っていきたいものです。